自己主張と自己肯定感は相関関係
では、なぜことば力が伸びると自己肯定感が育つのでしょうか。
自分を伝えるようになるには、自分には伝えるべき価値があると思えること、つまり自己肯定感がベースになります。「ことば力」が伸びると、自信がついてきてさらに堂々と発言ができるようになります。
自分の頭で考え、それを自分のことばでしっかり伝える自己主張の発達は、自己肯定感と深く結びついています。自己主張と、自己肯定感の発達には相関関係があることが研究で明らかになっています。欧米では、幼いときから他人とは違う自分なりの意見を持つように教育され、たとえクラスの中で一人だけ違う意見だったとしても、堂々と自己主張することが大事、と教えられています。
謙虚さが美徳とされる日本では、自己主張は必ずしも良いこととは思われていません。自分勝手、わがままというマイナスのイメージがあります。自分を強く打ち出し過ぎることを避けて、人と折り合っていく方が好まれます。
では、これからも同じでしょうか?今、すでにビジネスの現場ではプレゼンテーション能力が重視され、会議で自分の企画を通すためには自信に満ちた態度で、根拠やデータに基づいた論理的な説明が求められています。堂々と発言することは自己肯定感がベースになっています。
これからの社会を生きる子どもたちには、人と折り合いながらも、大事な時には自分をしっかりと表現する力を身につけてあげたいですね。
今、子どものことば力が危ない理由
ところが、子どもたちはことば力を伸ばしにくい状況にあります。
子ども同士の会話やLINEなどでは、短い感覚的な表現や絵文字で会話が成立しますよね。楽しいこともつらいことも、「やばい」ですんでしまう。筋道を立てて話す機会がありません。仲間以外と会話する際の対外的なコミュニケーション力が育ちにくいんです。
また、インターネットやSNSが発達した今の時代は、ことばがあふれている世界です。検索で簡単にことばが手に入ってしまうので、自分で考えて発すべきことも検索で得たネタのコピペで簡単に作れてしまいます。便利になる一方で、 自分の頭で考えてことばにしていくことが苦手な子どもが増える要因だと感じています。