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「イシイのおべんとクン ミートボール」や公式Twitterの温かな人柄あふれる投稿などでおなじみの石井食品株式会社。創業家3代目社長の石井智康(いしい・ともやす)さんのIT推進や1か月の育休取得など、新しい取り組みも社会から注目を集めています。

 

男性の育休では石井社長に続いて、役員や男性社員も1~3か月の取得をするなど、社内にも変化が起きました。そんななか、石井社長は男性育休にどんな思いを抱いているのでしょうか。大切にしたいこと、「イシイのおべんとクン ミートボール」がある食卓についてもお聞きしました。

お子さんと笑顔の石井智康 代表取締役社長執行役員
お子さんと笑顔の石井智康 代表取締役社長執行役員

「育児修行」で男性の産後うつを防ぎたい

── 2022年4月から、男性社員が育休を取りやすいような環境づくりが企業に対して義務化されました。石井食品では、2019年10月、石井社長ご自身が1か月の育休を取ることで役員や男性社員が後に続きましたが、今後はどんな男性育休のあり方を目指しているのでしょうか。

 

石井さん:
以前から、社内で「男性育休」の名前を変えたいという思いがあって。「休み」ではなく「修行」だと、育休を取る男性社員には話しているんです。「育児修行」と言ったほうが実態に合っていると思いますから。

 

「学ばなくてはならない期間なんだ」という意識を男性社員がもてるように、育休のイメージや定義を、石井食品では変えていきたいと思っています。実際、育休から戻ってきた社員からもよく「確かに修行でした」という言葉をもらいますね。

 

──「休み」ではなく「修行」。確かにそうかもしれません。

 

石井さん:
これまでの「男性育休」の価値観の延長線上で取得が推進されると、僕は男性の産後うつが劇的に増えるのではないかと懸念しています。

 

── 男性の「産後うつ」ですか?

 

石井さん:
なぜなら、これまで育児に時間をかけられなかった男性のなかには、仕事という場をある意味「育児に時間をかけられなかった理由」として挙げる人も多いはずだから。それを社会も容認していたと思います。

 

育児に対して自分は下手だな、家事はやりたくないなと思ったら、「いや、自分は仕事があるから」と無意識に口実にしてきた男性もいたと思うんです。それが今後、男性が育休を取りやすい環境づくりが推進されて、「男性育休を取らなければ」という雰囲気が盛り上がるほど、育児や家事にそれほど思いがない人もそうしなければならなくなります。

 

でも実際は、育児や家事に求められるスキルは仕事とは全然違うから、思うようにできない場面が多いでしょう。仕事ではすごく評価されていても、育児では誰もがレベル1から始まるし、パートナーにすごく指摘されたり不機嫌になられたりすることもあります。育児や家事で評価してくれる人は誰もいない状態にもなりやすいんです。

 

女性の産後うつが社会問題となっているように、男性の産後うつも増えるのではないかと思っています。だから、出産後の期間を「育児修行」と捉えて、仕事とは別のスキルを培う場なんだと覚悟を決めて修行をするのです。

 

それまでの自分を一度リセットして、新しく学び直すアンラーニングの期間と捉えるという考え方が社会に広がるといいと思います。

育休を取得した男性社員の一人、株式会社ダイレクトイシイの柳田友一さん
育休を取得した男性社員の一人、株式会社ダイレクトイシイの柳田友一さんも「育児は修行」と実感したそう

── 育児休暇をあえて修行期間とすることで、男性は自分と向き合って、産後うつを防ぐ機会につなげるのですね。

 

石井さん:
「育児修行」の間にうまく男性がマインド転換できればいいなと。だって、育休明け後も育児と仕事はずっと続いていきますよね。仕事ができる人ほど、「仕事では評価されるのに家庭ではまったく評価されない」というギャップで苦しんでしまうと思うんです。

1回の食事だって貴重…娘との時間を大切にしたい

── 育児を始めた男性が家族や自分と向き合うなかで何か見えてくることもあると思います。石井さんが今、とくに大切にしたい時間を教えてください。

 

石井さん:
やっぱり、今は娘との時間ですね。娘と一緒に食事をすることが日々の大事な習慣になっています。普段、気持ちの余裕がもてないときも多いですが、育児経験者からは「2~3歳を過ぎたらあっという間に成長するよ」とよく言われます。それもあって、1回1回大切にしていきたいと思っています。

石井食品社長の石井智康さんとお子さん
石井社長に抱っこされるお子さんは笑顔いっぱい