逆風も強かったけれど

夫はよくやったと語る金子さん

── どこが響いたんでしょうか。

 

金子さん:
ピンチのときにどういう対応をするかで人の真価って問われると思うんですけど、こういう潔い生き様を見せてくれる人と一緒になって、結婚してよかったなって心から思えたんです。

 

世間的には「不倫した馬鹿な議員」って見られていたとしても、私だけはいちばんの味方でいようと。本気でそう思えたんですよね。

 

── その後の2017年の選挙で金子さんは立候補されましたが、落選されましたね。

 

金子さん:
最後の選挙のときは子どもがいる状態だったこともあって、いろいろ活動や選挙自体のやり方も変えてみたんです。後援会からは「離婚しないと応援しない」と言われるし、宮崎は宮崎で罪悪感を感じて、なんとか私を当選させなきゃと裏方としてすごく動いてくれました。

 

二人でたくさん話し合って、新しい選挙にトライしてみました。

 

具体的には若い方だけを集めて集会をやってみたり、SNSを駆使して発信してみたりとか…いわゆる泥臭い今までのやり方ではなく、「空中戦」みたいな感じ。これに対しては面白いように反発もありました。

 

やはり夫の不倫に対しての逆風も大きかったですし。それで結果が出なかったということは、もう潔く受け入れようと。それで落選後の2019年に、引退するとはっきり表明しました。

政治家と民間と、いったり来たりしてもいい

── あれほど思いがあった政治の世界からの引退は、いろいろと思うところがあったのではないですか。

 

金子さん:
私は政治って本来、もっと新陳代謝を良くしていくものだと思っているんです。当選回数をただ重ねるだけが政治家であってはいけなくて、ひとつ何かやりたいことがあって政治家になって成し遂げたら、また民間に戻って、民間の空気やいろんな問題を感じて、また政治に戻る、というのが本来の姿だと思うんです。

 

最後の選挙のときも、落選はしましたけど若い女性や主婦、学生さんたちが応援を手伝いに来てくれたり、終わった後も「悔しいです」「残念です」って連絡をいっぱいいただきました。そういう方たちに何かを残せた、メッセージを送れたのであれば、ここをひと区切りにしていったん終わるのもいいのかなと思えたんですよね。

 

── 今はコメンテーターとして、精力的に活動していらっしゃいます。

 

金子さん:
ありがたいことに機会をいただけています。街頭で演説してもなかなか聞いてもらえないことも、テレビやラジオで投げかけてみると今まで届かなかった人たちに届けられることもあります。

 

メディアを使ったほうが行政の問題提起についても広がりがあるなと感じていて、広義の意味の政治活動かな、と思って今は取り組んでいますね。

 

PROFILE 金子恵美さん

1978年新潟県生まれ。新潟放送勤務を経て、2003年にミス日本関東代表に選ばれる。07年新潟市議会議員選挙に立候補し当選。新潟県議会議員を経験後、12年に衆議院議員へ。10年間の議員生活を経て、現在は企業顧問とテレビコメンテーターなどとして活動中。
文/藤井みさ 写真/井野敦晴