働きやすさだけでなく働きがいも大切

── クロスリバーはメンバー39名が全員業務委託だそうですね。

 

越川さん:
現在はそうです。一般の会社とは大きく違う点なのですが、専業禁止を前提に選択制にしていて、いまは全員が業務委託を選んでいるという状況です。

 

── 業務委託となると福利厚生はどうなるのでしょうか。

 

越川さん:
福利厚生がない代わりに、報酬を高く設定しています。クロスリバーは短い期間で成果を求められるので、働きやすいかどうかと問われれば大変な面もあります。むしろ週休2日のほうが、働く日数が1日多いぶん、気持ち的にはラクかもしれません。

 

ですが、私は、「働きがい+働きやすさ」が大切と捉えています。福利厚生に充てる分を家族や趣味などのために自由に使ってもらえるように報酬を高めており、メンバーには社員がいいか業務委託がいいかを選択してもらう、という形です。

 

── メンバーの方にとっては報酬が高いことのほかにもメリットはあるのでしょうか。

 

越川さん:
メンバーは20代~60代まで年齢層もスキルも多様ですが、体力をもとに仕事をしようとすると長続きはしません。根気や根性、体力などで乗りきるのではなく、時間あたりの生産性を高める方法を模索して「働き方の実験」を進めていくことで、大きな学びが得られると思います。

1週間に一度、たった15分の習慣が大きな成果につながる

── メンバー39名の方と短時間で大きな成果を出す理由を教えてください。

 

越川さん:
ひとつは、完全リモートワークで拠点を分散していることが大きいですね。日本では東京と名古屋が中心で、海外ではバンコクとパリ、ニューヨーク、シアトルとあえて地域を分散しています。

 

それは、常にどこかの拠点で太陽が上がっている時間、つまり日中の稼働時間を24時間保つためです。実は拠点との時差を活用することが、時間効率性、生産性を高めるポイントになっています。

 

例えば、僕は今日も17時に仕事を終えなければならないことになっています。AIが「仕事をやめなさい」と言ってくるんですよ。ですから、それまでに今日の資料や報告書などをまとめなければならないのですが、自分ひとりでは到底無理です。

 

そこで、ビジネスチャットでシアトルのメンバーに報告書作成を頼み、翌朝起きる時間には完成しているというサイクルをつくっています。こうした工夫で短時間でも業務が進み、成果につながるんです。

 

── 短時間で成果を出すために、取り入れやすい方法はありますか?

 

越川さん:
まずは自分の時給を理解することはとても重要だと思います。

 

例えば、日本の平均年収が400万~500万円なら、平均労働時間で計算すると時給は5000円~6000円ほど。自分は、5000円~6000円に見合う仕事をしているかどうか、定期的に確認するのです。

 

そのためにどんな仕事を自分が今やるべきなのか。今はITも発達していろいろな業務を代行してくれます。自分よりも得意な人に頼むことも生産性を高めることにつながります。時給5000円の価値に見合う仕事が継続できるように、定期的に立ち止まって業務内容を整理し、どう効率化させていくか考えていく時間が必要だと思います。

 

── 具体的にどんなことをすればいいのでしょうか?

 

越川さん:
クライアント各社で人事評価がトップ5%の社員の人たちが実践したことを私も真似してみたのですが、1週間でたった15分だけ1週間分のカレンダーを振り返るんです。Googleカレンダー、アウトルックなどツールがありますよね。それをコーヒーを飲みながら眺めるだけです。

 

たったそれだけでも自分が費やした時間が何につながったのか、もしかしたらその時間は無駄だったのだろうかなど、時間の投資、消費、浪費が見えてきます。そうすると、短時間で成果を出すという目標のもとで浪費を止める覚悟が持てるようになります。

 

無駄と思った時間を翌週から止められるので、1週間ごとに無駄なことを平均11%止めることができました。たった15分、1週間分の振り返りを習慣化することで無駄なことを止めるというマインドセットになります。手軽で、再現性が高いスキルなのでぜひ試してみてください。

利益次第では週休3日をやめる選択も

── とにかく無駄をなくすことが週休3日でも成果を出すために重要なのですね。

 

越川さん:
その通りです。とはいえ、経営者という立場で考えると、右肩上がりで売り上げを伸ばすことが大前提です。年間の売り上げ利益が前年よりも下回った場合は、週休3日をやめるという選択肢もあり得ると思っています。

 

── 前年より利益が下がったら、今までこだわってきた週休3日制を止める可能性もあると?

 

越川さん:
はい。あくまでも週休3日は、短時間で成果を出す手段です。もし成果が出せなければ週休3日は適切な選択ではなかったということ。それなら、違う仕組みで成果を出す手段を考える必要があります。

 

ただ、今のところは週休3日・完全リモートワークで成果が出せているので、正しいだろうと判断しています。でも、もしかしたら今後週休2日でないと難しくなるかもしれないし、週休4日でもうまく仕事が回るようになるかもしれません。常に働き方を実験している状態です。

取材・文/高梨真紀