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改正児童虐待防止法で子どもへの体罰禁止へ「しつけで叩くと逮捕」って本当!?

子育て

2019.07.21

児童虐待防止法が改正

2019年6月、国会で、子どもの虐待を未然に防ぐことを目的に、2つの法案が可決されました。

 

このうち、新しい「児童虐待防止法」には「親による体罰の禁止」が明記され、たとえしつけ目的と主張しても、親から子どもへの体罰は法律で禁止されることが決まりました。

 

今回は、法律がどのように変わったのか、いつから施行されるのかといった基礎知識を、ママ・パパの目線で分かりやすく解説。現役子育て世代の体罰へのアンケート意識調査などもまじえ、「体罰禁止」について考えてみました。

 

法律のどこが変わった?体罰禁止はいつから?


今回成立した改正案は、以下の2つの法律について。

 

  • 改正児童虐待防止法
  • 改正児童福祉法

 

施行(実際に使われ始めること)の時期は、一部をのぞき、来年2020年4月の予定です。

 

変わったのは、おもに以下のような点です。

 

  • 「親によるしつけ名目での体罰を禁止」とはっきり記載
  • 支援を十分に行えるように児童相談所の体制を強化、人員も増やす

 

まずは、親の立場からみていきましょう。

 

法改正で、親(保護者)はどうなる?逮捕されるの?

「しつけ名目であっても体罰は禁止」と法律に明記されたのなら、これまでにあった数々の痛ましい虐待を行ったような親たちは、これからは通報すれば警察に逮捕されることになるのでしょうか?

 

反対に、もし一生に一度だけ子どもの手を叩いたとしても、その現場を目撃されたら逮捕されることになるのでしょうか?

 

答えはどちらもNOです。

 

実は、今回、法律で禁止されたとはいえ、罰則は定められませんでした。

 

理由としては、「親が逮捕されてしまうと収入が途絶え、子どもの生活や将来の進路に悪影響を与える」などが挙げられていますが、命を落とすほどの暴力や虐待を行う親の元に残される子どもにとって、罰則がないままでは法改正の意味がないという声もあがっています。

 

ただ、現在、児童虐待防止法とは別に、民法のなかに「懲戒権」という権利があり、そこでは次のように定められています。

 

・第820条(監護及び教育の権利義務)

 親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

・第822条(懲戒)

 親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。

 

「懲戒(ちょうかい)」とは、こらしめるという意味。

 

親は、あくまでも「子どもの利益のために」であれば、「必要な範囲内で」子どもをこらしめる権利があると書かれています。

 

具体的な方法は記載がありませんが、民法の注釈書として市販されている中で、もっとも詳細といわれる新版注釈民法(25)には、次のような「懲戒」のやり方が書かれているそうです。

 

「懲戒のためには、しかる・なぐる・ひねる・しばる・押入れに入れる・蔵に入れる・

 禁食せしめるなど適宣の手段を用いてよいであろう(以下、省略)」

 

「なぐる」と堂々と書いてありますね…。

 

文体からして相当古いものだとは思いますが、法律の専門解説書ですらこの調子なので、このままではとても子どもの安全が守られるとは言えないのではないでしょうか。

 

そこで、この懲戒権の規定も2020年の改正法施行後2年をめどに廃止または変更が検討されています。

 

これにより、虐待する親が「これはしつけ」「子どもがちゃんとした人間になるように体罰を与えた」とは主張できなくなります。

 

児童相談所や行政はどう変わる?

しかし、罰を与えることだけでなく、虐待を未然に防ぐ・早い段階で食い止める・再発を防ぐ、などの対策も欠かせません。

 

ニュースでは、児童相談所や行政が人手やスキル不足で対応しきれないという現状も報道されていました。

 

これについては、次のような改善が予定されています。

 

  • 虐待をした親へは、医学的・心理学的な知見に基づいた指導を行う
  • 子どもを一時保護する「介入」担当部署と、保護者の対応に当たる「支援」担当部署を分け、子どものすみやかな保護を目指す
  • 転居をきっかけに支援が途切れないよう、前後の児童相談所や自治体、学校で情報を共有
  • ドメスティックバイオレンス(DV)の対応機関と児童相談所の連携を進める
  • 学校や教育委員会・児童福祉施設の職員に守秘義務を課す
  • 児童相談所に弁護士が常駐、または連絡可能な状態へ
  • 虐待の兆候を発見するため医師や保健師を配置(22年4月から)
  • 改正法の施行後5年間は、政府が人材確保や施設整備などを支援
  • 専門職「児童福祉司」の増員

 

中には、実施ではなく「努力」目標であったり、今までやっていなかったのかと逆に驚くようなものもありますが、確実に実行していってほしいものです。

 

体罰禁止のイメージ

 

