産後の女性の中には、体質や肌質などが妊娠前と比べて変わったと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。よく挙げられるのは、髪の毛が抜けやすくなった、肌が乾燥しやすくなったなどの目に見える変化ですが、人には相談しづらい性器周りの変化を感じる方もいらっしゃるでしょう。 しかし働くママは産後数ヶ月~2年以内には職場復帰される方が多く、忙しく過ごす日々の中で、ついつい自分の体のことは後回しになりがちです。 本コラムでは、意外と知らないカンジダ膣炎に焦点を当て、その症状や原因、対策などをご紹介したいと思います。
■カンジダ膣炎とは
カンジダ膣炎は性器感染症のひとつです。カンジダ菌という腸内や粘膜を持つ器官に常に存在している真菌というカビのような菌が、なんらかの原因で膣内に異常発生することにより発症するのがカンジダ膣炎です。実は女性の5人に1人が経験したことがあり、多くの方が悩まされている病気でもあります。 その症状は主に3つあります。1つ目は、性器周りや膣内にひりひりと強いかゆみを感じるということ。かゆさのあまり掻きむしってひっかき傷を作る方も少なくないようです。性器周りが腫れ上がることもあるようです。 2つ目は、白いおりものが出るということ。おりものの状態にもいくつか種類があり、酒粕状、おから状、ヨーグルト状と呼ばれることが多いようです。このおりものは膣内の壁に付着しています。また、炎症が悪化している場合には、おりものが強い臭いを持つこともあります。 3つ目は、性行為の際に強い痛みを感じるということです。性器周りや膣内が荒れているため、挿入時に痛みを感じやすい方もいるようです。また、人によっては排尿時に痛みを伴うという方もいます。 妊娠中や産後にこういった症状が現れた場合は放置せずにすぐ病院へいくことが需要です。
■カンジダ膣炎になる原因
それでは、カンジダ膣炎はどういったことが原因で発症するのでしょうか。 先程ご説明したように、カンジダは元々人間が保有している菌が異常発生することにより起こりますが、この原因は様々と言われています。 例えば、ストレスや疲労、風邪などからくる免疫力の低下が挙げられます。多くの病気もそうですが、カンジダ膣炎もそのひとつです。 また、ステロイド剤や抗生物質の服用も原因に挙げられます。抗生物質は、元々膣内にあった別の細菌も殺してしまうため、菌交代現象が発生し、カンジダ菌を増やしてしまうそうです。 また、妊娠による膣内酸性度の低下も挙げられます。妊娠中は膣内の環境が変わるため、通常時よりカンジダ膣炎が発症する可能性が高いと言われています。赤ちゃんへの産道感染を防ぐためにも、出産までに治療しておくことが大切です。 次に、性行為からの感染が挙げられます。カンジタ膣炎を起こす人の5~10%は性行為により相手から感染したものとされています。と言っても、男性でカンジダが発症する確率は女性より圧倒的に低いと言われており、性行為で男性から感染するケースは稀だそうです。 最後に、低用量ピルの使用による発症が挙げられます。低用量ピルを服用することで、体が生理前と似たホルモン状態となるため、腟内が酸性に傾きます。酸性状態はカンジダ菌が増殖しやすい環境となるため発症しやすいそうです。 他には生理の前後など、女性の体が変化するタイミングでカンジダ膣炎が発症することが多いようです。
■カンジダ膣炎の対策
様々な原因が考えられるカンジダ膣炎ですが、対策はどういったものがあるのでしょうか。 まずは、通気性の良い下着を身につけるということ。化学繊維を用いた下着はムレやすく、カンジダ真菌の温床となってしまいます。仕事中はストッキングを着用されている方も多いのではないでしょうか。その場合は余計にムレやすくなるため、下着だけでも綿やシルクなどの自然素材に変えてみてはいかがでしょうか。 次に、性器の洗いすぎに気をつけるということです。清潔に保った方が早く治癒するのではないかと思われがちですが、強く洗いすぎると、必要な善玉菌まで洗い流され悪化してしまうこともあるそうです。適度に洗うようにしましょう。 最後は規則正しい生活をするということ。カンジダ膣炎は免疫力の低下により発症するため、食生活や睡眠時間を見直すなどして、体調管理を心がけるようにしましょう。 発症してしまい、医師の診察を受けた場合には、薬を処方されます。膣内の治療には膣錠が使われます。1日1回、7日間挿入します。性器周りの治療には軟膏が用いられます。それでも治らない場合には引き続き医師の診察を受けましょう。 また、カンジダは再発するケースも多くあるようです。特に再発を繰り返すという場合には、原因に考えられるものを取り除いてみてはいかがでしょうか。医師への相談が必要となりますが、ステロイド剤や抗生物質の投与をやめる、ピルの服用をやめるなどです。また、糖尿病など、他の性感染症の疑いがある場合には検査を受けましょう。場合によっては、パートナーにもカンジダが発症している可能性はないか検査することも必要になるでしょう。
75%の女性が生涯に一度は経験し、45%の女性が2回以上発症していると言われるカンジダ膣炎。ポピュラーな病気なので、気負わずまずは医師に相談してみて下さい。