人生で貯金をしやすい時期=「貯めどき」は3回ある、とよく言われますが、「最近は貯めどきが変わってきている。老後の貯金に大きく影響してくるので知っておいたほうがいい」と、家計再生コンサルタントの横山光昭さんは指摘。何が起きているのでしょうか。
以前より貯めにくくなった時期がひとつある
一般的に、人生の「貯めどき」は次の3回といわれています。
1.独身のときから、結婚しても子どもがいない時期 2.子どもが生まれてから小学生までの時期 3.子どもが大学を卒業して社会人になった後
ところが、その常識が少し変わってきています。
もっとも大きく変わったのは、「子どもが大学を卒業して社会人になった後」。この時期にお金を貯めるのが難しくなってきました。
理由のひとつは、年功序列の賃金制度が崩れ、年齢を重ねるほど給料が上がることが少なくなったからです。
50歳を超えると、給料は現状維持どころか、若いときより減るのが当たり前。下手するとリストラされるケースも…。
再就職しても高額な給料は望めません。となると、学費の支払いがなくなっても、老後の資金が貯めにくいのです。
お金をより貯めやすくなった時期を逃すな
こう聞くと、老後の資金に不安を覚える人もいると思いますが、明るい材料もあります。
それは、「子どもが生まれてから小学生までの時期」に、以前よりもお金がためやすくなったことです。その理由は政府の子育て支援が拡充されたこと。
2019年からは3~5歳児と住民税非課税世帯の0~2歳児は幼稚園や保育園の利用料が無料に。自治体によっては認可外保育園に通っている子どもに月数万円の助成金が出ます。
高校に関しても授業料の支援が手厚くなりました。2010年から、公立・私立高校に通う生徒に対して、年間11万8800円の授業料支援金が支給されていました(親の所得制限あり)。
2020年からは、私立高校に通う生徒に対する支給額が最大で年間39万6000円に引き上げられました(親の所得制限あり)。
児童手当は0歳から中学生まで支払われるようになり、児童手当を上乗せする自治体もあります。医療費に関しても、「高校生まで無料」の自治体も出てきました。
私立中学校を受験すれば、学習塾代や合格後の授業料などがかかりますが、受験しなければ、高校卒業までの支出は少なく抑えられます。つまり、高校生まではお金の貯めどきにできるのです。
教育費と老後資金は「綱引きの関係」
もちろん、子どもの将来のことを考えて、私立中学校を受験させたいという人は少なくないでしょう。
しかし、教育費は老後資金と「綱引きの関係」にあります。教育費をかけ過ぎた結果、老後の資金が枯渇して、子どもに資金援助を受けるケースを、私は数多く見てきました。
とくに、夫婦の年収が高いパワーカップルは子どもにたくさんのお金をかける傾向がありますが、出産後に妻の年収が下がり、教育費の支払いが厳しくなるケースは少なくありません。
子どもが大学卒業した後にお金を貯めるのは難しくなっている今、子どもの教育費は、老後資金とセットで考えることが大切です。
※上記の情報は2022年2月下旬時点でのものです。ご利用の際は各自治体などでご確認ください。
監修/横山光昭 取材・構成/杉山直隆 イラスト/村林タカノブ
参考資料/文部科学省HP(高校生等への修学支援)、厚生労働省HP(児童手当てについて)、品川区HP(2021年度品川区認可保育施設保育料女性制度について)