「体罰禁止」について、親や保護者からの疑問も


今回の法改正では、もうひとつ疑問点が残ります。

 

それは「どこまでが体罰なのか」という問題。

 

法案には何が体罰に当たるのか言及はありませんが、一足早く2019年4月に体罰禁止を条例に盛り込んだ東京都では、「子供の品位を傷つける罰」は、暴言や無視など、身体的な行為でなくとも体罰とみなすという見解です。

 

しかし、都の少子社会対策部によると、手を軽くつねることは「体罰とはいえない場合がある」とのことで、線引きに迷ってしまう部分も。

 

現在子育て中のママ・パパに以下のような質問をしてみると、その中でも意見の分かれるものが多くありました。

 

質問1:幼児が他の子や家族を叩いたときに、他人の痛みをわからせるために親が叩くのは体罰?

この質問には、

 

  • 体罰である…50%
  • 体罰とはいえない…50%

 

と、考え方がまっぷたつに分かれました。

 

「体罰である」という人からは、

「相手が悪ければ叩いてもいい、という見本を子どもに教えることになってしまう」

「たいてい親は怒っているから、エスカレートして必要以上に強く叩くことにつながる」

などの意見がありました。

 

「体罰ではない」と考える人は、

「叩いたら即座に同じ痛みを与えるようにすれば、だんだん学習してやらなくなるので、結局その方が早い」

「あえて、と親が分かっているならエスカレートすることもないし、子どもも理解できるはず」

という意見も。

 

質問2:子どもがいけないことをした時に、「嫌い」「うちから出て行け」と言うのは体罰?

いっぽう、「嫌い」「出て行け」などの暴言に対しては、

 

  • 体罰である…93%
  • 体罰とはいえない…7%

 

と、直接叩いたりしていなくても、ほとんどのママ・パパは「体罰」と捉えています。

東京都条例の「子供の品位を傷つける行為は体罰になる」と同じ考え方ですね。

 

質問3:食べ物やおもちゃを投げるなど、よくない行為を続ける子の手をつねるのは体罰?

同じく東京都の見解に「軽くつねるのは一概に体罰といえない」とありましたが、この質問には

 

  • 体罰である…78%
  • 体罰とはいえない…22%

 

と、体罰と考える人の方がかなり多い結果となりました。

 

これらの質問と同時に、子どもの体罰に関する判断に、自分自身が親から受けたしつけのやり方は影響していますか?とたずねたところ、

 

  • 親のやり方がよかったので踏襲した…21%
  • 親のやり方がよくなかったので違う方法を取っている…29%
  • 関係ない…50%

 

と、親のやり方を取り入れている人は、かなり少ないことが分かります。

 

昭和の親世代は、まだまだ体罰が当たり前の人も多かったのでしょう。

 

筆者も、おぼろげに手をつねられたような記憶がありますが、イヤな気持ちだけが残り、それによってより良く成長できたのかは不明です。

 

子どもの体罰について、今後の課題は


海外と比べると、子どもを虐待から守るための日本の法整備は50年ほど遅れているといわれます。

 

たしかに今回の改正は一歩前進ではありますが、まだまだ不十分な点が多く、次のような課題も指摘されています。

 

・一時的な人員増によるケアの質の低下

・保護施設の質の低下

・子どもの意見が尊重される仕組み(アドボガシー制度)が導入されていない

・親側の意識改革が放置されている

 

特に、最後の「親の意識」に関しては、体罰がダメというだけでは不十分で、体罰に代わる手法を伝えなければけっきょく虐待や体罰は減らないといわれています。

 

1965年に世界で最初に体罰禁止を法制化したスウェーデンの例では、当時、現在の日本と同程度の50%以上の親が体罰を容認していたそうですが、現在では8%まで下がったことが報告されています。

 

当時、法改正と同時に行われたのが、「体罰を用いない子育て」の専門家を配置し、親がいつでも気軽に相談できるような体制を整えたこと。

 

牛乳パックなど子育て世代の目にするモノに相談先を印刷して周知するなどの工夫により、しだいに、親たちもどう子どもに働きかければいいか身につけていったといいます。

 

まとめ


2019年に入ってからも、痛ましい虐待事件が続いています。国もようやく動き出したとはいえ、まだまだ完全ではなく、予算不足などを理由にこのまま止まってしまわないよう見届けたいもの。

 

そして、この機会に、「わが家の体罰についての考え方」を見直してみたり、世界と日本の違いなどに目を向けてみてはどうでしょうか。

 

文/高谷みえこ

参考:厚生労働省 児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号)

認定特定非営利活動法人 児童虐待防止全国ネットワーク「オレンジリボン運動」

子どもすこやかサポートネット「親の子どもに対する懲戒(ちょうかい)権について」

 

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