SNSなどで個人宅のおしゃれなインテリアの写真を見るたび、私は思います。
「みんな…どうして家に白い壁があるんだろう…?」いえ、我が家の壁もオーソドックスなホワイトです。決して壁紙が黒いわけではないのに…今回は三世代同居の壁面問題について語ります。
孫の作品はすべて飾る!義父母の愛
そもそもこの家に引っ越した当初は、それなりに壁面にも余裕がありました。私も好きな絵をリビングに飾ったりしていたものです。
それが、子どもが二人に増え、幼稚園や小学校に上がるにつれ、壁がどんどん埋まっていったのです。家具が増えたということもあるのですが、それ以上に深刻なのが、子どもたちが持ち帰ってくる作品群です。
特に下の娘は絵が得意。園や学校で描いた絵をどんどん持ち帰ってくるのです。それをうまいうまい天才、ともてはやした義父母が、孫可愛さに、どんどん壁面に飾っていきます。
いや、もちろんいいのです。子どもにとっても嬉しいことでしょうし…ただ、限度があるのでは…?
数年前の、もはや何が描いてあるのかわからない絵は、そろそろはがしていいのでは…?
冬休みの宿題でいやいや書いた書き初めを飾るのは、正月だけでいいのでは…?
幼稚園で作ってきた工作、ホコリが積もって変色しているのはさすがに捨てていいのでは…?
そんな、完全に捨てるタイミングを見失った作品群が、どんどん壁面を埋め尽くしていくのです。
挙句のはてに義父は、「この絵はすごく上手に描けているから額に入れて飾ろう!」と言い出すのです。
嬉しいです、娘の親としてはお気持ちは本当に嬉しいんですが…壁の余裕がもはやゼロなの、分かってます?
義父母が年末にもらってくる大量のカレンダー
さらに壁面問題に拍車をかけるのが、義父母のカレンダー好き。
いや、好きなのかどうなのかわからないのですが、とにかく年末になるといろんなところからカレンダーをもらってきて、それを残さず貼らなければ気が済まないのです。
実用的な月めくりタイプをメインに、きれいな写真の大きなポスター型も壁面を圧迫。
さらに、細長い格言が書かれているタイプ、きれいな江戸和紙柄、可愛い猫ちゃんの写真、料理のレシピがついているもの、美術品の写真がついているもの、卓上タイプに日めくりミニサイズ…キリがありません。
一度試しに数えてみたところ、我が家の1階で私の目に入るものだけで、カレンダーが13個存在することがわかりました。どう考えても!そんなに!必要ない!
しかしこのカレンダー問題、近年の情勢のおかげで、思わぬ解決が見え始めました。
企業が、顧客に配るカレンダーをどんどん作らなくなっているのです。
昨年末は、義父母から何度も「銀行のカレンダー、今年はもらえないんだって」とか、「新聞屋さんのカレンダーは事前に申し込みしないともらえないんだって」という話を聞きました。
なるほど、これがSDGs…の名を借りた経費削減!
義父母にとっては淋しい、そして私にとっては嬉しい誤算でした。
じゃあ壁面は空いたのか
だんだんと企業からもらうカレンダーが減り、さらに昨年は、さすがにもう古い作品は処分しようと義父母を説得し、子どもたちの作品は、特に気に入っているものを除いて壁からはがすことに成功しました。
そうしてようやく、実に久しぶりに見えた白い壁面。
やっぱり壁に余白があると家がすっきり見えるな…と私がご満悦だったのも束の間のことです。
それからいく日もたたないうちに、仕事から帰宅した私を出迎えたのは、余白だったはずの壁面を埋め尽くす、かわいい猫ちゃんのジグソーパズル。しかも2000ピースの大作でした。
なんとも昭和なファンシーさを放つそのパズルのパネルを指差し、「これ、どうしたんですか?」と引きつった顔で尋ねた私に、義父は満面の笑顔で答えます。
「2階にしまってあったのを見つけたんだよ!かわいいでしょ?」と。
余白のある壁も、おしゃれなインテリアも遠い夢…。
もはや諦めの境地にある同居嫁でした。
文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