マキの笑顔によろこびを感じる渚
女嫌いの渚がマキを恋愛の対象として見ることはありません。一方のマキは、大嫌いな野菜で美味しい料理を作ってくれる渚を諦めきれずにいます。マキの渚への思いは成就することはあるのでしょうか。
マキが野菜嫌いになった理由は、衝突していた父親との関係にあります。脱サラして突然農業に目覚めた父親に反発し、高校卒業と同時に家を飛び出し、東京に向かったマキ。野菜の思い出は、父親との思い出というわけなのです。渚のおかげで野菜嫌いが少しずつ和らいできたマキが、渚を連れて実家に行き、野菜嫌いの原因と向き合うシーンは、必見です。食べ物のパワーを強く感じます。
マキを“恋人”として見ることはない渚ですが、自分が作った野菜料理を美味しく食べるマキの笑顔に、よろこびを感じています。この“よろこび”という気持ちが、ストーリーが進む中で、どのような変化をしていくのかも、見どころとなっています。
マキも渚も“キライ”だったものをありのままに受け入れることで、好きになっていく。これは、マクロビオティックの考え方にも通じます。食べ物はできるだけ丸ごと食するのが一番いいという「一物全体」という考え方は、マクロビオティックの思想のひとつです。渚の野菜豆知識は、とても役立つ情報満載なので、ストーリーやレシピと一緒にチェックしてみてください。
『にがくてあまい』巻末のレシピ集は必見
野菜を美味しく食べるためのレシピが満載なのも、この漫画の魅力のひとつ。本編では、渚が実際に料理するシーンが登場するので、難しそうに感じる野菜食もとてもわかりやすく理解できます。料理番組を見ているような感覚になりますよ。
また、巻末には旬の野菜を使ったレシピ集がたっぷりと掲載されているので、レシピ本としても活躍してくれます。また、『にがくてあまい』に登場した美味しい料理をカラー写真で完全再現したレシピ本『にがくてあまい公式レシピ』もおすすめですよ。
ベジタリアンで料理上手でイケメンの渚。仕事はできるけどズボラで野菜嫌いなマキ。マキの渚に対する「好き!」の気持ちに気付きながらも、恋愛へ動き出さないというやきもきする感じもこの作品の魅力となっています。
下ネタやゲイネタ、モテない女ネタなど、クスッと笑えるシーンもとても多いのですが、野菜を通して、食べること、生きること、人生とはなどさまざまなことを考えさせられる作品でもあります。イケメンでママの目を癒し、レシピで子どもの野菜嫌いを克服。美味しいレシピ漫画を召し上がれ。
文/タナカシノブ