家事分担は夫婦の重要課題。義父母と三世代同居のわが家も例外ではありません。

 

料理経験ゼロ、食べるいっぽうだった夫が、最近ようやく料理を始めました!しかし根っから世話焼きの義母の様子がおかしいのです…。

やっと厨房に入った最後の男子

わが家は義父母と私たち夫婦、そして息子と娘の6人家族。

 

主婦である義母と私が主に料理をしていますが、そのほかにも地域の高齢男性向け料理教室に通う義父、そして自然と興味を持って台所に立つようになった子どもたち…と、家族のなかで料理をしないのは長らく夫ひとりという状況でした。

 

もともと、食というものにこだわりがない人でもあり、台所に立つ人手が十分たりていたということもあり…あえて今まで、経験も興味もほぼゼロの夫を台所に立たせようとは、家族の誰も思わなかったのです。

 

そんな夫ですが、私が週に数日仕事で帰りが遅くなり、また義母も訪問介護ヘルパーの仕事があることから、さすがに自分もまったく料理ができないのはまずい、と思うようになったらしいのです。気づくのが遅すぎる、と思わなくもないですが、いやいや、気づいたときがタイミングです。

 

インスタントラーメンすら面倒臭がっていた夫が、具材とスープを買ってきて鍋を作ったり、レタスをちぎってサラダにしたり、徐々に経験を積み、なんと最近では涙を流しながら玉ねぎを刻み、ハンバーグまでも作れるようになったのです。

 

なんという進歩。人間、いくつになっても変われるものだな!と驚きました。

 

しかし、そんな感動も束の間…。

ピーラーで野菜を切っただけ…?

夫が料理を始めたころ、義母は「やっぱり今は男性も料理くらいできないとね!」と、満更でもない様子でした。

 

私が、世話焼きな義母の性格を見越して「たどたどしい手つきを見ていると手伝いたくなると思いますが、自分でやらないといつまでも上手にならないので。なるべく手出ししないでくださいね!」とお願いしていたこともあり、このまま夫の料理スキルは順調に上がっていくものと思われました。しかし…。

 

ある日の、夫が担当した夕食のこと。

 

「この野菜スープ美味しいね」と私が言うと、夫は「いや…俺は指示に従って材料を鍋に入れただけ…」と答えます。

 

ん?

 

また別のある日は、義母が「今日は夫くんが作ってくれた鍋よ!」と言うのに、夫は

 

「いや、俺は大根とにんじんをピーラーで薄く切っただけ…」と言葉少なです。

 

なるほど、やはり義母は義母でした。

 

台所に立つ息子を放っておけず、後ろからあれこれ指図をする…。徐々に口出しだけでは我慢できなくなり、手も出すようになる…。そして最終的には、ほとんど義母が作るようになる…。

 

その流れは、実際に見ていなくても手に取るようにわかります。

 

とにかく世話焼きで何でもやってあげたい、黙って座っていられない。

 

私がたしなめなければ、ブドウの皮もみかんの皮も、息子や孫のために全部剥いてあげなければ気が済まないこの性格。

 

やっぱり義母は義母なのでした。

だけど、これだけは言わせて

お義母さんがその調子だから夫がろくにみかんの皮も面倒臭がって剥かないのでは?

 

結果的に本人のためになっていないのでは?

 

義母が亡くなったら誰もみかんの皮剥いてあげる人いませんよ?(もちろん私も剥かない!)

 

と、オブラートに包んだり包まなかったりしながら何度も訴えましたが、その効力は期間限定。

 

しばらくすると義母はまた活き活きと、息子や孫たちの世話を焼き始めるのです。

 

人の性格を変えるのは本当に難しい…これはもう無理なのかもしれない…そう諦めの境地になりながらも、

 

「ピーラーで野菜切っただけで『夫くんが作ってくれた鍋』っておかしいでしょ?小学生のお手伝いじゃないんだよ!!!」

 

そこは、そこだけは力いっぱいに主張していきたい同居嫁なのでした。

文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