料理する義母

義父母世帯と台所も共有している完全同居の我が家。とかく問題になりがちなのが、冷蔵庫の中身など、食材の管理です。

 

いつの間にかでき上がっていた謎のルール….。我が家の冷蔵庫の混沌をお裾分けします。

冷蔵庫で朽ちていくおかずたち

6人家族のわが家は、台所に立つ人数が多いこともあり、食料品の管理がおろそかになりがちです。

 

冷蔵庫のなかに使いかけのマヨネーズが3本、ケチャップが2本、ドレッシングはサラダバーが開けそうなほど…といったカオスな状況を、以前この連載でもご紹介しました。

 

幸い最近は、義父母との話し合いにより、混沌度合いはおさまりつつあります。

 

しかし、わが家の冷蔵庫にはまだまだ課題が山積みです。それは、「食べきれなかったおかずが冷蔵庫のなかでゆっくり腐っていく」問題です。

 

私が仕事で帰宅が遅くなる日が増え、義母に夕飯の支度をお願いすることも増えたここ最近、特にこれが大問題なのです。

 

今現在も、わが家の冷蔵庫のなかには、中途半端に残ったおかずが密閉容器に入れられていくつも保存されています。しかし、そのほとんどすべてが、おそらくはもはや誰の口にも入らず、ただ朽ちていくのを待つのみなのです…。

 

いや、さすがにカビが生えるまで放置したりはしない(滅多に。たまにはありますごめんなさい)のですが、決定的にもうこれは食べられないな…と諦めがつくまでは冷蔵庫のなかで保管しておく、というのが私と義母の不文律、目に見えないルールとなっているのです。

おかずが残ってしまう原因

一体なぜこんなことになってしまうのかというと、原因はひとえに私と義母の食事作りの「噛み合わなさ」です。

 

私が安売りのきゅうりを買ってきて酢のものをたくさん作り、残りは明日食べればいいや…と思っていると、翌日に義母がクリームシチューを作ってくれたりします。ならばその次の日の夕食に、買い置きの鮭の切り身を焼いて酢の物と一緒に食べよう…と思っていると、朝のうちに義母に鮭を焼かれ、お弁当のおかずに入れられてしまったり…。

 

義母と私二人で、綿密にメニューの打ち合わせをして一週間の献立を立てて…とやればいいのは分かっているのですが。いかんせん私も義母も忙しく、また性格的にも計画性とはほど遠い、勢いまかせ、気分屋の二人です。

 

そんなチグハグの献立のしわ寄せが、中途半端に残ったおかずたちにいくのです。

 

もう食べないと思ったら早めに処分すればいいのは分かっています。しかし、作ってくれた人を前にして、「これ(まだ食べられるけど)捨てますね」とは言いにくいのが人情です。

 

いつもはマイペースでわが道をゆく義母も、冷蔵庫の食材関連では何度も私と小競り合いを繰り返しているので、勝手に食材を処分するようなことはしません。

 

結果として、「完全に食べられなくなるまで待つ」「相手が諦めて捨てるまで待つ」という、謎のルールができ上がっているのです。

食べ物を無駄にする罪悪感

さらにわが家では、ご近所さんからの食べ物の「いただきもの」がしばしばあります。近所には高齢者世帯が多く、「作りすぎちゃった、食べきれないから甘木さんちの皆さんで食べて!」と、人数が多いわが家に持ってきてくださるのです。

 

大変ありがたいのですが…実際に食べられるかというと、それはまた別問題です。

 

大量にいただく自家製の果実酒、漬けものに佃煮など…どれもたいていは申し訳程度に何度か食卓にのせられ、義父母や私が味見程度にいただいて、その後は徐々に冷蔵庫の奥のほうに押しやられ、静かに干からびていく余生を送る羽目になるのです。

 

それらを処分するときにも、義母と私で「お義母さんがもらってきたやつですよね?どうします?捨てます?」「あなたが受け取ったやつよね?そろそろ捨てていいかしら?」と、ほのかな罪悪感の押し付け合いが始まります。

 

そう、誰も、食べ物を無駄にしたくなんてないのです。

 

家族が多いからといって、決して漬けものの消費量が多くなるわけではないんだ…若い人は食べないんだ…。

 

言いたくても言えず、今日もまたご近所さんからのお裾分けを笑顔で受け取ってしまいます。

 

わが家の冷蔵庫が真にスッキリするのはいつの日か…遠い目になる嫁と姑なのでした。

文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