期待に応えすぎると範囲が狭まる

── 以前、YouTubeの中で「ヒットエンドラン」のネタで「私は私に殺された」とお話されていましたよね。コントのキャラのひとつでしかないのに、そのキャラに縛られて、テレビで求められてしまう、と。

 

鳥居さん:

そうです、そうです。自分から生み出したものなのに、そいつに殺されるのは、本当に本末転倒です。それは気づいたので、改善しようとしています。

 

単独ライブも1回やったものが「いい」って言われたら、お客さんが喜ぶようにしようってなると、ちょっとやれることの範囲が縮まるんですよ。期待された範囲でやろうとしちゃうから。

 

そうやってどんどん狭まっていっちゃうので、全部期待を裏切っていこうかなって思ってます。

単独ライブ「狂宴封鎖的世界」では時事ネタも扱う鳥居みゆきさん

── 今日のインタビューに当たって、鳥居さんの単独ライブの映像を延々と見ていたんですが、胸の中のドロドロした部分や、隠しておきたくなる部分を、ぐりっとほじくり返されるような快感というか…。

 

鳥居さん:

それも、多かれ少なかれみんな思っている部分じゃないですか。そこが私は発達障がいともつながっていると思っていて。

 

発達障がいと診断されているかどうかに関わらず、みんな色んな特性を持っている。落ち着きがないのと、発達障がいで本当に落ち着きがないのとは、延長線上にある。

 

そういう「あなたにも、こういう部分があるんだよ」っていうことを、私はやっていきたいんです。だから、(Eテレの「でこぼこポン!」で鳥居さんが演じる)「でこりん」と私は似ているんですよね。

 

「でこぼこポン!」は、「でこりん」が発達障がいの人をイメージしてると思われがちですが、違うんですよ。主に、でこりんなんですけど、ぼこすけも神経質なところあったり、ポンもこだわりが強かったり。みんないろんな特性を持ってるよってことなんですよね。

 

── なるほど。

 

鳥居さん:

そうそう。…うちの親、いつも「でこぼこポン!」を楽しみにしていて、すっごい褒めてくれるんですけど、ただいつも「ぽこりん」って言うんですよね。

 

── (笑)。

 

鳥居さん:

間違ってるんですよね。「でこ」入ってないんですよ。スタッフさんも、たまに「ぽこりん」とか言うんですよね。覚えづらいのかもしれないですね。

 

PROFILE 鳥居みゆきさん

2001年に芸人デビュー。「ヒットエンドラーン」などのネタでブレイクし、2008年、2009年の「R-1ぐらんぷり」決勝進出。生と死、時事ネタなどを盛り込んだ単独ライブ「狂宴封鎖的世界」も精力的に行う。また、数々の映画やドラマ、舞台などで主演を務めるなど女優としても活躍。このほか、ミュージックビデオの監督や、小説「余った傘はありません」刊行など、マルチに活躍。2022年4月から発達障害をテーマにした番組「でこぼこポン!」(Eテレ)にレギュラー出演する。

取材・文/市岡ひかり 撮影/植田真紗美