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不登校新聞の編集長に聞く「長期休校明け、親として気をつけたいわが子の変化」

子育て

2020.06.05

2020.06.11

新型コロナウイルスによる緊急事態措置が解除され、分散登校や短縮授業など、段階的に学校が再開されています。前例にない約3カ月におよぶ臨時休校。親としては子どもの学習の遅れに意識が向いてしまいがちですが、コロナ禍における、子どもたちの心や体へのケアについても重点的に考えたいところです。

 

今回は、『不登校新聞』編集長の石井志昂さんに、長期休校が明けた今、親が気をつけるべきことを伺いました。現在の子どもたちの心境や、不登校の可能性とは。子どもからのSOSのサインに気づいたとき、親としてどのような行動をとれば良いのでしょうか。

 

学校再開後も継続する子どもたちのストレスと不登校への可能性

 ——コロナ禍による長期休校では、子どもたちの精神面にどのような影響が出ているのか、危惧している親御さんは多いと思います。実際、どんな変化が起きているのでしょう?

 

石井さん:

コロナ禍の影響で一斉休校が始まってすぐの頃、子どもたちにとっては「自由に外に遊びにいけない」ことへの不満やストレスが強かったように思います。

 

しかし、志村けんさんや岡江久美子さんなど、自分の親世代、または祖父母世代の著名人が亡くなり、「大切な人の命を守ってください」というメッセージがテレビなどで頻繁に出回ったあたりから「自分の親、おじいちゃん、おばあちゃんが亡くなってしまうかもしれない」という不安をダイレクトに感じ始めた子が多いです。

 

子どもたちにコロナの話題を振っても、口にしたがらないようになりました。

 

学校再開後はそうしたストレスが、心身に現れてくる懸念があります。お子さんの様子は注意深く見てあげてほしいですね。

 

——確かに。ニュースの番宣でわずか数秒、コロナの話題が出るだけでも、子どもが緊張しているように見受けられることがありました。そうしたストレスが、今後、不登校につながる可能性はあるのでしょうか。

 

石井さん:

そうですね。「身内が亡くなるかもしれない」「自分が感染するかもしれない」という不安は、どの子どもも感じています。さらに新学期の時期でもあるため、これからクラス内での人間関係を構築していくことへの緊張感もあるはずです。

 

そんな中で、分散登校やオンライン授業はすでに始まっていて、6月以降は本格的な教育活動の再開に向けて、そのペースが上がっていきます。子どもたちの心と体が、その変化についていけるかどうかが心配されるところです。

 

一斉休校期間中に宿題を出されたお子さんもいると思いますが、「手に付かない」という子どもたちが、実は多く見られています。休校が明けて学校が再開しても「体が動かない」とか、「自宅学習が進められない」など、不調が続く子もいるかもしれません。

 

最近でも「学校が始まると思うと、だんだんと朝起きられなくなっている」「短時間の登校で、汗をかくほど胃が痛くなってしまった」などとツイッターに投稿している中高生も見られました。

 

子どもからの4つの「SOSサイン」を見逃さないで

 ——そうした行動もサボっているわけでなく、子どもからのサインということですよね。

他には、心の不具合はどのような行動に現れますか?

 

石井さん:

前述した「宿題が手に付かない」に加えて、「食欲不振」と「不眠」、それから「情緒不安」。この4つが子どもからの大きなSOSサインです。

 

急に食欲がなくなったり、一日中イライラしていたり、頻繁に甘えてくる、すぐ泣くようになったなどの「情緒不安」については、「いつもと違うな」と家庭内でも気づきやすいと思います。

 

「不眠」についてですが、「学校がある日に限って朝起きられない」という子は、不安があって夜眠れていない可能性が高いです。朝までゲームをしていたり、スマホをいじっている子に対して、親は「ゲームをしているから朝起きれないんだろう」と勘違いしてしまいがちですが、何かしらの悩みや不安があって眠くならず、スマホやゲームを手に取ってしまう子もいます。その場合は、ゲームやスマホを取り上げるだけでは根本的な解決にはならないので気をつけてください。

 

——SOSのサインに気づいたら、どのように対応するべきですか?

 

石井さん:

「学校で大丈夫?」「何か不安があるの?」と率直に聞いてあげてください。ただし注意したいのは、子どもが話し始めたら「最後まで聞く」こと。

 

例えば、本人が「宿題が昨日の夜終わらなかったんだ」と話し出した時に、「だから早めにやりなさいって言ったよね!」と口を挟みたくなるところをぐっとこらえて、「そっか」とうなずいて聞いてください。聞くときは何か作業をしながら片手間に聞くのではなく、ちゃんと向き合って子どもの気持ちに共感を示してあげてください。

 

話を聞いた上で、「親としてできることがあるな」と思ったら、すぐに子どもに提案するのではなく、他の誰かに話してみましょう。友達でもフリースクールの先生でもいいので、ワンクッションをおき、「一呼吸置いてから、子どもに提案をする」ことが大切です。

 

もし、子どもが不安や悩みを話し出さない場合は、「その日は話したくないのだろう」と割り切り、話してくれるのを待ってあげてくださいね。

  

「不登校にさせないこと」を考えるよりも、「うまく息を抜きながら社会と向き合うこと」を教えてあげてほしい

 ——もし、子どもが突然「学校を休みたい」と言ってきた場合、休ませるべきでしょうか?

