スパイスやハーブを中心にカレーや香辛調味料、レトルト食品などの製造・販売を手がけるエスビー食品の社員食堂が、2021年にリニューアル。「SPICE SQUARE(スパイス・スクエア)」と名前を改め、明るく、心地良い空間へと生まれ変わりました。

 

手狭になった社屋の場所を有効活用することがきっかけだったというこのプロジェクトについて、人事総務室マネージャーの鈴木規夫さんに伺いました。

食堂リニューアルプロジェクトを推進した、エスビー食品株式会社 人事総務室マネージャーの鈴木規夫さん

時には電気も消え、閑散としていた食堂…


BGMと植物が癒やしを与えてくれる

 

── 食堂のリニューアルプロジェクトは、2019年頃からスタートしたそうですね。

 

鈴木さん:

そうですね。社員食堂のある社屋の竣工が今から約30年前。2階に位置する食堂は、殺風景な空間に無機質なテーブルが置いてあるという簡素なもので、メニューの内容にも特にこだわりはなく、「食べる楽しさ」を感じる場所とはほぼ遠い印象でした。ランチタイムが終わる15時には電気も消え、100席ある食堂はシーンと静まり返っていました。

 

一方で執務エリアは、年々手狭になりつつあり、昔ながらの島型レイアウトで社員同士が窮屈そうにパソコンに向かい合う毎日。「食堂のスペースをもっと活用できないだろうか」という改善案が出たのが2019年のことでした。

 

── 発端は「場所の活用」だったのですね。

 

鈴木さん:

メニュー内容の改善も同時に提案しました。企業理念として「食卓に、自然としあわせを。」を掲げているにもかかわらず、食堂で提供されるランチの内容とその空間は幸せな食環境とは言い難い状況。設備とともに、メニューの質を上げていこうということになりました。

 

アイデアが膨らみ、企画の規模が大きくなりつつあったので、さまざまな部署からメンバーを募り、「ランチ環境向上チーム」を発足。正式なプロジェクトとして動き出しました。

食堂だけど、食事のため「だけではない」空間に


── 具体的にはどのような部分を変えたのですか?

 

鈴木さん:

まず設備面では、食堂の席でも仕事ができるよう、Wi-Fiとコンセントを設置しました。会議室もエリア内に併設し、各部屋に「カルダモン」「クローブ」など、スパイスの名前を付けています。

 

併設される会議室も明るい雰囲気

 

── 会議室の壁紙がスパイスのイラストだったり、カラフルな椅子でコーディネートしていたり、内装デザインにもエスビー食品らしさが見られますね。

 

鈴木さん:

スパイス柄の壁紙は、WEBミーティングの背景にぴったりです。テレビモニターとカメラを設置している会議室もありますし、席を横並びにレイアウトした2名用の会議室は、1on1ミーティングに適しています。このように会議室のバリエーションを分けることで、おのずと会議の目的に合わせて場所を選ぶように。これまでの「とりあえず会議」という意識ではなく、「なんのための会議か」を、強く意識けられるようになったことで、業務の効率化にも繋がっているように感じています。

 

大会議室の椅子は壁紙に合わせてカラフルに。デザイン面でもエスビー食品らしさを追求

 

── 食堂の使い方が「食べる」だけの場所ではなくなったのですね。

 

鈴木さん:

コンパクトなアイランド型キッチンも新設したので、食堂でも試食会を行えるようになり、終日利用できる開かれた場所になりました。また、ランチタイム以外の利用も考慮して、コーヒーや冷凍パンなども購入できるように。BGMも常時流れているので、休憩で利用しにくる社員も増えました。

 

ランチタイムだけでなく、終日利用できる環境に生まれ変わった

 

── テレワークが普及したこれからの時代、社屋の有効活用はもちろん、出社する意義を持たせるうえでもひとつの事例になりそうですね。

ランチタイムが待ち遠しくなるメニュー改革!品数を増やし社員の健康も意識


── メニューの内容はどのように変わったのでしょうか。

 

鈴木さん:

リニューアル前の「カレー」は、トッピングだけ変わるようにあまりバリエーションがなく、マンネリだと感じている社員も多かったんです。

 

商談で来訪される取引先さまからも、「エスビーさんの食堂メニューはきっと豪華なんだろう」と期待を寄せる声をいただくことが多々あって。それに対して「美味しいですよ」「どうぞ食べていってください」と自信を持って返答できないのが心苦しいところでした。

 

そこで、メニュー数は5種類から4種類に減らし、一つひとつの質を高めようということに。プロジェクトメンバーを中心に、一般公開されている他社の社員食堂に試食に行き、価格設定を検討するなど、活発に意見を出し合いました。現在のメニューは、カレー、定食2種、日替わり麺です。

 

── 力を入れたのはやはり、カレーでしょうか。

 

鈴木さん:

そうですね。「カレーにこだわろう」という意見は、プロジェクトメンバーで一致していました。これまでは「いつ食べても同じ味」だったカレーですが、リニューアル後は、キーマカレー、スパイシートマトカレー、バターチキンカレーなど、週に2種類、さまざまなカレーメニューが味わえるように。特に隔週金曜日は「スペシャルカレー」の日。スパイスからオリジナルで調合し、手の込んだ内容にしています。「どうぞ食べてください!」と自慢できる内容に生まれ変わったと実感しています。

 

── 1週間に2種類のカレーが楽しめるのは、エスビー食品ならではですね。

 

鈴木さん:

また、カレーと定食にはサラダをセットでつけるようになりました。副菜も56種類から2種類選べるようになり、ご飯も白米か、健康米かを選べるように。品数が増えたことで、これまでよりも健康を意識した内容になったと思います。

 

コロナ禍で出社率も制限され、一時は食堂もクローズすることを検討しましたが、出社している社員の「食」を支えるのも会社としての大切な役割と考え、今日までランチを提供し続けています。

 

「食べる」ことは生きていくために欠かせないこと。1日の中のわずかな時間ですが、その時間を「おいしく」「楽しく」過ごしてもらうことで、社員の幸せに貢献できるのではないかと考えています。

 

 

リニューアル後、社内から「雰囲気がよくなった」などのポジティブな感想が続々と届いているそうです。使われていなかった場所を有効活用することで、執務フロアの課題も改善。社員が働く場所を自由に選べるようになりました。また、心地良い環境の中で提供されるおいしい食事は、社員のモチベーションを上げ、1日の活力になってくれるに違いありません。

取材・文/佐藤有香