恐竜について調べる授業の様子。当時小学3年生の生徒が恐竜クイズを通して、自分の意見を言うことに自信を持てるようになった

一度、学校からドロップアウトしたからといって、その先に希望がないとしたらどんなに不幸か。学校に行けなくても「人生は面白いものだ」と思ってもらいたい。不登校児を支援するオンライン教室『夢中教室』を立ち上げた辻田寛明代表に、その想いを聞きました。

お絵かき、マイクラ…教室で学ぶのは何でもあり

不登校児のオンライン教室「夢中教室」がスタートして、約1年半。現在は、小中学生を中心に70名ほどの子どもが授業を受けています。

 

1コマ1時間でマンツーマンの形で、子どものペースに合わせて週1〜5日のなかで時間を決めて授業は進みます。

 

その授業は独特。お絵描きが好きな子どもはオリジナルキャラクターのLINEスタンプを作ったり、建物に興味がある子どもは気に入った建物をマイクラで再現したり。

 

「何をオンラインで学んでいくかは、子どもの希望を聞いて決めます。なかには数字が大好きで、フィボナッチ指数を研究する子どもまでいますよ」

マインクラフトを使って現実の世界にある建物をゲーム内で作っていくことも

代表の辻田さんの思いはひとつ。仮に不登校で学校に行けなくなったとしても、「それでも人生は続いていくし、面白いものなんだ」と思ってもらえるような出会いや学びを届けたいと考えています。

肯定感の高い途上国の子どもに衝撃を受ける

「大学在学中はキャリア教育に関心がありました。ただ、日本の子どもたちに話を聞いていると、『僕にはできない』『夢なんてないよ』と。

 

まるで自分の人生を諦める声に溢れていました。どうしてこれほど自己肯定感が下がっているのだろうと、切なくなりました」

 

大学院に進んだ辻田さんは、その後、東南アジア地域の貧困問題を研究。インドネシアなどにフィールドワークに行ったときのことです。

 

「訪れた家の母親に『あなたの人生は幸せですか?』と聞くと、『もちろん収入も低いし、生活は大変だけど幸せよ』との答えが返ってきました。

 

そして『大好きな家族と毎日暮らせて幸せだと思わない?』と聞き返されたんです。

 

隣にいた子どもたちも『そうそう!』と明るい。はたから見たら、食や住環境もままならないのに、とにかく子どもたちの自己肯定感が高くて」

 

裕福なのに自己肯定感が低い日本の子どもと、貧困でも自己肯定感が高いインドネシアの子ども。

 

そんなギャップを考えるなかで、日本の不登校児のことが気になるようになったといいます。

 

「先生と相性が悪かったり、友達からバカにされ、学校が嫌な場所となって不登校に至った子どもはたくさんいます。

 

環境が変われば登校や進学もできるかもしれないのに、そうしたせいで自己否定が強く、未来の可能性を潰してしまうのはよくない。

 

子どもが前向きになれて、何かに夢中になって取り組めると思えることが大事だと痛感しました」

体験授業では夢中教室でやりたいことを子どもと先生で探していく

そうしたアイデアを元に「子どもの“好き”や“やりたい”」を引き出すオンラインの教室を辻田さんは立ち上げます。

 

「先生たちはあくまで伴走者。子どもの興味や関心のあることに一緒になって調べたり、アイデアを出したり。

 

ときに子どもの発想や考えにハッとさせられれば、『それ、すごいじゃん!』と言ってあげる存在。

 

先生がわからないことがあれば、『それはわからなかった』と正直に話すことで、大人も完璧じゃないことも伝えていきたいです」