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「私はこんな扱いを受けるべきではない」自分を正しく愛することが生きづらさを変える

女性の健康

2021.02.06

西村宏堂さんインタビュートップ画像

働く女性がより自分らしく、輝いて生きていくためにはどうしたらいいのか。前回の記事「現代女性の生きづらさ、ハイヒールを履いたお坊さんはどう答える?」に引き続き、僧侶でメイクアップアーティスト、さらにLGBTQとしての視点を持つ西村宏堂さんにお話を伺いました。

外からの意見に惑わされないためには?

── 職場などで窮屈な役割を押し付けられている場合、どう向き合えばいいでしょうか。特に性別や生まれなど、自分の力ではどうにもならないことを理由に、特定の役割を押し付けられることに悩む人は多いと思います。

 

西村さん:理不尽な扱いを受けているのなら、まず「自分はそんな扱いを受けるべきではない」としっかりと確信することが大切です。その確信に基づく言動こそが相手を変えていくことができると思います。

 

私は必要な時にこそ、勇気を持って自分の正直な気持ちを伝えることで、人生が大きく変わったと感じています。まず必要なことを伝える時には相手の立場に立って伝えることと、しっかり準備をすることが大切です。そのためには信頼できる仲間や上司に相談して、味方を増やすことも支えになります。

 

そして、自分が上の立場になったときは今までの慣習を断ち切ることもできます。自分が意識的に風潮を変えていくことは、自分たちよりも若い世代のためになるのです。そんな環境で過ごした若い世代が大きくなった時には、世の中が変わっていると感じるのではないでしょうか。子育てをしている人なら、自らが差別を許さない言動を示して、人は平等なんだと子供にしっかり伝えていきましょう。

 

── 不条理な状況に慣れてしまうと「自分が悪いのかも」「私が我慢しておけばいいか」と半ば諦めの気持ちになってしまいますが、まずは自分の価値を認めて信じてあげるところから変えていくんですね。たしかに、子どもたちのことを考えると、何か少しでも変えたいという気持ちになります。

 

西村さん:今置かれている状況を変えるという意味では、転職も選択肢だと思います。

 

どうしても変わらない環境だと感じるのであれば、自分が能力で評価してもらえる環境に移動する準備をするのもありです。もちろん、転職は簡単なことではないので、我慢してでも今の場所に留まろうと考える人もいると思います。しかし古く理不尽な価値観に執着して、新しい価値観を取り入れることを拒むコミュニティは、時代に置き去りにされてしまい、いずれ求められなくなるとも感じます。

 

「我慢すれば報われる」というのはよく聞く言葉ですが、なんでも我慢すれば良いというのは違います。おかしいことを我慢して体や心を壊すよりも、自分を大切にするための我慢をすることが大切だと思います。そして、自分を大切にできる人こそが、周りからも尊重されるようになると思います。私は自分を大切にする決断をすることで人生が好転すると信じています。みなさんの勇気を応援しています。

「絶対○○したほうがいいよ!」善意を装ったお節介はどうさばく?

西村宏堂さんインタビュー写真2

──「あなたのためを思って言っている」という体でされる迷惑なアドバイスにはどう対処したらいいでしょう?特に女性は「もう30代なんだから絶対早く結婚したほうがいい」とか「子どもは絶対いたほうがいいよ」など、結婚や出産に関するアドバイスをされがちです。

 

西村さん:私は結婚や子どもを持つことを勧めることって、「海外旅行を勧めること」に似ていると思うんです。海外旅行に行くと楽しいかもしれないけど、もしかしたら事故や盗難、食中毒に遭うかもしれません。行ったことを後悔することだってあります。

 

結婚も同じ。結婚したら楽しいこともあるけれど、家族と分かり合えなくて辛いこともあるかもしれないし、姑とバトルすることもあるかも。子どもはかわいいけど、やりたいことができなかったり、思うような育児ができなくて悩んだり。良いことばかりとは限りません。

 

未来には無限の可能性があるので、誰も「あなたは絶対に結婚した方がいい」とか「絶対に子どもがいたほうが幸せ」なんて言えないはず。それが言えてしまう人たちは思慮が浅い証拠なので、真面目にやり取りする必要はありません。「考えてくれて、ありがとう」とさらっと受け流してもいいかもしれません。

 

自分で自分の行動に確信を持って進んでいれば、周りの人たちの言葉は効力を失います。相手には相手の状況があります、そして私の状況は私にしか分かり得ないことなのです。自分の人生のハンドルは自分で握りましょう。

本当に「美しい人」になるためには?

西村宏堂さんインタビュー3

── 僧侶でありメイクアップアーティストでもある西村さんが「美しい」と感じる人はどんな人でしょうか?

 

西村さん:その人とやりとりすることによって、相手に「自分には価値があるんだ、私は美しいんだ」と感じさせてくれる人を美しいと感じます。心が美しい人は、私の心さえも美しくしてくれると思うのです。

 

例えば私が僧侶の修行をしていた時に指導してくれたベテランの先生は、昔のインドの旅行話を面白おかしくしてくれて、それを聞くたび私はウキウキしたし、私たちを尊重した話し方をしてくださったので、私は心地よく将来に希望を感じることができました。逆に私たち生徒に対して厳しくして、若い修行僧はまだ無知で、価値がないように扱われる先生もいらっしゃいましたが、そういう人は美しいとは感じませんでした。

 

相手のことを思って、自分が楽しいと思うことを共有したり、相手に「私は大切で価値がある存在なんだ」と思わせてくれる人。それは意識すれば、みんなが目指せる美しさだと思います。

 

── 自分の楽しいと思うことを共有するというのは、今日からでも始められますね。メイクアップアーティスとしての視点で美しいと思う人はどんな人ですか?

