孤立させない社会をつくる
── お電話をたくさん受けていらっしゃいますね。
篠原さん:
「住職さん、死にたい人は死なせてあげたらいいんです」と電話をしてくる人もいます。だから、こちらから「あなたのお孫さんは、いくつですか」と聞くと、その方は「高校生です」と答えました。
私は「高校生の相談も多く受けますよ。あなたの孫の高校生が死ぬからと言ったら、死んだらいいと言いますか」と聞くと「そんなこと言うわけない」と言ってガチャンと電話を切られるんです。みなさん、他人事なんです。
かつて日本は村社会で、若者が高齢者を支え、高齢者が若者を支えてきました。だんだん村から若者が減り、都会に集まり、小さなアパートを持って、核家族化してしまった。
そうなったら、隣の人が誰であろうと関係ない。隣でおばあちゃんがひっそり亡くなっていても気づかない。
日本人の農村型社会のいいところを全部削って、都市型社会になってしまった。この変化が日本という国をおかしくしてしまったのではないでしょうか。孤立させない社会をもう一回つくらないといけないんです。
PROFILE 篠原鋭一さん
1944(昭和19年)兵庫県生まれ。駒澤大学仏教学部卒業。千葉県成田市曹洞宗長寿院住職。曹洞宗総合研究センター講師。同宗千葉県宗務所長、人権啓発相談員等を歴任。NPO法人自殺防止ネットワーク風代表。
取材・文/天野佳代子 写真提供(プロフィール)/篠原鋭一 イメージ写真/PIXTA