出産後、子どもを安心して預けられる人がいることは、働きたい女性にとってとても重要です。もし誰も見つけられない場合、キャリアを諦めるかどうかまで大きな選択を強いられる人もいるはずです。

 

企業のオリジナルグッズやノベルティの企画販売を展開するアイグッズ株式会社では、社内シッターを取り入れることで、働きたい女性の産後の働き方を支えています。どんな仕組みで実現しているのか、実際に社内シッターを利用しながら仕事と育児の毎日を切り盛りする営業職マネージャーのSさん、広報の根岸まりのさんにお話を聞きました。

アイグッズ マネージャー顔写真
アイグッズ株式会社 営業職マネージャーのSさん。12人チームの営業職のプレイングマネージャーとして、グッズ製作の現場に携わりながらもチームの体制を整えている。

社内シッターが勤務中に保育をサポート

── アイグッズには社内シッターに子どもをみてもらうことができるそうですね。Sさんはアイグッズでの働くママ第一号で、Sさんの復職に合わせて子育て支援の体制も整えられたとか。具体的にはどのように制度を利用されたのですか?

 

Sさん:

社内シッターは20217月から新しくできた制度で、子どもが保育園に入園するまでの間、子連れ出勤をさせてもらったのがきっかけです。勤務時間内にシッターが常駐して子どもの面倒をみてくれていたので安心して働くことができました。

アイグッズ社内にシッターが常駐する様子
多彩なワークスペースがつくられたアイグッズでは、写真のようにじゅうたんに座りながら仕事ができる場所も。子どもをあやしながら働くことも可能 

根岸さん:

アイグッズでは社員の8割が女性なのですが、今年、Sさんともう一人、マネージャー職の男性社員にそれぞれお子さんが誕生して、「しっかり子育てしながら働ける会社にしよう」と全社あげて環境をつくっていったんです。社内シッターは、まずお子さんを預かる人が必要だろうと体制をつくりました。

 

Sさんは、復職当初は保育園に入園できず、ほぼ毎日シッターに来てもらっていました。この春には入園できたため、今は、週2〜3日の割合でお子さんを社内でみてもらうようにしています。もし万が一、お子さんが発熱した場合も、状況に合わせてシッターが看病してくれます。

保育園のお迎えも社内シッターが担当

── シッターによる「放課後保育」もあるそうですね。

 

Sさん:

シッターが保育園のお迎えに行き、社内で仕事が終わるまで子どもをみてくれるんです。保育園へのお迎えの時間を気にしながら仕事するストレスがなく、集中して仕事に向き合えます。その分、就業後は思いっきり子どもとの時間を楽しむことができるので、充実感があってありがたいです。

 

また、社内には防音機能を備えたベビールームもあって、授乳することもできるんです。ここで子どもとスキンシップも取れるので、無理なく働けています。

アイグッズ社内の託児室のドア
アイグッズの社内に設置されたベビールームは、母子のプライベート空間として活用できる

── とても手厚い環境だと思います。子どもの保育環境を会社がここまで整えてくれることは珍しいのではないでしょうか。

 

根岸さん:

アイグッズの本社は恵比寿駅付近にあるのですが、渋谷区を中心に、社宅制度を利用して駅から徒歩10分圏内に住んでいる社員が全体の9割を占めています。実家暮らしの人はほとんどいないので、子どもを預けられる親や親類が近くにいないことも会社は理解しています。そういった障壁を、会社が全力でサポートしながら一緒に乗り越えていきたいという考えがあります。

 

以前から「社員がなりたい像になるために応援する」という風土があるんですよね。仕事を通じてお客さまに「アイグッズに出逢えてよかった」と思っていただくためにも、社内では、社員同士がお互いを支え合うことで良い環境や良い仕事を生み出す、という共通の思いをもって関わっています。

「先輩のように働きたい」と未来が描ける事例に

── Sさんは復職後、育児も仕事も充実されているようですが、復帰する前はどんなふうに働きたいと思っていましたか?

 

Sさん:

出産しても早く職場に復帰して、「バリバリ働きたい」と思っていました。育児も妥協せず、仕事も大切にしたいという気持ちでしたね。会社が私の気持ちを理解して協力してくれているので、無理することなく育児にも仕事にも向き合えると思っています。でも、これが欲張りだということではなくて、望めば誰にでも与えられる権利だと思うんです。

 

逆に、育児に比重をおきながら自分のペースで仕事を続けたいという人もいると思います。そういう場合も、会社の制度をうまく活用することで働きやすさを感じられると思います。

アイグッズ社内の執務室
アイグッズの社内

── Sさん、出産後も働きたいという後輩の皆さんにどんな言葉をかけたいですか。

 

Sさん:

会社が用意している子育て支援制度は、どんどん利用してほしいと伝えたいです。利用しながら自分が毎日に満足しながら過ごすことで、キャリアを考えるうえで良かったことや失敗談など、いろいろなパターンの事例が蓄積されていくと思うので。「将来は先輩のように働きたい!」と、生き生きと働く未来が描きやすくなるはずです。

 

根岸さん:

私はSさんを見て、「子育てと仕事の両立ってできるんだ」と思えました。お子さんと一緒に出勤して、何時間かおきに授乳しながら仕事をするなど、職場では仕事一本というのではなく、しっかりとお子さんとふれあう時間もつくっていて、「かっこいいな」と。

 

お子さんがオフィスに来てくれることで、社内の雰囲気もやわらかく変わったと思います。間近でSさんの様子を見ていて、私も早く出産して育児も仕事も頑張りたい!と新たな夢ができました(笑)。

 

世の中にはあるのに使われない制度もあると思います。アイグッズではこんなふうに上司が率先して制度を活用する背中を見せてくれ、後輩たちも迷いなく真似ができるので、とてもありがたいですね。

 

── 最後に根岸さん、アイグッズとして、今後どんな働きやすい環境をつくっていきたいですか?

 

根岸さん:

これからも社員のライフステージに合わせながら新しい制度をつくるなど、子育ても仕事も大切にできる会社づくりを柔軟に進めていきたいと思っています。

 

今は社員の平均年齢が低いため、2030代の社員の要望を意識した制度が中心ですが、これからより多様な仲間が増えることが予想されます。すべての年齢層の社員に喜んでもらえるような制度や環境をつくり、社員と一緒に変化していける会社でありたいです。

取材・文/高梨真紀 画像提供/アイグッズ株式会社