お母さんが喜ぶことを
── ところで、ローズさんのご家族は、すごく絆が強そうですね。
當間ローズさん:
家族にはすごく感謝しています。5歳で日本に来て、たしかに大変なこともありましたが、家族の支えがあったから、何とか乗り超えることができて。
僕は両親の頑張りをいちばん間近で見ていたし、親に迷惑をかけたくなかった。少しでも両親に楽をさせてあげようと思ってました。特に、母親に対しては「お母さんが喜ぶことをしよう」って常に考えていたと思います。これは、僕だけじゃなくて、家族全員がそう思いながら行動してたんじゃないかな。
僕のお父さんは、お母さんのことが大好きなんです。今でも、誰よりも早く起きて、お母さんのために朝ご飯を作ってるんですよ。
── お母さんはどういう方ですか?
當間ローズさん:
お母さんは、怒ると本当に怖いですが、すごく愛情にあふれた優しい人です。何か間違いを犯しても、ただ怒るだけではなくて「なぜ間違いだったんだろう」と、一緒に考えてくれます。また、困ったことが起きても「絶対に大丈夫だよ」と力になってくれますね。
転んでできるアザではない
── お母さんとの思い出でいちばん心に残っていることはありますか?
當間ローズさん:
僕が小学生時代、学校でいじめにあっていたときです。
その日、僕はひとりでお風呂に入っていたら、たまたまお母さんに体中にあるアザを見られたんです。お母さんに「どうしたの?」と聞かれて、焦った僕は、思わず「転んだ」と言ってしまった…。
でも、どう見ても転んでできるアザではないんです。お母さんも「そんなところで転ばないでしょう!」って。すると、お母さんがいきなり大声でこう言ったんです。
「何があったの!あなた、いじめられてるの?もしあなたがいじめられていて、それを隠しているのだったら、私がさらにそのアザを増やすからね!」と。そのときのお母さんはめちゃくちゃ怖かった(笑)。
── お母さんもすごく心配したのでしょうね。
當間ローズさん:
僕は泣きながら、お母さんに友達からいじめられていることをやっと伝えることができて…。お母さんは泣きじゃくる僕をぎゅっと抱きしめて「私はあなたのことが世界一大事だから。あなたが傷つく姿を見たくない。私に隠さないで。私たちは2人で1つなんだから」と言ってくれました。
ごめんなさい。当時のことを思い出したら泣きそうになっちゃったんですけど…。
僕は涙が止まらなくなって、「この人さえいれば僕は何一つ怖いことはないんだ」と思いました。
日本に来た当初は、日本語も話せなくて、いつも外ではひとりぼっち。テレビだけが友達でした。でも、このことをきっかけに、殻を破ろうと思ったんです。それからは、自分から積極的に「仲間に入れて」と友達をつくっていくようになりました。
そういった意味でも、お母さんの存在は僕にとってはとても大きいものです。
PROFILE 當間ローズさん
ブラジル生まれ静岡県出身。ポルトガル語、スペイン語、英語、日本の4か国語が堪能。陶芸や生花に精通しており、Instagram「toumarose_official」では、「薔薇色の人生プロジェクト」と題して「ロスフラワー」の活動についても発信。8月20日には浜名湖音楽フェスでロスフラワーを販売予定。
取材・文/間野由利子 写真/井野敦晴 取材協力/TRATTORIA庭