オリジナル販売用のグッズやノベルティをワンストップで企画販売するアイグッズ株式会社。急成長中の事業を進めるなか、どうしても増えがちだった労働時間を削減するため、2021年に「早帰り選手権」や「朝型フレックス制度」を始めました。

 

代表が率先して早く帰るなど社内の空気を変えていったこのチャレンジについて、広報の根岸まりのさんと佐藤桃香さんに詳しくお聞きしました。

アイグッズ 広報担当の根岸さんと佐藤さん
アイグッズ株式会社 広報・PRチーム 根岸まりのさん(左)と佐藤桃香さん(右)

いちばん早く帰った社員に月3万円を支給

── 「早帰り選手権」はとても印象的なネーミングですが、どんな制度なのでしょうか。

 

根岸さん:

全社員を対象に20214月にスタートした制度で、現在期間限定で運営しています。毎月、退勤する時間が平均で最も早い社員に3万円、2番目に早い社員には2万円が支給されます。制度化された当初は特に盛りあがって、みんなダッシュで帰っていましたね(笑)。給与明細には「早帰り選手権 3万円」という項目で記載されているんですよ。

早帰り選手権のポスター
社員を起用して制作された「早帰り選手権」のポスターが社内に貼り出された

── おもしろいですね!どんなきっかけで始まったのですか?

 

根岸さん:

私たちは企業のオリジナル製品やノベルティを開発から販売まで一貫して行っているため、質とスピード感にこだわっています。その結果、2016年の創業以降お客さまは増え続けていますが、一方で期待に応えたいと社員の残業が目立つようになりました。

 

弊社はほとんどが若いメンバーで、「仕事に打ち込みたい!」という人も多いのですが、一方で「ライフステージが変わったらこの働き方は難しいのではないか」「持続的な働き方を今から構築していかなくては」というムードが高まり、「制度化して会社を変えていこう」と議論を重ねるようになりました。

 

そこで、「ゲーム感覚で早く退勤する制度を作ってほしい」と、ある社員が声を上げたんです。それがヒントとなり、朝型のワークスタイルを推奨するかたちで早く帰宅しやすい文化を育てようと、「早帰り選手権」を制度化しました。同時に「朝型フレックス制度」も試験運用として走らせ、社員の意見を聞きながら内容を整えています。

朝の「社内ユニバーシティ」にもほぼ全社員が参加

── 「朝型フレックス制度」はどんな制度ですか?

 

佐藤さん:

上長決裁のうえ、早めに出勤・退勤できる制度です。アイグッズの業務時間は、通常で午前9時から午後6時なのですが、現在は半数以上の社員が朝型フレックス制度を利用しています。入社1年目の社員にも午前8時に出社して午後5時に退社する者が何人もいて、「朝を有効活用できるかっこいい社会人」を会社全体で目指しています。

 

── 「早帰り選手権」と「朝型フレックス制度」を導入してどんな効果がありましたか?

 

佐藤さん:

いちばんは、やはり早く帰れることです。それまではダラダラ遅くまで会社に残っている風潮がありました。先輩社員が残業をすることで若手社員は帰りづらかったのかもしれません。導入後は、新入社員を中心に推奨しているのもあって、若手から積極的に「早く帰る=生産性を上げる」ために無駄な業務をなくしていく動きが進んでいるのを感じます。

 

また、学びの時間が増えました。創業期から自主的な朝の勉強会を推奨していたのですが、朝フレックス制度ができた際に、本腰を入れて全社で取り組むことに。

 

現在は社員向けにビジネススキルやビジネスマインドを学べる「アイグッズユニバーシティ」という授業を朝8:309:00で週4回行っており、一部の有志だけが参加している状態だったのが、今はほぼ全社員が参加しています。帰りが早くなっただけでなく、社員が学び続けられる風土が醸成されているのを感じます。

アイグッズ 社内研修風景
朝の勉強会の様子

午後6時以降の会議は禁止、連絡も控えるように

── 会社を早く退勤するためにどのような工夫をされていますか?

 

佐藤さん:

制度を導入してから、会社全体で午後6時以降の会議を禁止しました。また、強制ではありませんが、社内SNSやメールなど、連絡をしあうのは控えようと声を掛け合っています。

 

さらに、経営陣の男性とマネージャー職の女性にそれぞれお子さんが生まれたことで、「子育てがしやすい会社にしよう」と、みんなとても協力的になりました。

 

── 早く帰る文化づくりを進めるなかで課題はありますか?

