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「女子は算数が苦手のウソ」算数教育のプロが10億件のデータから分析

子育て

2021.06.08

女の子と算数

「女の子は文系、男の子は理系が得意」という言説は昔から耳にはしますが、本当にそうでしょうか?そもそも「算数が得意」とは、具体的にどんな能力が優れているのでしょうか。

 

性別と得意・不得意の関係性については、しばしば脳科学の見地から語られますが、今回は理数科目の入り口であり、分岐点にもなる「算数」に着目。

 

算数に特化したタブレット教材「RISU(リス)」を開発した“算数教育のプロ”であるRISU Japan株式会社代表・今木智隆さんにお話を伺いました。

計算が速い=算数が得意は誤解 

── 「女の子は男の子よりも算数が苦手」という言説は昔からありますが、これは本当でしょうか。

 

今木さん:

私たちRISU Japanでは、個別の習熟度に合わせて学び方を変えるタブレット教材「RISU 算数」を通じて、これまで10億件超の子どもの学習データを収集・分析してきました。その結果、「性別と算数の相関関係」についても、ある程度の傾向が導き出されました。

 

そのことについてお話をする前に、まずは「算数」という科目についておさらいしましょう。

 

小学校の算数は、ざっくり要素分解すると「計算」と「計算以外」に分けられます。「計算以外」の中には、「文章題」「時計」「図形」などが含まれますが、実はこれらは計算力とはまったくの別物、独立した学問なのです。

 

小学1年生の算数は、数字を覚えたり、簡単な計算をしたりする「計算」単一の学問です。ところが2年生後半になると、「図形」「文章題」「時計」と内容が枝分かれしていく。「算数が苦手になった」という子が増えるのは、圧倒的にこの段階からです。

 

なぜなら、いくら計算が速くできるようになっても、文章題に必要な読解力や、「時計」の考え方を理解する力とは関連性がないからです。

 

── 計算力だけでは、算数の能力は測れない?

 

今木さん:

そうです。具体例を挙げてみましょう。例えば、「時計」は実はなかなか難しい単元です。子どもたちはそこで12進法という考え方に触れ、75分=1時間15分という変換の方法を新たに学びます。足し算や引き算だけではない理解が必要になってくるわけです。

 

「文章題」も同様です。文章題を解く際には、「文章を噛み砕いて意味を理解する力」と「式を立てる力」がまず必要になります。その2つの力が揃えば、あとは計算すればいいだけ。逆に言うと、その2つの能力が身につかないと、解けるようにはなりません。

性別によって「得意」が違う傾向はある

── 「算数=独立した複数単元の集合体」という認識がまず必要なんですね。

 

今木さん:

そのとおりです。その前提を踏まえた上で冒頭の質問に戻ると、「女の子は算数が苦手」という見方は、社会の思い込みによってつくられている部分が非常に大きい、と私は考えます。少なくとも一律にそう決めつけるのは暴論と断じてもいいでしょう。

 

ただし、先に述べたとおり「性別による得意単元」は異なる傾向にあることも、データから見えてきました。

 

RISU算数会員を男女で分類し、全単元の初回解答の平均点を比較したデータを分析した結果、「計算力」に関しては、男女ほぼ同じで大きな差は見られませんでした。むしろ、桁の大きな引き算や、小数・分数の細かい計算、素因数分解では、男子よりも女子のほうが高いスコアを出しています。

 

一方で、「図形」、特に立体やグラフ、図表に絡む計算に関しては、男子の平均点を100とすると、女子は85%程度と低いスコアが出ています。

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図形の組み立て、グラフの読み解きなど図表が絡む問題の平均点を比べると、女子もよりも男子のほうが高い結果に。逆に、小数の掛け算や素因数分解などでは女子のほうがやや高いスコアになった

“性差の傾向”でひとくくりにしないで

── つまり、単元ごとに見ると「女子は計算がやや得意」「男子は図形がやや得意」という傾向がある、と。なぜでしょうか。

 

今木さん:

ここからは個人的な推論になりますが、小数や分数の細かい計算は、緻密にコツコツと積み上げていく、つまり丁寧なプロセスが必要とされます。成長過程や日常の中で親や先生、周囲から「丁寧」であることをより強く求められる場面が多いのは、どちらかといえばやはり男の子より女の子のほうではないでしょうか。

 

そういった成長過程で及ばされる要因も、もしかすると関係しているのかもしれません。

 

ただし、言うまでもなく、個人差がありますから、図形が得意な女の子もいれば、緻密な計算が得意な男の子も当然います。保護者の方は「女の子だから図形は苦手でも仕方がない」と一概に思い込まずに、性別で決めつけないようにしてあげてください。

理系一家に育ったからこそ見えたもの

── 今木さんご自身は理系出身ですが、家族や周囲を見渡して、性別による得意・不得意の傾向を肌で感じることはありましたか。

 

今木さん:

僕は3人兄妹の一番上ですが、2人の妹も理系なんです。上の妹は機械工学、下の妹は建築学に進みました。さらに言うと、父親は化学、母親は物理を学んだという理系一家なので、家族の中で僕が最も文系っぽいんです。

 

特に、うちの場合は母親の理系指数が際立っていましたね。僕が子どもの頃にファミコンが壊れたときは「これで直しなさい」とハンダゴテを渡されましたし(笑)、家の風呂が壊れたときも母が自力で直していました。

 

そういう意味では、僕も妹たちも「女の子は理数系が苦手だ」というバイアスがまったくない家庭で育った実例といえるでしょう。家庭のフォローによって性別の差が吸収された、と見ることもできるかもしれません。

・・・

後編では、「男の子のほうが図形が得意な傾向」の要因について掘り下げながら、性別に関係なく、算数が得意に変わるための具体的なヒントをご紹介します。

 

Profile 今木智隆いまきともたか)さん

RISU今木智隆さん

RISU Japan株式会社代表取締役。京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、デジタルマーケティング専門コンサルティングファームのビービットを経て、2014年にRISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した幼児から小学生向け算数教材で、のべ10億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。

取材・文/阿部 花恵 

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