主に定年を迎えた高齢者を対象とした人材派遣会社「株式会社高齢社」に登録する澤田孝(さわだ・たかし)さんは、現在の登録社員の中では最高齢の82歳です。月20日勤務しているという澤田さんにお話を伺いました。
元気に働く82歳の澤田孝さん
登録社員になり約17年「今では最高齢の82歳」
── 現在のお仕事内容を教えてください。
澤田さん:
はい。大型マンションのフロント兼防災室にてマンションの管理をしております。フロントにて入居者対応や、防災室にて防犯や防災のためのモニターのチェックなどが主な仕事となります。ここで働き始めて、もう17年程経ちますね。
── 17年!長いですね。それまではどのようなお仕事をされていたのでしょうか。
澤田さん:
それまでは、エンジニアリング会社で設計技術系の仕事やセールスエンジニアとして働き、その後デベロッパーにて諸官庁との調整役などの業務を行ってきました。
60歳になる前に退職して自営業をしていたのですが、体調を壊してしまったんです。そこから少し休み、自分の身体と相談して64歳の時にこの仕事に就きました。
「苦労という苦労は感じない」今までの社会経験がすべてに活きている
── 今までとまったく違う仕事をすることに対する抵抗や、苦労はなかったのでしょうか。
澤田さん:
そうですね。仕事が変わったことによる苦労はないのですが、やはり多種多様な方がいらっしゃり、当たり前ですが要望はお客様それぞれに違います。それをいかにお客様が満足できる形で、スピード感をもって整理して対応していくか。それが苦労と言えば苦労なのかもしれません。
── 現場対応力が求められるのですね。未経験の仕事に対する戸惑いがなかったというのは、やはり今までの社会経験が活きていらっしゃるのでしょうか。
澤田さん:
そうですね。やはり人と接するということに関しては、現役時代に言葉遣いや心遣い、お客様の様々なニーズに対応するなど色々経験させていただきましたので、特に苦労と思わないのだと思います。仕事は異なれど、要所要所に今までのすべての経験が活きていると思います。ただ「いかに早く対応できるか」という点は、現役から今も変わらない課題ですね。
既に自分の中にあった「働くから元気になる」という理念
── 退職して、また働き続けようと思われたのはなぜなのでしょうか。
澤田さん:
はい。今思えば、高齢社の「働くから元気になる」という理念がすでに自分の中にあったのだと思います。
もちろん金銭的なところもあります。長年関わっている社会奉仕団体の活動を続けていくには費用もある程度かかってきます。それを自分が稼いだお金で、家計を圧迫することなく補いたいという思いがありました。
また、高齢社の「働いている人を大事にしたい」という理念にも大変共感しており、現在も働き続けています。
雇用時の年齢制限はナシ!
── 雇用時、契約の内容に年齢制限はなかったのでしょうか。
澤田さん:
ありませんでした。高齢社からは「82歳の方も元気で働いていますよ」と声をかけてもらいました。「自分の体調や、派遣先の業務に支障があるようなら問題ですけど、特にそういうことがなければ大丈夫ですよ」という話があり、安心しましたね。
その中でもいちばん高齢の私は、皆さんの模範になれればと思っています。現在同じ職場で働いている70代の同僚たちは「澤田さんみたいに元気でいるうちは働けるのかな」と言ってくれていまして、嬉しく思いますね。
月に20日働ける秘訣は徹底した健康管理にある
── 澤田さんが、高齢社の登録社員のひとつの目標みたいになりつつあるのですね。元気に働けている秘訣はなんでしょうか。
澤田さん:
そうですね。人生100年時代の中で、その人の生活に合わせてもう少し働きたいという人も沢山いますから、長く元気に働いているという点で私を目標にされているか方が結構いらっしゃるようで嬉しいですね。
元気で働く秘訣としては、とにかく身体に気をつけて元気であることを大事にしなきゃダメだとみんなに言っています。私も身体には人一倍気をつけています。年に2回は精密検査を受け、月に1回は血液検査などもしています。
現在月に20日働いているのですが、ここに勤めてから体調を崩して休んだということはありません。それくらい元気ですね(笑)。
── 月に20日!すごいですね!この仕事をしていてやりがいを感じる時というのはどういう時でしょうか。
澤田さん:
はい。たとえば入居者で幼稚園などに通い出したお子さんが「管理人さん、こんな絵を描いたよ」とお母さんと一緒に見せに来てくれた時に、そういう関係性を築けたことに嬉しく思いますね。そんな風に、お子さんや子育て世代の方はもちろん、高齢化社会におけるシニアの方にも寄り添って、お役に立てる管理人になっていきたいと思っています。
マンションのモニターチェックをする澤田さん
高齢者として働くために大切にしている心情と信条
── 最後に、高齢者として働くうえで何を大切にされているか教えてください。
澤田さん:
はい。私の心情、そして信条として働くうえでいつも意識していることが4つあります。1つは、自分を捨てる覚悟を常にもつこと。2つ目は失敗を恐れてはいけない。3つ目は感謝の気持ちを忘れてはいけない。4つ目は、何より健康が大切である、というものです。
なので、高齢社の理念は本当に自分にぴったりだと思っているんですよ。自分を叱咤激励して、元気に頑張っています!
…
「誰かに働かされるのではなく、自分が望んで働き、そして元気になっている」という澤田さんに、こちらが元気をもらえました。
取材・文/渡部直子 写真提供/株式会社高齢社