すでに住んでいる場合は、集団和解や境界確定訴訟も有効

── すでに知らずに住んでいる場合は、どういった点に注意したら良いでしょうか。

 

三平先生:
理想的な方法は、地図混乱地域に含まれるすべての土地の所有者が、「筆界(境界)の位置」について同意して、法務局に地図訂正の申立をする、という集団和解方式です。これにより、法務局は、「全員が納得した境界の位置」を地図に記入してくれます。つまり、法務局の地図上で、それぞれの土地の位置がはっきりすることになるのです。

 

この方法は理想的ですが、反対する土地所有者、あるいは、連絡がつかない土地所有者がひとりでもいたら実現しません。

建売住宅のイメージ(PIXTA)

そのような場合には、裁判所に境界確定訴訟を申し立てて、裁判所に筆界の位置を決めてもらえば、つまり判決をもらえば、法務局は判決どおりの筆界を地図に記入してくれます。実際に訴訟を用いる際には、法務局と協議しながら進めることになりますので、弁護士に相談したほうがよいでしょう。

仲介業者から説明なく買った場合は、売買契約を取り消せる可能性も

── 不動産の仲介業者から契約前の重要事項説明時にそういった地図混乱地域であることの説明がもし、ないまま契約していた場合、契約は取り消せるのでしょうか。

 

三平先生:
民法の契約不適合または錯誤として、売買契約を取り消せる可能性があります。ただし、地図混乱地域であることを知ってからケースごとに数年間の期間制限もあるので注意を要します。

 

── 契約前の売買の申し込みだけであれば、「地図混乱地域と知った」ということを理由に契約を拒むことは問題ないでしょうか。何か仲介業者に支払う必要があるのでしょうか。

 

三平先生
契約前ですので、「特段の事情がなければ辞退せず、申し込みますか」「ほかの人の内覧予約をキャンセルしていいですか」と聞かれて「はい」と返事をしていたとしても、「地図混乱地域」であると知ったことは重要な事実なので、断って何ら問題もないと思いますし、何か支払いが生じることはないと考えます。

土地が売れずに困る人のイメージ(PIXTA)

たとえば、「ほかの人の内覧予約をキャンセルしていいですか」と聞かれて「はい」と返事をしていた場合や、さらに、「仮契約書」「仮申込書」にサインしてしまった場合でも、その後に断る(正式な売買契約をしない)ということは自由です。

 

「仮契約書」の内容によっては責任が発生することも一応ありますが、地図混乱地域だと知らないでサインしたのであればその後に断っても責任は生じないでしょう。仲介手数料が発生することもないと思います。