 

石井さん:

「学校を休みたい」と深刻に言ってきたときには、「そうしよう」と休ませてあげてください。2、3日して心と体が休息できたら学校に通うようになるはずです。

 

もし、その後も長く学校に行けなくなるようなら、学校と距離を取らなくてはいけない何らかの理由があるのでしょう。

 

不登校になる子の多くが、エネルギーがプツンと切れてしまったかのように、ある日突然学校に行かなくなってしまいます。その前段階になんらかの変化やSOSが出ていることもありますが、知っておいてほしいのは、「どんな子でも不登校になる可能性がある」ということ。クラスの人気者でも、勉強ができる子も、運動ができる子も、コミュニケーションスキルが高い子でも、本人の中で何かしらの不具合が重なっていくと不登校につながります。

 

子どもがいる世界って、大人が思っている以上に残酷だったりするんです。「不登校にさせないための予防」はできないと思うことも大事かもしれません。学校が大事というより「あなたが大事」という心持ちで接し、「ときには休んでもいいから、手を抜きながらやればいいよ」と、子どもに休み方や力の抜き方を教えてあげてほしい。そうすることで、今後もうまく社会と付き合っていけるようになるのではないでしょうか。

 

学校側の変化に合わせるのではなく、家庭ごとに学校との向き合い方を決めること

——親としては「感染リスク」はもちろん、「勉強の遅れ」も大きな不安要素ですが、親子のコミュニケーションで気をつけるべきことはなんでしょうか?

 

石井さん:

長期休校による子どもの学習の遅れや生活習慣の乱れを心配されている保護者も多いですが、家庭内では、あまり子どもに不安視させないということが大切だと思います。どんなに予防をしても感染リスクはゼロではないですし、感染した人がいたとしても、その人を責めるのではなく悪いのはウイルスだと認識するようにしてください。

 

子どもは親の喜ぶ顔や笑顔に安心します。特に今は子どもが帰宅するたびに、「手を洗ったの?」「うがいしたの?」と、ウイルス対策のことを口うるさく言ってしまいがち。それも大切ですが、ときには学校のことでも今日の夕飯の内容でも、なんでもいいから笑顔で話せる時間を作ってみてください。

 

勉強の遅れに対しては、1、2年勉強していなくても後から取り戻すことはできるんです。ただし勉強の遅れを取り戻す際に、「自分が受けてきた傷や苦しさがケアされていること」が前提条件。心も体も休息できていれば、その後の勉強の仕方次第で遅れは取り戻せるはずですよ。

 

ずっと焦りや不安の中にいると心が疲弊してしまいます。前例のないことが続いていますが、周りに振り回されるのではなく、「今は休息の時間なんだ」と親も子も割り切って、「非常事態の中でぼちぼちやっていこうよ」というくらいの考え方が、今の時代には必要だと思います。

 

——授業再開後も、「席の間隔を空ける」「会話をできるだけ控える」などの対策をとる学校も多いかと思います。子どもたちにストレスを抱かせないために、親として、大人として、子どもたちにどのように向き合えば良いでしょうか?

 

石井さん:

今、教育現場では「子どもたちの安心・安全を優先しなければいけない」という考えと、「普段の教育活動をしなければいけない」という考えが天秤にかけられているように感じます。

 

分散登校が始まってすぐの全校集会中に倒れてしまった子がいたそうです。衣替え前の冬服の制服で、マスク着用を指示され、長時間炎天下に立ち続けた結果の体調不良だったようです。

 

この約3カ月間の休校は、「子どもたちの安全のため」に取られた措置だったはずなのに、学校が再開した途端にそれを忘れ、子どもたちに無理をさせてしまっては本末転倒。「今日は気温が高いから屋外での集会はやめよう」と判断するなど、学校側には「子どもたちの安心と安全」を優先させてほしいですね。

 

今後も、夏休みなどの長期休みの短縮や、土曜日授業の再開など、学校側の動きはいちじるしく変わるでしょう。常にその変化に足並み揃えていくのではなく、「わが家ではこうしよう」と、学校との向き合い方を決めることが大切だと思います。

 

「週二日だけ学校に行く」でもいいんです。学習塾や家庭用教材アプリもありますし、勉強は後からでも取り戻せます。学校の動きに合わせるというよりも、自分たちの生活に合わせた学び方を考えていった方が良いのではないでしょうか。

 

親ほどわが子のことを考えている人はいません。わが子にとって大事な環境はどういうものなのか家庭ごとに「わが子にとっての一番良い育ち方って何だろう」と考えてみてください。

 

 

 

PLOFILE 石井 志昂(いしい  しこう)

『不登校新聞』編集長。1982年東京都生まれ。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、中学二年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳から『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年、編集長に就任。これまで不登校の子どもや若者、親など300名以上に取材を行うなど、不登校をテーマに取材を重ねる。不登校新聞としての編書に『学校に行きたくない君へ』があり、今年7月14日には続編となる『続 学校に行きたくない君へ』が発売予定。

http://www.futoko.org/

https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8008208.html

 

文/佐藤有香

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