田んぼアート30周年で一層の盛り上がりに期待!

── 「稲作」という面ではあまりメリットはないのですね。でも、35万人の方が来ているということは、観光業は好調なのでは?

 

鈴木さん:
それがそうでもないのです。実は、田舎館村には宿泊施設が少なく、観光地もさほど多くはないのです。隣には弘前市があるので、田んぼアートを見に来てくれても、ほとんどの人が日帰りで帰ってしまい、田舎館村は通過点になってしまっています!

 

弘前市で遊ぶついでに田舎館村に足を運んでくださる方が多く、なかなか村の発展にはつながりづらいのです。今でこそ観覧場所である展望台も有料ですが、最初は無料だったんですよ。村としてもどうにかして村の収入を増やしたいと頭を悩ませています。ここが村のいちばんの課題ですね。

城を模した田舎館村役場庁舎にある田舎館村展望台。4階の展望デッキや6階の天守閣からアートを見学できる
城を模した田舎館村役場庁舎にある田舎館村展望台。4階の展望デッキや6階の天守閣からアートを見学できる

── でも、昨年「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界遺産に登録されました。

 

鈴木さん:
そうなんです!北海道、青森県、岩手県及び秋田県は至るところに、縄文時代の人々の生活を垣間見ることができる貴重な場所であることが世界に認められました。

 

ぜひその話題に乗って、もっと多くの人に田舎館村を楽しんでほしいと思い、今年は田んぼアートの第2会場に「縄文から弥生へ」という作品を制作しました。縄文時代ではなく、弥生時代の遺跡なのですが、稲作の北限の定説を覆し、日本の歴史を大きくぬりかえた田舎館村の「垂柳(たれやなぎ)遺跡」を組み合わせたオリジナルアートです。

まもなく見頃を迎える作品「縄文から弥生へ」
まもなく見頃を迎える作品「縄文から弥生へ」

国の史跡にも指定されている貴重な水田遺構「垂柳遺跡」は、656枚の小さな水田跡で、数万個の弥生人の足跡が残っています。土器や木製品、石器も出土されました。遺跡の一部を高架橋にするなどして、楽しんで観光ができるように整えられています。また、656枚のうち161枚の水田を復元し、「弥生体験田」として農業体験もできます。

埋蔵文化財センター内にある「垂柳遺跡」の展示
埋蔵文化財センター内にある「垂柳遺跡」の展示

これを機に「垂柳遺跡」を知ってもらい、観光してもらえるきっかけになれば。また2007年には稲作文化を遊び心を持って学ぶ「遊稲の館」がオープンしました。稲穂のお土産作りをやったり、お茶碗と箸のアート作品「CHAWONDER(チャワンダー)」の鑑賞も楽しめます。

お茶碗と箸のアート作品「CHAWONDER」
お茶碗と箸のアート作品「CHAWONDER」

近くには、温泉熱を利用することで、通年を通していちご狩りが楽しめる「観光いちご園」もありますので、ぜひいっしょに巡ってもらえたら嬉しいですね。

 

── 来年は、田んぼアートをスタートして30年になります。

 

鈴木さん:
そうですね。2023年は30年という節目にあたります。また、コロナ禍でここ3年ばかり、稲作体験ツアーを開催していません。30年ということで今までにないような田んぼアートにしたいと考えていて、今まさに悩んでいる最中です(笑)。どんな楽しい企画になるか、ぜひ楽しみにしてください!

取材・文/酒井明子