LGBTの結婚式をいくつも実現

── テイクアンドギヴ・ニーズの職場には、どんな働きやすさを感じますか?

 

村木さん:
トップからポジティブなメッセージを出し、福利厚生を含めて、LGBTの働きやすさに対する取り組みを着実に進めています。

 

お客様に対しても、もう何件もLGBTの結婚式を手がけていますし、先進的な企業だと思っています。

 

── LGBTの結婚式は何件も実績があるんですね。

 

村木さん:
そうなんです。また、コロナ禍でウェディング業界は大きな苦境に陥りました。社会的に行動制限を余儀なくされたため婚礼の組数も激減して、大変な時期が続いたようです。それでもテイクアンドギヴ・ニーズは、人員整理をせずに乗りきったと聞いています。

 

それはやはり、今後を見据えた「人材こそが大事」という姿勢の表れだと思います。テイクアンドギヴ・ニーズでは、打ち合わせから式の開催まで、同じ人が担当しているそうです。サービスを提供するのは「人」というこだわりを、コロナ禍でも守りきったのは素晴らしいこと。経営陣は大変だったろうと想像します。

 

今回、私が社外取締役に招かれた意味は、社会課題の解決により強くコミットするという強い意志の表れではないかなと。テイクアンドギヴ・ニーズでは、私と同じ40代の女性がもう一人、社内取締役として活躍されています。40代女性が社内取締役にも社外取締役にもいる、というのは上場企業ではまだまだ少ないと思いますし、一緒に前向きなチャレンジができると期待しています。

 

LGBTの視点で企業に職場づくりを提案している村木さん
LGBTの視点で多くの企業に職場づくりを提案している村木さん

── これからどんなことを実現したいですか?

 

村木さん:
そもそも同性カップルは、日本ではまだ法的に結婚できません。従業員向けの施策やお客様向けのサービスだけでは足りない部分なので、これから法整備に対する積極的なアクションを期待したいですね。

 

すでに取り組みは始まっていて、婚姻の平等(同性婚の法制化)に賛同する企業を可視化するキャンペーン「Business for Marriage Equality」に、テイクアンドギヴ・ニーズは婚礼業界からいち早く名前を連ねています。こうした社会的な課題解決に向けたアクションにはすごく共感しています。

 

現在、このキャンペーンには270社以上が賛同していて、同性婚ができることで新しいビジネスの可能性を感じている職場もたくさんあります。

結婚式の習慣を見直すきっかけにも

── では、広報の木本さんにお聞きします。村木さんを社外取締役に迎え、今後実現したいことはなんですか?

 

木本さん:
社内では、同性のパートナーの方も福利厚生を受けられる人事制度が始まった一方、お客様へのサービスについては、まだ体系化されていないことが多いと感じています。基本的にお客様の背景やご事情、ご要望、個性を配慮した、おふたりにとって最良の結婚式の実現を最優先にしてきたため、おふたりがどういった間柄かということはこれまであまり意識してこなかったんです。

 

今まで幾度も同性カップルの結婚式のお手伝いをしてきましたが、「LGBTの方々の結婚」だと強く認識していなかったため、具体的なノウハウが蓄積しきれていません。

 

今後は、村木さんにも組織づくりへのご意見を伺いながら、制度化や仕組み化をはじめもっとLGBTの視点での取り組みを進めたいと思っています。

 

村木さん:
そうですね。結婚式って、新郎が先に会場に入って新婦を待ったり、新婦が新郎にケーキを食べさせる「ファーストバイト」が当たり前だったりと、独特の“お決まりのスタイル”がありますよね。今回のことがそういった今までの当たり前を見直すきっかけになれば嬉しいです。

 

なぜそういう形式なのか、異性カップル以外でも気になっている人は多いのではないでしょうか。それぞれの意味をきちんと説明したうえで、「あなたはどうしたいですか?」と問いかけられるといいなと思っています。

 

PROFILE 村木真紀さん

1974年茨城県生まれ。認定NPO法人虹色ダイバーシティ理事長。社会保険労務士。京都大学総合人間学部卒業。関西学院大学非常勤講師。MBSラジオ審議委員。日系大手製造業、外資系コンサルティング会社等を経て現職。LGBT当事者としての実感とコンサルタントとしての経験を活かして、LGBTに関する調査研究、社会教育活動を行っている。大手企業、行政等で講演実績多数。著書に『虹色チェンジメーカー LGBTQ視点が職場と社会を変える』など。
 

取材・文/高梨真紀 写真提供/株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ、村木真紀
 

(※1)LGBTとは、Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、出生届の性別と、自身の認識する性別が異なること)の頭文字をとった言葉。村木さんが代表を務める認定NPO法人 虹色ダイバーシティでは、LGBTなど性的マイノリティとその家族、アライ(LGBTの人たちの理解者であり支援者)の尊厳と権利を守り、誰ひとり取り残さない社会の実現を目指して活動している。

(※2)法律上の性別が同性同士の結婚を認められてない現在の日本の状況において、「パートナーシップ制度」は、自治体として同性カップルを「結婚に相当する関係」として登録するもの。2015年、渋谷区と世田谷区が始めた。登録後に結婚式を挙げるカップルも。