 

西村さん:自分に似合うものを身につけて、清潔感があって、いろいろなことに考えを巡らせている人は美しいと感じます。

 

ミス・ユニバースの世界大会に出る人は、必ずしもみんなが完璧なプロポーションで生まれているわけではありません。多くの候補者は自分に似合う洋服や表現を研究して美しく見せる努力をしているのです。

 

自分がどう見えるかは、自分で気が付かないといけません。今までの自分の写真を並べて似合うものを分析したり、友達に聞いてみてもいいですね。自分の話している姿をビデオに撮ってみるのもおすすめです。自分のビデオを見るなど、恐ろしくて面倒なことにこそ、成長の可能性が詰まっています。

 

── つい流行に乗って自分に似合わないアイテムを身につけたりしてしまいますが…自分ならではのスタイルを努力と工夫で見つけないといけないんですね。

 

西村さん:あとは、大切なことは自分の身の回りの物によって、自分の印象が変わるということを意識すると良いと思います。

 

以前、ミス・ユニバースのフィリピン代表に水の入った瓶を渡したら、「私はそれを持って歩きたくないの」と言われたことがあって。「そこまで細かく見え方を意識しているのか!」と驚きました。それから私はペットボトルはラベルを剥がして、余計な情報を取り除くように工夫したり、家に置いてあったティッシュボックスは、おしゃれなティッシュボックスカバーをつけてみたり。ポリ袋はシャカシャカして洗練されたイメージがないので、人に見えないようにカバンの中にしまうように心がるようになりました。

 

当たり前の行動を見つめ直すことで、さらに美しい印象を与えられると思います。

心が折れそうなときに自分を応援してくれる「お守り」とは

西村宏堂さんインタビュー4

── 生きていると、うまくいかなかったり、落ち込むこともあります。そんなとき、自分を強く応援する方法はありますか?

 

西村さん:自分を奮い立たせてくれる「言葉」を大切にすることですね。私はミシェル・オバマの「残酷な仕打ちをしたり、いじめっ子のように振舞う人がいたとしても、あなたまでが彼らのレベルに合わせて品位を落とすことはありません。彼らが低い場所を行くのなら、我々は高いところを行く」という言葉を、お守りとして大切にしています。

 

辛い時こそ、自分がどう対応できるかで人生が大きく変わると思います。相手を注意したり、誰かに謝ったり、断りづらいけれど断らないといけない時にこそ、自分の品格を高めてくれるような伝え方を心がけています。うまくいかない時だからこそ自分の腕の見せ所と思えると、やる気が湧き起こってきます。

 

── 自分だけの「言葉のお守り」、探してみたいと思います。でも、どんなに自分を励ましてみても、なりたい自分になれていないときにやっぱり自分を責めたり、悔しくなったりします…。こういう気持ちは、どう処理したらいいでしょうか。

 

西村さん:なりたい自分になれない理由は「踏み出すことへの不安」か「力不足」のどちらかが考えられると思います。

 

まずなりたい自分になることに「不安」を感じるということですが、成長することで、今まであった周りの状況も変わってしまうということもあるかと思います。変化することに心の準備ができていない場合もあるかもしれません。成功するとそれに伴い、新しい困難も現れると思います。だからこそ本当に成長しようという「心の決断」ができると、歯車が動き出すことがあると感じます。

 

また「力不足」はゴールを定めて着実に進んでいくことが必要だと思います。なりたい自分になるために、私はノートに思うことを書くことを習慣にしています。ふわっとした内容ではなくて、具体的な目標や、そのために何をすればいいのかを書いて、実行する努力をしています。また、そのために必要な情報はあるのか、指導者の能力は十分であるのかも見極める必要があります。きちんとした術がなければ、いくら努力しても上達できません。

 

── ノートに書くというのは、いわゆる「ウィッシュリスト」のようなものでしょうか?

 

西村さん:はい。私はもう一工夫して、モチベーションをアップさせています。ただ目標を書くのではなく、すでに目標を達成できた時の感情も書いてみるのがポイントです。何が楽しかったのか、どういう変化が起こったのかまでも想像して書いてみるんです。ワクワクする気持ちがあれば継続して努力できると思います。

 

ただし元気が出ないときや、目の前に別のやるべきことがある場合は、無理しないこと。飛躍する前には力を溜めることも大切です。休む時には休まないといけません。仕事で集中しなければいけない課題があるときは、長い目で見た目標のことは一旦忘れて、目前のことに力を注ぎます。そのせいで目標を達成できない日もありますが、自分を責める必要はありません。「今日はこれをやらないといけないからやったんだし、まぁいっか」と思うことも大切です。

 

頑張りのアクセルばかり踏んでいると、思わない方面に突っ込んでしまうので、できないときはうまくブレーキも使って「まぁいっか」と思えると、目的地まで安全運転で「ちゃんと」到達できると思います。

 

 

人からの心ない言葉や、固定概念、一般論などに自信を奪われ、生きづらさを感じてしまうことは珍しくありません。その生きづらさから解放されるための第一歩は、自分の価値を正しく認めてあげること。そしてときには「まいっか!」とアクセルを緩めることで、自分自身も、自分の生き方も好きになれそうです。

 

PROFILE 西村宏堂さん

浄土宗の僧侶であり、ミス・ユニバース世界大会などで各国代表者のメイクを行なってきたメイクアップアーティストとしての顔も持つ。LGBTQでもある独自の視点から「性別も人種も関係なく皆平等」というメッセージを発信。著書に「正々堂々」(サンマーク出版)。

 

取材・文/野中真規子 撮影/中野亜沙美

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