2019.08.26

国語の音読が苦手な小学生に「もっと読み聞かせを」が見当外れなケース

小学校の国語の宿題の定番ともいえる、教科書の音読。

毎日のように「音読カード」にサインをしているというママやパパも多いのではないでしょうか。

 

小学校入学当時は、つっかえたり、たどたどしいのが当たり前だった音読も、だんだんと読める漢字も増え、すらすらと読めるようになってきますが、中にはいつまでも上手に読めない子がいます。

 

実は、音読が苦手なのは「国語や読書が嫌い」「本人の努力不足」などの理由ではなく、生まれつきの脳の機能が原因でうまく読めない場合があります。

 

今回は、発達障がいのために音読が苦手な子について解説したいと思います。

 

「もっと本を読み聞かせて」が見当外れなケースも


公立小学校であれば、入学当初はクラスの大半の子がうまく音読できなくてもおかしくありませんよね。

 

だんだんと慣れてくると、音読が止まるのは習ったばかりの漢字や珍しい言い回しが出てきたときくらいになり、ほとんどの子が普通の速度でつっかえずに読めるようになります。

 

しかし、2年生や3年生になっても、何度も途中で止まってしまって音読がうまくできず、ママもだんだん心配になってくることがあります。

 

そのほとんどが、普段の会話は何も問題がなくむしろよくしゃべる子だったり、算数はよくできたりするため、発達の遅れだとは思わず「この子はなんでこんなに音読が苦手なのか」と悩んでしまいます。

 

周囲に相談すると、

 

「もっと本が好きになれば喜んで読むはずだから読み聞かせをいっぱいしてあげて」

「とにかく慣れだから、どんどん音読をさせればいい」

 

などの答えが返ってきますが、実行してもあまり改善しないことも。

 

このような場合は、もしかして発達障がいが原因かもしれません。

 

音読ができない原因の発達障がい「ディスレクシア」とは


子どもの発達障がいにはいくつかの種類がありますが、知的な発達の遅れをともなう場合は、まわりも比較的早い時点で気がつきます。

 

しかし日常生活や会話は他の子と変わらないのに、文字を読む・計算するなど特定の分野の機能だけが困難な状態を「学習障がい(LD=Learning Disability)」といい、小学校に入って授業が本格化するまで気付かれないことも多くあります。

 

学習障がい(LD)の中で、音読が特に困難な障がいを「ディスレクシア」、日本語では「読字障がい」「難読症」ともいいます。

 

ディスレクシアの子どもには、次のような特徴があります。

 

  • 言われた言葉を聞き間違える
  • 音読がたどたどしい、遅い
  • 一文字ずつ区切って読む「逐次(ちくじ)読み」をする
  • 文字や行を読み飛ばしてしまう
  • 「っ」「ゃ」などの小文字が入った単語が読めない
  • 「ろ」や「る」など形の似ている文字を見分けられない など

 

その子によって程度は違い、かなり学年が上がるまで気付かれなかったり、単に「成績が悪い子」として卒業まで過ごす子もたくさんいると考えられています。

 

有名人では、俳優のトム・クルーズや映画監督のスティーブン・スピルバーグが自らがディスレクシアであることを明らかにしています。

 

日本では、英語圏の国よりは少ないものの、人口の約0.7~2.2%、大人も含め全国に100~200万人のディスレクシアの人がいると推定されています。

 

最近の研究によれば、脳の中で「音韻」(発音や音の区切りを処理すること)に関わる部分がうまく働かないために、見たり聞いたりした内容を声に変換するのに時間がかかったり間違いが多くなったりすると考えられています。

 

 

「音読がうまくできない」は工夫で克服できる?


学年が上がってくると、授業中に音読がうまくできないことでからかわれたり、黒板やプリントに書かれた意味が理解できなかったり、困る場面が増えてくるかもしれません。

 

しかし、ディスレクシアをはじめとした学習障がいは、早い時期の適切なサポートによってかなりの困難が軽減できたり、トレーニングによりできることが大幅に増えることも分かっています。

 

担任の先生とは情報を共有し、どうすれば一番本人にとって分かりやすいのかを伝えて工夫できることはお願いしましょう。

 

例えば次のような工夫が考えられます。

 

分かち書きして音読する

「きょうがっこうでみんなといっしょにおにごっこをしました」

であれば、

「きょう がっこうで みんなと いっしょに おにごっこを しました」

と分けてスペースを空けると読みやすくなります。

 

低学年なら手書きで書いたものを持たせてもいいですし、高学年になってきたらパソコンなどで作って印刷してあげてもいいですね。

 

事前に学習内容を確認しておく

翌日新しく習う部分は事前に家で内容を確認しておくと、授業で部分的に意味がとらえられなくても推測して理解しやすくなります。

 

ふりがなやラインを活用する

漢字が苦手なら、教科書やプリントにふりがなを書きこんだり、1行おきに蛍光マーカーでラインを引くなどの工夫で読みやすくなります。

 

何が一番分かりやすいかはその子によって違うため、色々試して合う方法を見つけましょう。

 

絵やイラストを添える

文章が続く場合、場面や登場人物のイラストを添えると流れが理解しやすくなります。ママやパパ、きょうだいが絵が得意なら描いてあげてもいいですし、担任の先生に相談すれば対応してもらえるでしょう。

 

まとめ


筆者のお気に入りの絵本のひとつに、LDを持った絵本作家パトリシア・ポラッコさんが、自らの子ども時代を描いた絵本『ありがとう、フォルカーせんせい』があります。

 

小学校時代、文字を読むことも計算をすることもできなかった少女が、フォルカー先生のサポートで自信を取り戻し、あこがれの本を自分で読めるようになるまでの物語はとても感動的。

 

お子さんの音読が気になっている人も、そうでない人も、ぜひ一度親子で読んでみて下さいね。

 

文/高谷みえこ

参考:一般社団法人日本ディスレクシア協会「ディスクレシアとは」

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)

「読み書き障害児」の脳活動の異常を発見~発達性読み書き障害(ディスレクシア)の神経学的な病態を解明~」

書籍『脳を強化する読書術』加藤俊徳 著/朝日新聞出版

絵本『ありがとう、フォルカーせんせい』パトリシア・ポラッコ 著/岩崎書店

 

高谷 みえこ

ライター歴15年。大手企業サイトなどで執筆を行う。得意分野は女性・主婦向けの記事。育児ポータルサイトでは新米ママのお悩み相談コーナーで回答者を務めた実績を持つ。