自治体の「公認インスタグラマー」として、「町おこし」に取り組む


2016年には、6年付き合った5歳年下の彼とゴールイン。翌年出産し、育児をしながら趣味としてインスタグラムを楽しんでいたナヲさんでしたが、偶然目にしたポップ広告で、北海道天塩町が“公認インスタグラマー”を募集していることを知りました。 「普段、広告はほとんど見ないのですが、“北海道から旬の食材が届く”という文字に惹かれ、思わずクリックしました(笑)。すると、自治体の地方創生プロジェクトの一環だと知り、興味を持ったんです」

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もともと日本の文化や歴史を愛し、さらに47都道府県すべてを訪れた経験から、地方の豊かな風土や豊富な食材といった魅力やパワーを肌で感じてきたナヲさん。“やってみたい!”と感じるまでに、時間はかかりませんでした。 「大好きな料理を通じて、私も地方創生に一役買えるんだ、とワクワクしました。しかも、それがきちんと評価され、報酬も貰えるなんて、自分にとって理想的な働き方だと感じました」 「これだ!」と思ったことには、ためらわずに飛びこみ、全力で向き合う。そんな思いきりの良さが、ナヲさんの強みでもあります。結局、5万5千人(4月当時)というフォロワー数が決め手となり、見事約50名の応募者のなかから選ばれ、チャンスをその手でつかみました。

 

メニューのヒントは街中で探す! 独創的なアイデア料理で町の魅力をPR


 

公認インスタグラマーの任期は1年間、報酬は50万円。送られてきた食材で何を作るかは、ナヲさんの感性にゆだねられています。なかには、北海道ならではの使ったことがない食材に出会うことも。どうすれば美味しく調理し、どう見せればたくさんの人に興味をもってもらえるか。力の見せどころです。 「外食した時の料理やデパ地下の惣菜を見ながら、インスピレーションを得ることも。“こんな風にアレンジすると美味しそうだな”とか“この素材とこれを組み合わせたらどうなるのかな…”と考えている時間が楽しくて大好きなんです」

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 独創的なひらめきから生まれたユニークな料理も。例えば、「ふきと薫製ベーコンのキッシュ」もそのひとつ。和食で使われることが多い「ふき」を、天塩町の牛乳を使って、洋風のキッシュに変身させました。 「以前、旅先で食べた山菜のキッシュがヒントになっています。ちょうど冷蔵庫を見たら自家製の燻製ベーコンがあった。癖の強いこのベーコンと、ふきと組み合わせたら美味しそうだな、と思いつきました」

 

自治体初の試みである「公認インスタグラマー」として、メディアの関心は高く、多数のニュースで取り上げられました。ナヲさんの料理が持つ訴求力に惹かれ、別の自治体からの問い合わせも。「料理インスタグラマー」として、さらに注目度が高まっています。

 

そんなナヲさんが今、描き始めている新たな未来図――。それは、これまでの経験を生かし、料理の仕事をすること。現在、薬膳の学校にも通い、『国際中医薬膳師』の資格をとるべく勉強中だといいます。 「もうすぐ1年になりますね。薬膳のエッセンスを取り入れながら、美味しくて体に良いメニューを作ってみたいです。いずれはお料理教室もできればいいなと思っています。あと、ブラジル料理も広めたいですね。よくばりですが(笑)」

 

 たとえ遠回りをしても、興味のあることに飛び込む勇気さえ持ち続けていれば、道は開けていく。自分らしくいられる理想の働き方を、自分でデザインしていくナヲさんの生き方は、多くのママの力になるはずです。

 

 

取材・文/西尾英子 撮影/masaco