もうすぐ3月3日の雛祭り。近年では自宅が狭くなり、雛人形を飾りにくくなってきましたが、自宅に飾れないときはどうしたら良いのでしょう。そもそも雛人形の由来とは。雛人形の老舗「吉德」資料室学芸員の石塚友さんと、広報室の平沢真さんにお話を伺いました。

雛祭りの由来「いつまでも飾るとお嫁にいくのが遅いは本当?」

── 雛祭りの季節ですが、そもそも、いつ頃からどんな由来で始まったのでしょうか。

 

石塚さん:

雛祭りは、季節の変わり目の厄払いが始まりです。日本では、古くから、人形(ひとがた)に人の禍を移して川に流して厄払いをする行事がありました。今も神社で「夏越しの祓い、大祓」などの形でも見られます。

これに、平安貴族の女児が人形遊びをしていたことも結びつき、年月を経て雛祭りとなりました。そもそも節句は中国から伝来した、3月3日や5月5日のように月と日に同じ奇数が重なる日は良くないという古代信仰に始まるとされ、そのような日は健康を害しやすいと懸念されました。そこから人の無事を神にお祈りする日と定められました。

 

ただ、今のように雛人形を飾って祝う形は江戸時代に広がったとされています。

 

── いつからいつまで飾るのが良いのでしょうか。

 

石塚さん:

2月の節分以降に飾り、3月3日の雛祭りが終わってすぐ片づけるケースが多いと思いますが、家庭内で飾る意義に答えがあるので、各家庭で時期は決めてもらえればと思います。

 

地方によっては、旧暦や月遅れの4月にお祝いされる場合もあり、その地域、家庭の習わしが正解です。

 

── 飾る際の注意点はありますか。

 

石塚さん:

お雛様としてちょっと高い位置に飾って、愛でてあげてください。節句は節供とも言い、供物、食べ物をあげるという意味もあります。雛あられなど出して、賑やかにお祝いしてあげてほしいですね。暖房は直接当たらない場所がいいです。

 

── 昔は「いつまでもお雛様を飾っているとお嫁に行くのが遅くなる」などとも言われましたが。

 

平沢さん:

よく言われましたが、すぐにしまわないと結婚できないわけではありません。ただ、人形をしまわないと、片づけができない人はだらしがないのでは?という昔の人ならではの「いましめ」を込めた考えから波及したのではないでしょうか。日付にこだわるよりも、湿気の少ない、カラッとよく晴れた日にしまってあげると人形が傷みにくく、良いですね。

自宅が狭くて雛人形が飾れないときは

── 今は自宅が狭くなり、飾りにくくなってきました。

 

平沢さん:

お子様の誕生を祝い、無事を願って飾るものなので、なんとか工夫して飾ってほしいですね。今は小さいものも増えていますし、シンプルな女雛、男雛のセットがいちばん売れています。

 

── つるし飾りや旗などで代用してもいいのでしょうか。

 

平沢さん:

あくまで旗やつるし飾りは添え飾りなので、雛人形とはいいません。メインの男雛、女雛のお顔があるものを一対で飾っていただければと思います。自宅で飾れなければ、祖父母宅などで飾るのも良いですよ。

飾らなくなった雛人形は…

── 雛人形は何歳まで飾るものでしょうか。

 

石塚さん:

年齢で区切るものではないので、各家庭で決めていただければと思います。

 

── 飾らなくなった人形をしまいっぱなしにしても良いのでしょうか。

 

石塚さん:

可能でしたら、お子さんの人形と一緒にお母さん、お祖母さんの人形も飾り、賑やかにお祝いできると良いですね。年に一度くらいは虫干しも兼ねて出してあげることをおすすめします。

 

── 処分したいときはどうしたら良いでしょうか。

 

平沢さん:

寺社で行われる人形の供養祭に出してお祓いを受けると良いですね。人形の持ち主の受けるはずだった禍が人形には代わりに入っているとされるので、それを人にあげるのは敬遠されます。親のものも親のものとしてできれば一緒に飾ってあげて、その子にはその子の人形を用意してあげられると良いかと思います。

取材・文/天野佳代子