この10年で大きく変化した女性の「ヘルスケア」医療

── 槝之浦先生自身も生理にまつわるトラブルは身近なものですか?

 

槝之浦医師:
私自身、失神するほどの重い生理痛に悩まされたことがあります。加えて、産婦人科医を志したのは、母が「子宮内膜症」を患っていたからなんです。

 

母はとても強い女性だったので、家族には苦しいところを見せまいとしていたけれど、生理中の痛みが強く、寝込んでしまう日もありました。40代に入ってさらに症状が悪化し、子宮の摘出手術を受けたのは、約17年前、私が大学2年生のときです。

 

ただ、当時は「子宮内膜症」という言葉も一般的ではありませんでした。母からよく「『生理がつらい』と医師に話しても、あまり理解してくれないんだ」と聞いていました。

 

──「子宮内膜症」の診断が可能になったのはつい最近のことなんですね。

 

槝之浦医師:
はい。「子宮内膜症」が広く認知され、診断されるようになったのはここ10年〜20年のことです。

 

これまで産婦人科の3本柱といえば、「1.お産  2.がん 3.不妊」 の3つで、生理にまつわるトラブルの多くは「仕方のないこと」「閉経するまで我慢すればいいこと」と考えられてきた面があるんです。

 

けれど今は、3本柱に「女性のヘルスケア」という新しい柱が加わって4本柱になり、専門医も増えています。

 

女性のヘルスケア外来では、生理にまつわるトラブルはもちろん、閉経後のトラブルや、思春期・更年期の悩みにも対応します。

採血する女性のイメージイラスト(PIXTA)

── ここ10年で女性のヘルスケアが大きく見直された理由についてはどうお考えですか?

 

槝之浦医師:
そうですね、時代の要請もありますが、理由は3つほどあると思います。

 

1つは月経痛や過多月経の治療法であるピルや避妊用リングが保険適用され、普及したこと。もう1つはエコーカメラの技術が進化して子宮の内部を詳しく診察できるようになったこと。

 

それに加えて、女性の産婦人科医が増えたことも1つの大きな要因なのかな、と思います。

 

女性患者の痛みやつらさに実感を持って寄り添える医療者が増え、女性たちが声をあげやすくなり、ヘルスケアの重要性が見直されたと考えています。現在は、産婦人科の新規医局員の5割から6割が女性です。