「出産するまで、赤ちゃんも歯ぎしりするなんて知らなかった」というママは多いかもしれません。 検診時の相談を見ていると、特に1歳前後の赤ちゃん、2歳前後の幼児、そして5歳頃の子に多いようですが、どうして赤ちゃんや子どもは歯ぎしりをするのでしょうか? 生え始めの柔らかい歯が欠けてしまうのでは?とも心配になりますよね。 実は、赤ちゃんや子どもが歯ぎしりする理由は、年齢によっても違いがあるようです。 今回は、なぜ歯ぎしりするのか?やめさせるべきなのか?といった原因とその対策を、専門家が発信している情報などから、年齢別に考えていきたいと思います。
1歳前後の赤ちゃんはなぜ歯ぎしりするの?
赤ちゃんは、一般的には生後半年頃から上下の前歯が生え始め、8カ月頃から奥歯も生え揃ってくる子が多いですよね。
しかし小児歯科学の専門家によると、この時期の赤ちゃんは、歯が生えてはきたものの、それをどう使えばいいのか最初は分からないそう。
歯をこすり合わせることで、噛み合わせの感触や強さを確かめたり、モノを噛み切ったりつぶしたりする練習をしているのだと言われています。
あまりにも長時間キリキリと歯ぎしりが続くようなら、抱き上げて景色を見せるなど気をそらすのも有効ですが、基本的にはあまり心配はいらないようです。
ただ、手に取ったものをなんでも口に入れて確かめる時期でもあるので、強く噛むと割れたり砕けたりして口の中を傷つけるおそれのある素材の食器やおもちゃは、赤ちゃんの手が届かない場所に置くようにしましょう。
2歳前後の子が歯ぎしりする理由と対策
2歳前後の子についても、よくママが「歯ぎしりが心配で…」と言うのを耳にします。
この時期は、「乳臼歯(にゅうきゅうし)」と呼ばれる奥歯が生え揃う時期。 生えたばかりの奥歯は高さが不ぞろいなこともあるため、こすり合わせることで噛み合わせを調整したり、次に生えてくる予定の歯の位置を決めようとしたりする「生理現象」だとも言われています。
5歳以上の子の歯ぎしりには2種類ある?
子どものあごの発達は、実は上下で均等に大きくなるのではなく、先に下あごが成長し、少し遅れて上あごが成長してくるのだそう。その時期が、ちょうど5歳頃だといわれています。 このとき、下の前歯が前に出ようとして上の前歯の内側に当たりやすいため、特に前歯でギリギリと歯ぎしりをする子が目立つようです。
ただ、しばらくするとまた上あごも成長して元どおりになるので、この時期の前歯の歯ぎしりは期間限定と考えてもよさそうです。目安は7~8歳頃だといわれています。
しかし、中には注意が必要な歯ぎしりもあります。
まず、生まれつきの噛み合わせや歯並びが原因で、常に歯が当たってしまうことによる歯ぎしり。 この場合、小児歯科で治療を受け、かみ合わせの調整をしたり、睡眠中にマウスピースを装着するなどの対症療法を組み合わせて、歯のダメージを防ぐ必要があります。
次に、噛み合わせや歯並びには問題はないが、眠っている間だけ強く歯を噛みしめたり歯ぎしりをするというケース。 この場合、100%断定はできませんが、大人によく見られる「緊張」や「ストレス」が引き金になった歯ぎしりの可能性があるそうです。 引っ越しなど生活環境の変化、園や学校でいやな思いをしている、厳しすぎる習い事や受験勉強などが緊張やストレスの原因と考えられています。
短期間の歯ぎしりで大きな影響が出たりすることはないそうですが、長期間続いてしまうと、次のようなトラブルが出てくることも。
- 歯が欠ける、すり減る
- かみ合わせが狂ってきちんと噛むことができず、食事の栄養が摂りにくくなる
- あごの形や顏の輪郭が変わる
- 歯ぐきが弱り歯周病にかかりやすくなる
- 永久歯の歯並びに影響する
この場合、同じくマウスピースなどで歯を守る対策を取りながら、同時に心理面のストレスを取り除けるようなケアが必要になってきます。
まとめ
今回は、歯科医など専門家が回答している「歯ぎしり」についての見解をまとめてみました。
赤ちゃんの歯ぎしりに関しては、ほとんどの場合が心配はいらないようですが、幼児から小学生以上の歯ぎしりは、心配いらないものと、少し注意が必要なものがあるようです。 ママやパパは、子どものお口の中と心の中、両方に気を配りつつ様子を見ていけるといいですね。
文/高谷みえこ
参考:
ライオン歯科衛生研究所「子どもの歯ぎしりの原因は?」 https://www.lion-dent-health.or.jp/mama-anone/baby-teeth/article/teeth-bruxism-04.htm
公益財団法人 母子衛生研究会 妊娠・子育て相談室「歯とお口のケア」 https://www.mcfh.or.jp/netsoudan/article.php?id=383
https://www.mcfh.or.jp/netsoudan/article.php?id=640
読売新聞「yomiDr.(ヨミドクター)」医療相談室「5歳の子 歯ぎしりする」 https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20100511-OYTEW47810/
徳島県医師会「歯ぎしり」 http://www.tokushima.med.or.jp/kenmin/doctorcolumn/hc/762-200