日本テレビの報道記者、キャスターとして、長年教育問題を取材してきた岸田雪子さんの著書『いじめで死なせない 子どもの命を救う大人の気づきと言葉』(新潮社)。 過酷ないじめを受けながらも生き延びた「いじめサバイバー」
の声に耳を傾けるなかで、
大人がかけるひと言が子どもの命を救うカギとして浮かび上がってきたそう。 本誌では、子どもたちを守るため、今私たちが知っておくべきことを教えてもらいました。 今回はその一部をご紹介します。
教えてくれたのは…
岸田雪子さん
東京都生まれ。早稲田大学法学部を卒業、
CHANTO読者にアンケートをとってみたところ…
24人/116人が
すでに子どものいじめを経験していました
まだ子どもが小さく、
身のまわりではいじめについてあまり問題になっていないからと、
どこか人ごとに思っていませんか? 読者のみなさんにアンケートをとってみたところ、回答者の約1/5が、子どもがいじめにあったことがあると回答。この数、「
人ごと」と流せる数ではありません。子どもをどう守るか、
真剣に考える必要があります。
子どもからのSOSに親としてこたえるために
できること、すべきこと
いじめは見えにくくなっている
最近のいじめの特徴について教えてください
岸田さん:今、いじめの形が変わりつつあります。
昔のような暴力的ないじめはやや減り、
大人の目から〝
外から見ていると友達どうしでふざけ合っているようで、
大人の目には「仲のいいグループ」に映ってしまうんです。また、インターネットやSNSの普及も、
いじめを見えにくくする大きな要因です。
自分の子どもがツイッターで暴言を吐かれていたり、
LINEのグループからひとりだけはずされていたとしても、
そのことに親が気づくのは難しいですよね。
では、どうすれば子どもがいじめられていることに気づけるのでしょう?
岸田さん:まず、私たちは「何かあっても、子どもは話してくれない」
特に女の子は学校での出来事を親に話してくれることも少なくない
でしょう。働くママの場合、仕事や家事に追われて、
子どものためになかなかまとまった時間をさけない人が多いですね
。私自身もそのひとり。
親が忙しそうにしていると子どもはそれを察し、
言いたいことをのみこんでしまいます。そんなときは「あと30分で仕事(家事)が終わるから、
親が結論を出さずに、まずは聞き役に徹する
子どもの変化に気づいたり、子どもが自分からいじめられていることを伝えてくれたときに、気をつけなくてはならないことはありますか?
岸田さん:子どもの話にじっくり耳を傾けることが第一。
もし子どもが自分から打ち明けてくれたら、「
話してくれてありがとう。必ず助けになるよ。
あなたの味方だからね」と心から伝えてください。このとき、親が先に「いじめられているんでしょ?」とか、「あなたも、何かやったんでしょ」
ゆっくりとやさしく「何があったの」「そのとき、
どういう気持ちになったの」「どうしてほしかったの」「今、
どうなってほしいの」といった投げかけをし、時間をかけて、
冷静に聞くことがポイントです。
親が先回りして結論を出したり、行動を起こしてはいけないのですね。
岸田さん:その通りです。当事者はあくまでも子ども自身。感情的に動くのではなく、
子どもの将来を考えると、できるだけ早く学校に戻したいという親も多いかと思います。
岸田さん:いじめ行為がやまないまま学校に戻そうとすることは子どもを追い
私たち大人の気づきと言葉によって、
先輩ママが目撃したいじめの現場と、子どもを救った言葉と行動とは? 次ページに2人の先輩ママの体験談をまとめました。
私が目撃したいじめの現場と
子どもを救った言葉と行動
CHANTO読者のなかにも、自分の子や身近な友人・
子どもの狭い世界から視野が広がるように努めました
小竹さん(仮名)
・33歳、東京都在住 ・パート ・夫、長男(8歳)の3人家族
「息子が小学校に入学し、2か月ほどたったときのことです。
▽岸田さんからひと言
やさしく寄り添いつづけたお母さんに、息子さんも安心して話すことができたのでしょう。グループを固定化せず、いろんな友達がいると気づかせることは、年齢が上がってからも有効な声かけのひとつです。
先生に助けを求めたことで動画いじめが解決へ
安藤さん(仮名)
・36歳、三重県在住 ・看護師 ・夫、長男(3歳)、次男(1歳)の4人家族
友人の子どものAくんが小6のときに受けたいじめの被害です。同級生で同じクラブのBくんに、
▽岸田さんからひと言
嫌がらせの動画アップは、小学生のあいだにもふえています。加害者側の親が放置している場合もあり、学校を介して削除を求めることが近道でしょう。削除後もAくんの心のケアには長い目で関わる必要があります。
新学期がはじまったばかりの9月は、いじめが表出しやすい時期です。 『CHANTO』10月号では、岸田さんのロングインタビューに加え、先輩ママの体験談もさらにご紹介しています。子どもの命を守るため、ぜひ参考にしてみてください。