ベッドに入ったら、くしゃみが出る、鼻がつまって眠れない、息苦しくて目が覚める…。「春の睡眠不足は花粉症を悪化させる原因にもなります」と、ハピコワクリニック五反田院長の岸本久美子先生はいいます。花粉の症状をやわらげて快適に眠るためのポイントを紹介します。
どうして眠る時に花粉の“症状が悪化”するのか
—— 花粉症のどのような症状が睡眠に影響を及ぼすのでしょうか?
岸本先生:
原因はいくつかあるのですが、一番の原因は鼻づまりですね。鼻がつまって寝つけないことや、眠っても途中で息苦しくて起きてしまうことがあります。
その他には、目や鼻、肌のかゆみが気になる方も多くいらっしゃいます。
—— 日中はさほど症状が気にならなかったのに、いざ布団に入ると症状が強く現れる方も多いようです。いったいどうしてなのでしょうか?
岸本先生:
リビングやキッチンなどで私たちが動いている間、花粉は室内の空気中を浮遊しています。
しかし、寝室は人の動きがない分、空気が流れていません。そのため、花粉が床や布団に落ちて付着しているため、布団に入った際に吸い込む花粉の量が増えます。
家事や育児しているときより、寝るときは頭の高さが床に近くなるため、床に落ちた花粉も原因だと考えられます。
—— 布団に付いた花粉だけでなく、床に落ちた花粉も吸い込みやすくなっているんですね。恐ろしい…。
岸本先生:
また、花粉のアレルギー反応には、数時間経ってから現れる「遅発相反応」があります。
これは、日中に吸い込んだ花粉が夜に症状として現れるというもの。鼻づまりや咳などは遅発相反応が原因と考えられています。
—— つまり、遅発相反応を防ぐためには、日中から花粉対策をするのは有効というわけですね。
岸本先生:
慢性的な睡眠不足は、早めの対処が肝心です。日中に眠くなる、集中力が低下する、疲れやすくなることでQOL(生活の質)を下げるだけでなく、免疫力の低下やホルモンバランスの乱れを引き起こします。
その結果、花粉症の症状がさらに悪化、そのせいでさらに睡眠不足…と負のスパイラルに陥ってしまうのです。
入浴時の温度と浸かる時間で花粉対策
—— 花粉症と睡眠不足の負のスパイラルから抜け出すためには、どうすれば良いのでしょうか?
岸本先生:
まずは、寝室に花粉を入れない環境づくりが大事です。花粉のシーズンは、布団や枕を外に干さず、布団乾燥機や布団クリーナーでケアしましょう。
シーツや枕カバーもこまめに洗濯して、乾燥機や部屋干しで乾かします。また、床は拭き掃除がおすすめです。空気清浄機も積極的に活用してください。
—— 症状をおさえるために、花粉症の薬を服用しておくことも大事ですね。
岸本先生:
寝入り前のかゆみを防ぐためには、体を温めすぎないようにしましょう。
花粉のようなアレルギー反応は、血管が拡張しているとき(体が温まるとき)にかゆみなどの症状が強く出る傾向にあります。
肌寒い時期ですが、入浴時にはお湯の温度を38度くらいにして、お湯につかる時間を10分程度に。またはシャワーだけで済ますなど、入浴時間を短くしましょう。
お酒も血管を拡張する作用があるので、飲みすぎないように注意。かゆくて眠れないときは、冷却まくらや水で濡らして絞ったタオルなどで冷やすと、かゆみがやわらぎます。
つらい鼻づまりに!就寝前の「鼻うがい」
—— どうしても、鼻がつまって眠れないときの対処法はありますか?
岸本先生:
つらくて眠れないようであれば、鼻うがいをしてみましょう。鼻の通りが良くなってラクになるかもしれません。やり方を説明しましょう。
<鼻うがいのやり方>
①沸騰したお湯を人肌(36〜38℃)程度まで冷まし、塩分0.9%(ぬるま湯1リットルの場合、食塩9gを溶かす)の食塩水をつくります。
②鼻の穴に差し込める「ノズル付きのボトル」に食塩水を入れます。
③前かがみの状態で、片方の鼻の穴を押さえながら、もう一方の穴から食塩水を吸い込みます。
④(吸い込んだら)食塩水がのどへ流れるように上を向き、口から出します。これを左右5回ほど繰り返します。
鼻うがい用の洗浄液は、ドラッグストアで購入することもできますね。粘膜に刺激を与えすぎないためにも、鼻うがいは1日2〜3回を目安にしましょう。
また、鼻づまりの解消には、市販の点鼻薬を使用する方も多くいらっしゃいますが、長期間の使用は慎重にしましょう。血管収縮剤が多めに含まれているため、使いすぎるとかえって鼻づまりを起こす恐れがあります。
用法・用量を正しく守るのはもちろんのこと、鼻づまりが長引く方や症状が強い方は、病院で適切な点鼻薬や内服薬を処方されることをおすすめします。
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花粉のつらい時期はもう少し続きます。快適に眠れる環境をつくって花粉症の症状が悪化しないように工夫していきましょう。
PROFILE 岸本久美子先生
取材・文/大浦綾子