気温が上がるこれからの季節。気になるのがお弁当の衛生管理です。暑さと湿気でカビや雑菌が繁殖し、食中毒になったら…と想像するだけでゾッとしますよね。家族を食中毒から守るために「お弁当づくりの注意点」を、料理研究家の新谷友里江さんに伺いました。
2児のママでもある新谷さんです。普段はお子さんを保育園に預けているため給食があるそうですが、遠足などの行事の時にはお弁当を手作りするそう。「暑い時期のお弁当作りは、いつもより注意が必要です」と新谷先生。さっそく、傷みにくいお弁当を作るコツをご紹介します。
目次
傷みにくいお弁当を作るコツの基本
「夏のお弁当作りで大切なのは、とにかく『温度』と『水分』に気をつけることです!」と新谷先生。食中毒は主に細菌やウイルスによって引き起こされますが、梅雨から夏の終わりまでの時期は暑さと湿気のせいで特に腸管出血性大腸菌(O157、O111など)やカンピロバクター、サルモネラ属菌などの細菌が食べ物の中で増殖しやすく、それを食べることによって引き起こされるのです。ひどい自体になりかねないので、しっかり対策しましょう。
1.中心温度75度以上で加熱
これは基本中の基本です。中心温度が75度以上で1分以上、食材を加熱することで、ほとんどの菌が死滅すると言われています。まわりが熱々でも、中は火が通っていない場合もあるので、竹串を刺したり、切って中までしっかり火が通っているか確認しましょう。
2.食材に水分を吸わせる
水分が出やすい野菜などには、おかか、すりごま、とろろ昆布、のり、ワカメなどと組み合わせを。食材から出る水分を吸収してくれるので、お弁当が傷みにくくなります。もちろん、混ぜる前には、食材の水けをまずしっかりときることが大切です。
3.殺菌効果の高い食材を使う
酢、カレー粉、梅干し、生姜、ワサビ、カラシなどは菌の繁殖を抑える効果が期待できます。酢のにおいが苦手なお子さんもいると思いますが、ご飯を炊くときに酢を入れてから炊くと、ご飯が傷みにくく、においも気にならなくなります。
4.保冷剤などで、よく冷ます
おかずやご飯はよく冷ましてからお弁当箱に詰めましょう。温かいママ入れるとお弁当箱の中で菌が増殖してしまう可能性があります。時間がない時は保冷剤の上にご飯などを入れたバットを置くことで、より冷めやすくなります。濡らしたキッチンペーパーをかぶせることで、キッチンペーパーが熱を吸収してくれて、ご飯の表面が乾燥するのも防いでくれます。
5.容器や器具は清潔なものを
保存容器や調理器具はきちんと洗って清潔なものを使いましょう。煮沸消毒できればより安心ですが、時間がなければお湯を全体にかけ、自然乾燥するのがおすすめ。保存容器はプラスチック製よりもアルミやホーロー、ガラスなどがおすすめです。プラスチック製は容器に色移り、匂い移りしやすく、洗うのも大変です。
6.作りおきおかずも再加熱
作りおきおかずを入れる場合も、保存容器からそのまま入れるのは傷みの原因に。再度電子レンジなどで加熱して、冷ましてからお弁当箱に詰めましょう。ちょうどいい具合に溶けるからと自家製の冷凍食材をそのまま入れるのは危険です。中心温度が75度以上になるよう、必ず再加熱してから。
7.ミニトマトはヘタをとって
レタスなどを色どりをよくするために敷いてしまいがちですが、生野菜は水分が出やすいので危険です。夏は特にお弁当には入れないようにしましょう。隙間埋めに使うなら、ミニトマトが無難。ただし、ヘタは雑菌がいっぱいいるので、必ずヘタをとってきれいに洗い、切らずにそのまま詰めましょう。
8.加工食品も一度火を通す
ちくわやハムなどは加工品だからそのまま入れても大丈夫、というわけではありません。流通するときや製品として保管されている間に最近がついている可能性があるので、炒めものなどにして、一度しっかり加熱してから入れるようにしましょう。
9.お弁当カップに小分けする
他のおかずに水分が移ったり、おかず同士が触れ合うことで水分が出てしまうのを防ぐために、それぞれカップに入れてからお弁当箱に詰めるようにしましょう。100均などでかわいいデザインやいろいろなサイズのカップが売られています。
10.おにぎりはラップでにぎる
目には見えませんが、手には常在菌がいっぱい。どんなにきれいに洗っても、菌は手に残っているものです。「おにぎりは素手で握る」というこだわりは捨て、ラップなどを使って握るようにしましょう。
PROFILE 新谷 友里江
料理家・フードコーディネーター・管理栄養士。祐成陽子クッキングアートセミナー卒業後、同校講師、料理家祐成二葉氏のアシスタントを経て独立。書籍・雑誌・広告などのレシピ開発・フードスタイリング・フードコーディネートを中心に活躍中。企業向け、メーカー向けレシピ開発や商品開発も手掛ける。2児の母。
撮影/masacova!