education201811

共働きの世帯が、専業主婦の世帯を上回ってから20年以上。

 

「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」と考える人は、昭和54年には男女ともに70%以上だったのが、平成26年には女性で3分の1以下・男性でも半数を下回り、過去のものとなりつつあるはず…ですが、実際に働きながら家事・育児をしているママの体感としてはどうでしょうか?

 

今回は、もっと家事や育児を担当してほしいと願うママと、「いや、やってるよ?」という夫の感覚のズレはどこから来るのか、家事ルールを決めることで改善するのか…などについて考えてみました。

 

夫が「自分は家事をやっている」と思い込むのには理由があった


内閣府の平成26年の調査によると、結婚している男女の家事時間の平均は、女性が5時間2分であるのに対し男性は47分と依然大きな差があります。

 

この結果には、子どものいない夫婦や男性がメインで家事をしている世帯なども含まれているため、現在もっとも多いであろう「夫がフルタイム勤務・妻がパートタイムまたは残業の少ないフルタイム勤務・子どもあり」の世帯に限ると、妻の家事育児時間はもっと多いと予想されます。

 

しかし、妻側が「もっと家事や育児を受け持ってほしい」と思っても、夫側は「いや、家事はけっこうやってるよ?」と思っていることも多く、夫婦での認識のズレがケンカの原因となることも。 これには次のような理由が考えられます。

 

当事者意識がない

「家事をやっている」と言うならまだ良いのですが、よく耳にするのが「家事・育児を手伝う」という表現です。

 

「手伝う」=「自分は当事者ではない」ということ。 結婚・家族という共同生活では、子どもも含めた一人ひとりが当事者であり、勤務時間が長くて家事ができなかったり、まだ年齢が小さかったりという理由で、今はママがかわりに担当しているというのが本来の考え方ではないでしょうか。

 

また、夫は無意識に自分の子ども時代の父親を想定していることがあります。

 

厚生労働省の意識調査(参考1)からも分かるとおり、昭和(パパの父親世代)には専業主婦の世帯がまだ多く、夫は家事の担当者ではないという考え方が多数派でした。

 

自分が当事者だという意識がなければ、妻から見るとまったく家事分担が足りていない場合でも、父親と比べて「自分はすごく手伝っている」と思ってしまっても不思議ではありません。

 

またママの側も、「うちのパパはあまり手伝ってくれない」と口にした時点で、本音では自分の仕事だと考えていることになります。

 

パパに当事者意識を持ってもらうには、「手伝う」ではなく、「手分けする」「担当する」と言い換えるなど、小さなことから工夫が必要です。

 

家事の量が可視化できていない

妻「もう少し家事をやってほしい」 夫「けっこう(ちゃんと)家事をやっている」 などはよく聞く言葉ですよね。

 

しかし、男性は数字や結果で物事を判断する傾向が強いといわれています。上記のような「ちゃんと」「少しは」などのあいまいな日本語だと、夫と妻で思っている家事ボリュームが一致していない可能性が。

 

例えば「ゴミ出し」は、夫にとっては、 「妻がゴミ袋に詰めたゴミを収集場所に持って行って置いてくる」 だけの作業であり、5分もかからないカンタンな家事と認識しているかもしれません。

 

しかし実際は、

  • ゴミの種類別に「可燃ごみは月曜と木曜、第1第3水曜日はカン、第2第4水曜日は不燃物…3週目は祝日があるから1日ずれる」などを把握し、覚えておく
  • ペットボトルは中身を洗って水を切り、キャップとラベルをはがしてプラスチックごみへ、本体はペットボトルの日に回収するためまとめておく…などの下準備
  • 分別したゴミを収集日まで衛生的に保管しておく
  • 収集日には家中のゴミを集めて袋詰めする
  • 指定ゴミ袋がある場合、サイズ別のストック管理や購入

といった、捨てる以外の作業がたくさん背後に隠れています。

 

自分が主体となって進めたことがなければ、これらの「見えない作業」が可視化できていないことが。

 

「家事なんてたいした作業じゃないのに、なんでそんなに大変なのか」と不思議に思ってしまうのです。

 

これに対しては、一度だけでも良いので、ひとつひとつの家事を表にしてみたり、付せんに書いたりして、実際に夫婦のどちらがそれをやっているのか、かかっている時間はどのくらいかなどを「見える可」するのも有効と言われています。