 

佐藤さん:

今回の取り組みで、属人的な仕事が多いことにも気づかされ、「仕事の型化」「チームで支えあっていける体制づくり」が根本的な課題解決につながるという結論に至りました。しかし、現状引き継ぎ業務にも時間がかかってしまっている状態です。

 

今は、その目の前の課題を一つ一つ解決していき、一人に負担が偏るような業務体制をなくすようなマニュアルづくりを、会社の最優先事項として取り組んでいます。

プロのシェフが作ったビュッフェ料理を無料提供

── 「社員が健康かつ快適に働く」ための環境づくりの一環として、食環境を整える取り組みもされているそうですね。「アイグッズシェフ」はプロのシェフが作った料理をビュッフェスタイルで楽しめるとか。

 

根岸さん:

そうなんです!201910月に始まった取り組みで、正午に料理が並びます。ご来社くださったお客さま、学生の皆さん、その他関係者の皆さまどなたでも利用が可能です。もちろん社員も利用しています。

アイグッズ 社員食堂のメニュー例

── 「アイグッズシェフ」はどんなきっかけで始まったのですか?

 

根岸さん:

仕事が立て込んでいるときはどうしてもおにぎりなど軽食で済ませてしまうことがあると思います。会社としては持続可能な働き方を実現したいという思いがありますので、「社員の身体がいちばんの資本」と捉えているので、お客さまや学生の皆さん、社員の食環境をサポートする環境づくりを始めました。

 

またビュッフェスタイルのランチを提供することで、就活生の皆さんとより心の距離を縮めてお話ができますし、もちろん社員同士の仲も深まるので、ランチ中はいろいろなアイデアが生まれたりします。

アイグッズ 社内食堂の様子
一人暮らしの社員が多いため豊富なラインナップが好評とか

── 大学生が運営する「アイグッズカフェ」についても教えてください。

 

根岸さん:

アイグッズは新卒入社の割合が高いこともあり、入社前から社員とコミュニケーションを取りながら仕事の現場や働くことの理解を深めてもらうためにカフェを大学生に運営してもらっています。

 

アルバイトなのでカフェの運営をしながら各部署から仕事のサポートを頼まれることも多いんです。いろいろな職種の仕事や人生の先輩の声にも触れられて、大学生たちにとって社会人デビューする前の準備期間の場となっているようです。

アイグッズ 社内食堂内観
大学生たちが運営する「アイグッズカフェ」。社内のちょうど真ん中にあたる場所にあり、社員との交流も多いそう
アイグッズのカフェスタッフ
実際に働いている学生スタッフ

働きやすさにこだわり、予算を割く理由は

── 社員が働きやすいと思える制度は作っても、なかなか実践できるまでは壁があると思います。何か社員同士が共有し合う思いがベースにあるのでしょうか。

 

根岸さん:

代表の三木はよく、「『ただ事業で稼げればいい』という会社にはしたくない」と言っています。そういった未来像は求めておらず、まずは組織のなかにいる人たちが幸せであることが大事だといつも話しています。

 

社員一人ひとりが活躍するためにも、そして仕事を人生の一部として捉えてもらうためにも、会社が社員に寄り添う姿勢が大事だと考えています。だから、予算もどんどん割いて、実際にやってしまう行動力が浸透しているのだと思います。

 

働きやすさについてもこれまで多くの制度を作ってきましたが、定期的に見直して、社員の生活スタイルに合わなければ終了するものもあります。今後も日々の会話からアイデアや意見を積極的に取り入れつつ、社員に働きやすいと思ってもらえる環境づくりをこれからも続けたいと思っています。

 

 

「早帰り選手権」をはじめユニークな発想もさることながら、実際に制度を作り、浸透させていくまでの行動力に驚かされました。残業時間を削減したいという強い思いが根底にあったとは思いますが、ゲーム感覚で主体的に仕事のやり方などを見直す機会をつくったアイグッズが、これからまたどんな働きやすさを実現するのか楽しみです。

取材・文/高梨真紀 画像提供/アイグッズ株式会社