シェアオフィスやバーチャルオフィスの提供など起業家向け事業を行う株式会社ナレッジソサエティ。信頼関係が最も重要な事業では、失敗が許されない場面がとても多いそう。

 

離職率の高さにもつながっていたこの課題が、気づいたら“クイズ”で解決されていた、と代表取締役の久田敦史さんは話します。どういうことなのか、詳しくお聞きしました。

ナレッジソサエティ 代表取締役の久田敦史さん
代表取締役の久田敦史さん

スタッフのひと言で始まった「朝のクイズ」

── 2017年頃まで数年ほど、離職率の高さを改善するために試行錯誤されたと伺いました。一つは働きやすい環境づくりに力を入れたことがありますが、もう一つは、なんとクイズだったそうですね。

 

久田さん:
そうなんです。ナレッジソサエティでは、起業家を中心に、オフィスや住所などを貸出しする事業を展開しています。ですから、お客様からいかに信頼を得るかが重要。必然的に、間違いや失敗が許されない場面が多くなります。

 

離職率が高かった頃は、新人に業務内容がなかなか定着せず、ミスが出てしまいがちでした。そうなると注意しないわけにはいかず、そういった場面が続くと、限界を感じて退職してしまう。その悪循環が続いていました。

 

そんなとき、長く在籍していたスタッフから、「業務内容をクイズにしてみたらどうか」と提案されて。じつはそれまできちんとしたマニュアルも整備できていなかったので、やってみる価値はあると思いました。

 

業務内容をクイズにして、自分で学んでいける制度をつくって続けていくうちに自然とミスが減り、状況が改善されていったんです。

 

── クイズというのは、具体的にはどんな内容なのでしょうか?

 

久田さん:
ナレッジソサエティが提供するサービス名と価格から始まって、応用編までを問題にしました。つきっきりで教える必要がないものを中心に、学校の朝学習のように、毎朝、業務が始まって30分くらいをクイズの時間にして、みんなで一斉に問題を解いてもらっていました。

 

── 穴埋め問題のようなものもあったり?

 

久田さん:
そうです。穴埋め問題、〇×問題など、クイズでよく見る問題形式を使って、毎朝解いてもらっています。

実際にナレッジソサエティの社員たちが解いているクイズの問題
実際に社員たちが解いているクイズの問題

そうすると、基本的なことに関してとくに間違いが防げるようになったと思います。中小企業では、業務内容について「こんな感じ」とあいまいな教え方になってしまうこともあります。その結果、教える人によって伝え方や内容も微妙にズレてしまい、しっかりと正しく把握できてない場合も。そういった部分は変えていかないといけません。

代表の判断よりクイズの答えを優先

── クイズだと楽しく覚えられそうですね。

 

久田さん:
そうですね。それにスタッフには、代表の私や上司に判断基準を仰がず、自律的に働いてほしいという思いもあります。だから、代表の私が言っていることとクイズの答えが違っていたら、クイズのほうが正しいということに(笑)。

 

私が一本芯の通った判断をし続ける保証もないですし、もしかしたら、いろいろな状況で、違った判断をしているかもしれません。社員からすると、「あのときはこう言ったのに今の発言は違う」という悩ましい状況に陥ってしまう恐れがあります。

 

それに、一人ひとりに与えられた情報が微妙に違っていて、判断が変わってしまうこともあります。ですから、スタッフには「代表がたとえ別のことを言っても、クイズの答えを優先にしてください」と伝えています。だからこそ「クイズを徹底的にやってください」ともお願いしています。

 

── このクイズのスタッフからの評判はいかがでしょうか。

 

久田さん:
今、クイズから少し発展してマニュアルづくりにも着手しているのですが、先輩スタッフが「先輩が別のやり方をしても、マニュアルにこう書いてあったら、先輩の言うことを鵜呑みにしないでね」と、後輩スタッフに教えていたんです。

 

それを聞いて、クイズで大事にしたいDNAがちゃんと伝わっているなと(笑)。人の頭のなかにあることを教え続けるのは大変ですが、クイズだと正しく、わかりやすく伝わると思っています。