 

実際、ビジネス誌「AERA」などでも、過去にこの「家事育児100タスク表」を掲載し特集を行っています。(参考3)

 

もちろん、「ほら、あなたと私でこんなに違うじゃない!」と責める材料にするとケンカになってしまう危険性があるので、「雑誌やネットで話題になってたけど、うちはどうかな?」等と、ゲーム感覚で挑戦してみるのがいいですね。

 

先輩ワーママたちの家事ルール、聞いてみました


共働きのママたちに、家事ルールは決めていたか、どのような内容だったか…などを聞いてみました。

 

曜日や時間ではなく、内容で家事を分けている

Nさん(33歳・2歳のママ)は、試行錯誤のすえ、次のようなルールにしたそうです。 「子どもが生まれるまでは、できる方がやればいいよね、という考えでした。週末の朝食は早く起きた方が作る、洗濯物の取り込みや夕食も早く帰った方がやる…という感じで。でも、実際は食事作りが面倒だからなかなか朝起きなかったり、残業してもしなくてもいいのにあえてゆっくり会社に残ってしまったりで、生活リズムに悪影響なことが多々ありました。子どもが生まれてからは、保育園の送り迎えもあるし、それでは通用しませんよね。私の産休が終わる前に夫婦で話し合い、洗濯機を回すのは私・干すのと取り込むのは夫、私が料理や離乳食を作るのでキッチン関係は私・お風呂やトイレの掃除は夫…というように、場所や内容で分担することにしました!そのかわり、相手の担当がちゃんとできていなくても文句を言うのはNGとしています」

 

「ルールは決めない」派も意外と多い?!

また、「あえてルールを決めていない」という人も多かったのが印象的です。

 

Uさん(33歳・5歳と2歳のママ) 「分担を決めてしまうと、もしすごく疲れていても、これは自分の仕事だから…と歯を食いしばってやることになり、かえって相手に不満が出るのでは?と思ったんです。家族なのだから、あまりガチガチに担当を決めるより、臨機応変に思いやりを持って進める方が、私には合っている気がします」

 

Yさん(29歳・0歳のママ) 「私の場合、具体的にこれとこれをしてほしい!というよりも、短時間勤務であれ、仕事も家事も育児も大変な中でがんばっていることを理解してほしい・ねぎらってほしいという気持ちが強かったので、それだけはよろしく!と伝えました。夫に理解があれば、実際の家事分担量が少なくてもあまり不満に感じません。むしろ、私が辛そうな時はすっと洗濯物を取り込んでくれたりしますよ」

 

ルールを決めなくても上手くいっている夫婦の場合は、「相手の大変さを想像できるかどうか」がポイントなのかもしれませんね。

 

思い切って外注する手も

夫が激務で残業が多いなど時間的に家事分担が難しく、「家事がこなせないから私が仕事時間を減らそうかな…」と迷っている場合は、家事の外注も検討する価値があります。

 

特に、コンロ周りやお風呂など大掛かりになりがちな部分の掃除や、料理が苦手なら作り置きサービスなど、頼める家事の種類も充実しており、2018年現在の最安値を調べてみると、1時間2500円以下で来てくれるところも多くあります。

 

フルタイムを続けることで得られる収入と、家事サービスに支払う代金、子どもとの時間や休養がどのくらい生み出せるかなどを紙に書き出して比較し、「メリットがある」と感じたら、夫にもそれを見せて導入を検討してみるのも良いですね。

 

まとめ


共働き世帯の家事ルール・分担は、ふたりの働き方やお互いの性格にも左右されますが、共通するのは、「何をどれだけやるべきなのか」をお互いが把握し、共有していることがもっとも大切だと思いました。

 

そして、転職・異動や勤務時間の変化・出産・子どもの入園入学などで環境が変わった時や、夫婦どちらかの体調が悪い時などは、決めたルールにこだわりすぎず気軽に話し合い、家族みんなが暮らしやすいようにルールを更新していけると良いですね。

 

文/高谷みえこ 

参考:厚生労働省「専業主婦世帯と共働き世帯の推移」 

内閣府男女共同参画局「有配偶者の家事関連時間」 

AERA「共働き世帯の家事育児100タスク表(保育園編)」