きょうだいの子育ては、慌ただしく毎日が大変。なかなか目が行き届かず、上の子の好ましくない言動が下の子に影響してしまうなんてことも。今回は、「上の子に引きずられがちな下の子への関わり方」について、教育家・ 見守る子育て研究所(R)所長の小川大介先生にお話を伺いました。
【Q】上の子に引きずられがちな下の子にどう接すればいい?
5才離れた男の子2人の母です。下の子は園児、上の子は小学校の高学年です。上の子の同級生がたびたび家に遊びに来る環境のなかで、下の子もお兄ちゃんたちに混じって、年齢不相応な動画やゲームを楽しむようになってしまいました。そんな環境下で、これから小学校入学に向けて学習の習慣をつけさせたいのですが、どうしたらよいでしょうか?
丁寧に「味わう時間」の大切さに気づかせて
まず気になるのは、兄弟で遊ぶ時間以外に、弟くんにどのくらい年齢相応の体験をさせてあげているかということ。絵本や図鑑、パズルなどを一緒に楽しんだりお散歩に行ったり、お買い物のときにスーパーに並ぶいろいろな物を見せてあげたり。そういった幼児にふさわしい生活体験や学びの体験をどれぐらいできているのかな?と少し心配になりました。
2人、3人と兄弟がいるご家庭では現実問題としてなかなか時間の使い分けが難しいのですが、年齢相応の体験をさせてあげるためには、きょうだい2人で遊ぶ時間以外に、どうしても「弟くん専用タイム」を設ける必要があります。
ゆったりとじんわり広がる幸福感というものは、落ち着いた時間の中で笑顔と共に楽しむ体験があって初めて味わうことができます。
ご相談者様が心配されている動画やゲームは、それとは対極にある、テンポがよくわかりやすい刺激の連続です。人は、そういった強い刺激に流されるもの。そのため、ゆったりとした味わい深い時間を意識して作ってあげない限り、お兄ちゃんたちの動画やゲームに流されて当然です。まずはそうした刺激の種類の違い、そして弟くんの育ちにとってより深い価値があるのはどちらの時間なのかを、この機会に意識してみましょう。
毎日取り組みやすいのは、食事やお風呂などの生活のコアとなる時間を丁寧に楽しむこと。「この野菜、旬なんだよ」「これは全粒粉で作られたパンだね」「これはお父さんの出身地の郷土料理なんだよ」など、声がけは何でもいいので、体に取り入れる物がどういうものなのか、きちんと理解させてあげてください。
丁寧に食事を味わうことは、情報を丁寧に取り入れることにもつながります。6000組以上の親子を見てきた経験からも、食事をないがしろにしている人は、単純でわかりやすいものを求めがちで、きめ細やかな情報を楽しむことや物事にじっくり取り組むことをあまり好まない印象があります。
お風呂タイムも同じです。時間が取れる週末だけでもいいので、カラスの行水ではなくリラックスしてゆったりと落ち着いておしゃべりするようにしましょう。一緒に過ごす時間を楽しむことが大切です。
そのように生活時間を丁寧に過ごすうちに、「お兄ちゃんたちと一緒にいる時間も楽しいけど、ゆったりした時間も好きだな」と、どっちも楽しめるようになってくると思います。
お兄ちゃんたちとちょっと遊んだら「もういいや、僕はあっちに行こう」と、自分から抜けられる力を育むサポートもできるといいですね。
たとえば、「17時になったらママとお絵描きしようね」と、あらかじめスケジュールを決めておいて声をかける。それは親子で一緒にいる時間を区別することになるだけでなく、お兄ちゃんたちとの遊びから抜ける練習にもなるでしょう。
家族の生活パターンを分析したうえで時間を確保
しかし、先ほども触れた通り、きょうだいの子育ては、きょうだいの数が増えれば増えるほど一人にかけてあげる時間が少なくなります。ましてや共働き家庭では、ゆったりとした親子の時間をつくるのはハードルが高いと思ってしまいますよね。
そんなご家庭は、全員の1日の過ごし方を記録して可視化してみることをお薦めします。親、お兄ちゃん、弟くん、それぞれの生活パターンを書き出してみてください。あまりにもズレている場合は、家の中が整いません。その場しのぎの対応が多くなっているはずです。
その場合は、どの時間なら親子で一緒に過ごすことができそうか、考えてみましょう。足並みを揃えやすいのは、食事の時間やお風呂の時間ですね。時間を決めることで前後の時間を区分しやすくなります。そのうえで、自分がどのポイントで弟くんに関わればスムーズにいくか調節していくといいでしょう。
忙しい毎日を無事に安全に乗り切ることだけでも手一杯だと思いますが、家族の時間を棚卸してみると、試してみようかなという過ごし方が見つかるものです。今度の週末に取り組んでみてはいかがでしょうか。
PROFILE 小川大介さん
取材・構成/佐藤ちひろ