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私たちは子どもに「主体性ある働き方」を見せられているか

子育て

2021.08.23

親子の対話

「これからの教育・求められる力」特集、最終回は「コロナ禍で労働市場にどんな変化がもたらされたのか」をテーマに、キャリアカウンセラーの藤井佐和子さんにお話を伺います。

 

主体性と臨機応変さがますます求められる時代、これから社会に出る子どもたちは何をどのように身につけていくべきでしょうか。

 

このことを考えるとき、私たちの働き方も問われてくると藤井さんは話します。私たちの働き方が子どもに与える影響とは?

子どもに主体性が身につく「第三者の存在」

── 前回は「主体性」「臨機応変さ」がキャリア形成の要になるというお話を伺いました。では、わが子にこれらを身につけさせるために、保護者は何ができるでしょうか。

 

藤井さん:

難しい質問ですね。主体性や好奇心のようなものは、「持ちなさい!」と命じられて身につくものではありませんから。

 

ただ、「第三者に介入してもらう」というのはひとつの手だと思います。サマースクールやサマーキャンプ、単発の野外イベントなど、親ではない他者と触れ合う機会を積極的に増やしていくことで、子どもは多様なロールモデルに出会える確率が上がります。

 

親が口出しできない環境下で第三者と触れ合う機会が増えることは、それまでとは違う自分の一面を見出したり、主体性や好奇心の芽が育まれたりするきっかけにもなるかもしれません。

 

以前にキャリア相談に乗っていたお客さまから「うちの子とちょっと話をしてくれませんか?」と中学生のお子さんを預けられたことがあります。

 

「最近は親が何を聞いても反応が薄く、喋ってくれない。違う大人からの質問であれば口を開くかもしれないから」という理由で信頼して委ねてくださったのですが、確かに私とであれば将来のことや社会に対する疑問など、いろんな話をしてくれたんですね。

 

そんなふうに親とは違う別の大人に委ねることで、子ども自身の視界が広がっていくこともあります。

 

家庭は心理的安全性が確保されている、つまり安心できる場でありさえすれば十分ではないでしょうか。そこさえしっかり押さえておけば、ある程度までなら放任してしまってもいいと私は思っています。

 

外の世界でいろんな人に出会い、価値観に触れ、体験して、安心できる家庭に戻ってくる。その繰り返しによって、子どもは自発的にたくさんのことを学んでいくはずです。

保護者自身の主体性を見せるのも効果的

藤井さん:

もうひとつ、子どもに主体性を持ってもらうための方策として、「保護者自身が主体性を持ち、思考する働き方を実践していく」ことも有効です。

 

子育てと仕事の両立に悩む方のキャリア相談を受ける機会も多いのですが、受け身な人、自分で決断せず誰かに決めてもらおうとする人は、仕事の場でステップアップしていくことがやはりなかなか難しい。

 

客観的に見ると福利厚生がとても充実した企業に勤務しているのに、「うちの会社はあれをしてくれない、これもしてくれない」とマイナス面ばかりに目を向けてしまう人もいます。

 

また、受け身なスタンスの親御さんほど、わが子に「主体性を持ちなさい」と厳しくしつけているようにも見受けられます。もちろん、全員がそうではありませんが傾向としてそう捉えられる部分があります。

 

まずは親自身が主体性を持って、キャリアや人生を選び取っていく。その姿勢が大事ではないでしょうか。

自分の働き方は子どもに誇れるか

仕事中に浮かない表情の女性

── 親が自ら行動で示していく、ということですね。藤井さんのもとへキャリア相談に来られる女性は、キャリア形成の意識が高い方がやはり多いのでしょうか。

 

藤井さん:

キャリアカウンセリングにそういうイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、まったくそんなことはありません。「ゆるやかでもお金が途切れないような働き方をしていきたい」「収入が減ってもいいので柔軟に働ける職場に変えたい」という相談も最近は増えていますし、独身の方、シングルマザーの方も多いです。

 

それに、むしろキャリア志向ではない女性ほど、これからの時代は危機感を持って意識的にキャリアを形成していくべきだと私は思っています。

 

人生100年時代と言われるようになった昨今、私たちは70代まで働き続ける可能性も大いにありえます。

 

一方で、AIやテクノロジーの進化が進むことによって、10年後には事務職の求人が激減すると言われています。事務職に限らず、「つぶしがきく」とされていた職種は全般的に減少していくでしょう。ゼロにはならないとしても、居場所がなくなっていく可能性は非常に高い。

 

そうなった場合、これから世の中からなくなってしまう仕事の経験しかないまま50・60代になってしまった人、とくに非正規雇用や派遣社員の女性は圧倒的に不利になってしまいます。

 

── 不要になりかねない職種に消極的理由でこだわることは、子どもに誇れるものではありませんね…

 

藤井さん:

キャリア相談の場では、「自分はこれしかできない」「この業種でなければ嫌だ」といった固定観念やこだわりを捨てましょう、とまずはお伝えしています。

 

年齢が上がるほど、門戸は確実に狭まります。「時給が多少下がっても今と同じ仕事でいい」ではなく、「違う業種にも挑戦してみようかな」と考え方を転換したほうが、将来的に道は開けます。

 

そもそも、本当に事務職がやりたくてやっているのかを自問自答してみてください。たまたま前職もそうだったから、子育てをしながら続けられる仕事だったから、新卒で入ってそのまま続けているから、という人も多いのではないでしょうか。

 

また、さまざまな業界の動向を知っておくという意味では、転職サイトを定期的にチェックしてみるとよいでしょう。興味のある業界や職種を視界の隅に入れておくことは、将来へのリスクヘッジにもなります。今の会社に後ろめたさを感じる必要はありません。普段から視野を広げて、情報収集を心がけましょう。

 

それとは別に、自分の思考のクセや性格を理解しておくことも大事です。「自分は実は頑固なんだな」「ついうっかりこういう行動に出がちだ」というクセや性格は、簡単に変わるものではありませんが、少なくとも自覚しておけば行動を変えていくきっかけになります。

人生を選び取る姿勢は子どもにも影響する

── 業界の動向をチェックしつつ、自己理解も深めていく。キャリアを突き詰めることで、どういう人生を送りたいかも見えてきそうです。

 

藤井さん:

便利な都心に住みたいのか、それとも自然豊かな地方がよいのか、どのような教育を子どもに受けさせたいか…。価値基準は人それぞれですから、それによって必要な出費や求める収入も違いますよね。そこが明確に見えてくれば、どんな生活や働き方が自分に適しているのかもわかってくるはず。

 

結果、ステップアップを目指して転職する人もいれば、移住を選ぶ人もいるでしょう。「今は働かない」という選択肢に行き着くケースもあるかもしれません。

 

変化を恐れず、柔軟に学び続けていく。そうした大人のポジティブな姿こそが、子どもにいい影響を与えると思います。

 

Profile

株式会社キャリエーラ 代表取締役

藤井佐和子さん

キャリアアドバイザー/ダイバーシティコンサルタント。1968年生まれ。大学卒業後、カメラメーカー海外営業部にて3年半従事、その後、前職インテリジェンス(現:パーソルキャリア)で創業期の1994年から8年間派遣事業部と紹介事業部の立ち上げに携わる。2002年(株)キャリエーラ設立。個人向けに延べ17000人以上のカウンセリング実績。『どんな職場でも求められる人になるために いますぐはじめる47のこと』『女性社員に支持されるできる上司の働き方』など著書多数。

 

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取材・文/阿部 花恵 イラスト/えなみかなお

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