算数は子どもによって得意不得意、好き嫌いがわかれやすく、一度つまずくと強い苦手意識を持ってしまいがち。とくに塾や通信教育などを利用していないご家庭では、どんなふうにサポートしてあげたらよいのでしょう。教育家・見守る子育て研究所(R)所長の小川大介先生にお話を伺いました。

【Q】算数に興味も…成績が伸びない

小学3年生の女の子がいます。小さいころから学校の宿題以外にも家で計算をやらせています。そのおかげで算数が好きになったようです。しかし、その割には、学校のテストの点数はあまりよくありません。でも、算数に興味があるようなので、伸ばしてあげたいなと思っています。算数の力を伸ばすには親がこれからどのようなかかわり方をしてあげたらよいでしょうか?

そのテストの回答、実は間違っていないかも?

学校のテストの点数があまりよくないとのことですが、娘さんの回答内容をしっかりご覧になったことはありますか。もしかしたら、バツがついていても、お子さんのテストの回答や考え方は間違っていない可能性があります。

 

昨今、公立小学校の算数のテストには、何を問われているかがわからない出題があります。よく論争になる「さくらんぼ計算」や「かけ算の順序」のように、解き方や記述のルールにこだわるあまり、社会一般の感覚からは外れたものも少なくありません。

 

実はこうした解法の強制によって算数を嫌いになる子が増えているのですが、残念ながらそこに固執して採点する先生は一定数います。そのため、お子さんがテストを持ち帰ってきたら、回答と採点の内容をしっかり確認することをお勧めします。

 

親御さんが「この子はちゃんと理解できている」と思えば、「考え方はあっているからマル!」と、家庭独自に丸をつけて自信を持たせてあげましょう。先生には先生の考え方があるんだろうね、でも、分かっているんだからママ(パパ)はマルでいいと思うよというニュアンスです。

算数の計算

幸い、ご相談者様の娘さんは算数に興味があるとのこと。力を伸ばしてあげたいなら、「どう好きなのか」をチェックしてみてください。「計算」「図形」「文章理解」のうち、どれに関心が高そうでしょうか。

 

ご相談の内容からすると、娘さんは計算がお好きなのかもしれませんね。そうであれば、たくさん問題を与えてあげましょう。どんどん解いてしまうようであれば、ぜひ上の学年の問題にも挑戦させてあげてください。

 

図形にも興味を持ってほしいのであれば、折り紙やパズルなどを活用して「形」を意識させることから始めてみるとよいでしょう。ドットをつないで図形をつくるといった遊びもお薦めです。形を点描写で捉え直す作業をすると、空間認識の力の向上にもつながります。

 

文章理解は、いわば状況を数字に置き換える力です。ここを伸ばすには、問題文を音読して、「何を整理しようと言われているのかな?」と、問題文で聞かれていることが何なのかを問いかけてあげましょう。そこが理解できたら次は「それを整理するために関係する数字はどれ?」と投げかけ、数式の作成に導いていく。そんなふうに順序立ててサポートしてあげると、理解が進みやすくなります。

親も教科書の内容を把握しよう

親御さんたちに気をつけていただきたいのは、現在の公教育の設計は、「学校教育」と「家庭教育」の組み合わせを前提としているということです。学校においては子どもたちが教え合い学び合う「協働的な学び」に重点が置かれるようになり、その土台となる知識の習得や訓練は家庭が担うという役割分担になっているのです。

 

「学校に通う=知識が身につく」というわけではないという点を理解し、学校任せにせず、親御さんも学校の教科書を見てある程度内容を把握しておいた方がいいと思います。

 

荷物を軽くするために教科書を学校に置いてくる「置き勉」を採用する学校もありますが、授業内で内容理解も知識の記憶も完了できているごく一部の子を除き、家庭学習がうまくいかなくなるのは間違いありません。置き勉するなら、家庭用の学習教材を準備する必要があります。教科書(教科書供給所や教科書取扱書店で購入できます)や教科書ガイドを別途購入するなどして、わからないところを親子ですぐ確認する体制を作っておくと安心です。

 

食事中など、親子の交流ができる時間にお子さんに「どんな授業をやったの?」「どんなことがわかった?」と聞いたり、帰ってきたテストの結果を見て、理解不十分だなと感じたところはフォローしてあげるのもいいと思います。

 

この先の勉強の見通しを持ちたい方には、中学受験をするかしないかに関係なく、受験の参考書や入試問題集なども購入して読んでおくことをお薦めします。

 

今、子どもが学校で学んでいる内容が、この先どんな学びにつながっていくのかというのがわかりますし、「小学校5年生で学ぶ『割合』でつまずく子が多いのか!」など、注意すべき部分もわかってくるでしょう。見通しを立てておけば、突然のつまずきに慌てるようなことも防げますから、親御さんも家庭学習のサポートが格段にラクになるはずです。

 

PROFILE 小川大介

小川大介先生
教育家・見守る子育て研究所(R)所長。京大法卒。30年の中学受験指導と6000回の面談で培った洞察力と的確な助言により、幼児低学年からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。メディア出演・著書多数。Youtubeチャンネル「見守る子育て研究所」。

取材・構成/佐藤ちひろ