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男性保育士のオムツ替えに抵抗ある?保育現場に潜む“性別の思い込み”

子育て

2021.05.18

男性保育士

「男性保育士に女児のオムツ替えをしてほしくない」という保護者からの声に、保育園はどう対応すべき?

 

これは、保育事業を行う「 グローバルキッズ」が川村学園女子大学教授の内海﨑貴子さんを講師に迎えて開催したグループワークでの一場面です。

 

内海﨑さんは「こうした言動の根底にはジェンダーバイアス(性別による無意識の偏見)がある」と指摘します。

 

「女の子だから」「男の子なのに」といった考え方を子どもに押し付けないよう意識する保護者は増えていますが、長年刷り込まれた“性別に紐づくイメージ”はそう簡単に消えません。

 

その前提を踏まえて、親世代はどう振る舞うべきでしょうか。内海﨑さんに解説してもらいました。

男性保育士にかかる二重バイアス 

「男性保育士が女児のオムツ替えをすることに抵抗がある」という冒頭のケースについて、内海﨑さんは「二重のバイアスがかかっている問題」だと語ります。

 

「これは保育の現場では実際に多い声ですので、ていねいに解説していきますね。

 

まず、ひとつめは職業に対するバイアスです。男性の小児科医に抵抗があるという話はほとんど聞きませんよね。ですが、男性の保育士には抵抗があるという保護者は今も一定数います。そう感じる方々の中には、オムツ替えというケア役割=母親(女性)の役割だという固定観念があるのだと思います。

 

多くの場合、それは家族の役割がそのまま外部にも投影されているんですね。だから女性保育士であれば違和感はないけれども、そこに男性保育士が入ってくると“不適切”だと感じてしまうのでしょう」(内海﨑さん)

 

それを裏付けるように、男性保育士が常態化している保育園では、「保護者が男性保育士に求める役割は女性保育士に求めるものと何ら変わらなくなる」という研究報告がすでに出ていると内海﨑さんは述べます。

おうちジェンダー_保育士と子ども2

保育士を性別で判断しないで

では、「男性保育士が女児のオムツ替えをする」ことに抵抗を抱く人の中にある、ふたつめのバイアスとは何でしょうか?

 

「それは、女児のオムツ替えをする男性保育士に“父親”の役割を重ねるのではなく、“男性”として見てしまうからこそ生じる不安です。

 

いずれも、男性保育士が増え始めた過渡期の今だからこその問題だといえるでしょう。かつて、お産が女性のものとされていた頃は男性医師を拒む女性が大勢いましたが、それと同じ構造です。男性保育士の数が増えていけば、いずれ当たり前になっていくでしょう。

 

そもそも女性の保育士であれば安全だ、とは言い切れませんよね。女性の保育士が問題を起こすケースも当然あります。性別で乱暴に切り分けるのではなく、保育士と保護者が丁寧にコミュニケーションをとっていくことが大切です」(内海﨑さん)

成長=ジェンダー化の過程

今、保育の現場では「ジェンダーバイアスの再生産を防ごう」という意識が年々高まっています。

 

「子どもが育っていく過程=ジェンダー化される過程と言われているくらいに、幼少期のジェンダー形成はその人の人生や価値観に大きな影響を及ぼします。ですが、保育園や学校で行われる性別役割に基づく教育が、ジェンダーの再生産装置になっているケースも残念ながら少なくありません」(内海﨑さん)

 

例えば、ファンシーなキャラが好きな男の子が、女の子から「男の子なのにヘン」と言われてうつむいてしまった。「サッカーは男の子がするもの」だと思い込んでいる女の子…。

 

このような子どもたちの言動もジェンダーの再生産の結果だと内海﨑さんは指摘します。

 

ではこういったケースでは、周囲の大人はどう振る舞えばよいのでしょうか。

 

「男の子がファンシーなものを好きでも、本来はちっともおかしくありません。でも多くの人はかわいい=女の子が好きなものと認識している。

 

この場合は、いろんな声掛けができると思いますが、まずは『ヘンだよ』と言った女の子に『なぜヘンだと思ったの?』と聞くところから始めてみてください。その子が抱いた違和感をすぐさま否定せずに、いったんは受け止めましょう。

 

その上で、『犬をかわいいと思うのに、男の子や女の子は関係ないよね』『その○○(ファンシーなもの)も同じじゃないかな?』と他の例を交えながら話してみるといいかもしれませんね。

 

何より忘れてはいけないのは、うつむいてしまった男の子へのフォローです。『先生も○○が大好きだよ』のようなエンパワーしてあげるひと言をかけてあげるとよいと思います」(内海﨑さん)

おうちジェンダー_保育士と子ども3

では、「自分は女の子だからサッカーはやらない」と思い込んでいる女の子には、どのようにアプローチすればよいでしょう?

 

「こちらはサッカー=男の子のもの、という固定観念が刷り込まれたケースです。『女の子だってもちろんサッカーできるんだよ』『澤穂希選手っていう上手な選手がいるんだよ』と具体的なモデルを示してあげるのもいいですよね。

 

ただ、名前を聞くだけではイメージ、実感が持ちづらいと思いますので、実際に女の子と男の子が一緒にサッカーで遊べる環境づくりを促したり、女性の先生自身が一緒にサッカーをしてあげたりすると、さらにいいかもしれません」(内海﨑さん)

そもそもジェンダーバイアスは大人由来

子どもたちの思考や行動に影響を与えるジェンダーバイアスは、そもそも社会を構成する私たち大人から由来するものです。

 

「ジェンダーバイアスは多様性の実現をはばむものである、という事実は教育の世界ですでに明らかになっています。無意識の偏見を次世代で再生産しないためにも、幼少期から性別にとらわれない、それぞれの子どもの違いを尊重した育児を心がけましょう」(内海﨑さん)

 

保護者が自分自身のジェンダーの偏見や思い込みに気づくことは、多様性を尊重する子育ての大切なスタートラインになるはず。性別というラベルにとらわれず、子どもの個性を受け入れ、サポートしていく子育てを実践していきましょう。

 

Profile 内海﨑貴子(うちみざき・たかこ)さん

内海崎貴子教授

川村学園女子大学 教育学部 児童教育学科 学科長・教授。専門領域は教育学(人権教育、ジェンダー平等教育)、女性学(セクシュアリティ、性の多様性)。保育士・教員研修で、ジェンダーバイアスに気づくためのワークショップ「差別体験授業」を展開中。

 

Profile グローバルキッズ

グローバルキッズロゴ

首都圏を中心に183の保育施設を運営する保育園グループ。将来、子どもたちが一人ひとりの個性を十分に発揮し、自分らしく日々を楽しんでほしい。その思いから、保育者に対し正しい知識の習得と実践を目指すジェンダー教育にも取り組み始めている。

取材・文/阿部 花恵 写真提供(砂場遊び分、女性保育士分)/グローバルキッズ

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