共働き時代に合った生き方・働き方を模索するCHANTO総研。

 

小田原市に本社を置くHamee(ハミィ)株式会社では、周辺エリア(2市8町)に住む正社員を対象に手当を支給する「小田原手当」を、2020年にスタートしました。「社員同士のつながり」や対面コミュニケーションを大切にしてきた同社ですが、コロナ禍で約9割の社員が在宅勤務に。やはり「対面」だからこそ生まれるものがあると気づき、この制度が誕生しました。少子高齢化が進み、若い働き手の少ない小田原エリアにも、好影響をもたらしています。

 

今回は、同社で実際に「小田原手当」を利用している竹田卓生さんに、地方創生の視点で見る「小田原手当」や、小田原エリアに住んでいるから叶った「サーフィン」と仕事との両立について詳しくお話を伺いました。

竹田卓生(たけだとおい)さん

「小田原手当」で、地方移住の促進も実現しているところに惹かれ入社

── 竹田さんは入社1年目だそうですね。なぜ、Hamee株式会社に入社することになったのでしょうか?

 

竹田さん:

僕は宮崎県生まれで、大学卒業までずっと宮崎で育ちました。大学では地域資源創成学部でマーケティングや経営学の視点から、地方を盛り上げることについて学んでいました。

 

趣味であるサーフィンは中学1年生から始め、僕の生活の一部となっていました。 就職活動が始まったとき、「サーフィンを続けるのなら、”サーフィンのメッカ”とも呼ばれる宮崎で就職した方がいい」と思っていました。

 

でも、今後の自分のキャリアを考えたとき、「さまざまな人と出会い、経験値を高めたい」「都会でもまれて成長したい!」と思い、東京での就職を目指しました。

 

その頃は、自分が社会人として成長するまでの数年間は、サーフィンは諦めよう…と思っていたんです。東京は家賃も高いですし、行けたとしても週末に県外まで出なければいけない。将来、自分が成長できたら独立し、海の近くに住んで、自分が好きなタイミングでサーフィンができるような働き方を目指そう!という考えでした。

サーフィンをする竹田さん

 

竹田さん:

そんなときに出会ったのが、Hamee株式会社でした。

 

当社は、若手でも裁量権を持たせてもらい、自分がやりたい!と思ったことを尊重してくれる会社。直感的に「ここなら成長できそう!」と感じました。

 

詳しく調べていくと、本社は小田原という都心から離れたエリアにある。そして「小田原手当」によって、小田原への移住を推進し、地域貢献にも寄与している。地方創生を学んでいた立場からしても、その地域密着型の姿勢に惹かれ、入社を決めました。

 

──現在はどちらにお住まいですか?

 

竹田さん:

僕は、小田原からほど近い「湯河原」という場所に住んでいます。

 

内定をいただいた後、小田原周辺で住む場所を探していたところ、当社の創業者(現 代表取締役会長)である樋口から「湯河原なら小田原手当の対象だし、サーフィンもできる」と教えてもらったんです。

 

実際に行ってみると、田舎ではあるけれども、電車も10分おきくらいに来るし、そもそも観光地なので駅周辺が整備されていて綺麗でした。「ここなら、落ち着いた環境で仕事とサーフィンが両立できそう」と、湯河原に住むことを決めました。

 

住んでみると自然も豊かで、海はもちろん、山も川もある。そもそも温泉地で、仕事終わりに疲れを癒すスポットもある。自分には、すごく居心地のいい場所ですね。 ただ、若い人は少ない印象です。

 

── 小田原エリアは、少子高齢化が課題になっていると聞きました。その視点で見ると「小田原手当」はいかがですか?

 

竹田さん:

小田原や湯河原のように、若者が県外に流出してしまうと、働き手がいなくなり、税収が少なくなり、行政サービスが低下してしまうんですね。

 

観光で一時的に人を集めることも大切ではありますが、そこを解決しようとすると、やはり「住む人」を増やす事が重要です。特に若い働き手が増えることで税収もアップし、街の機能がうまく回り始めます。

 

当社のようなIT企業が、地方都市で地域活性化の意味も含めたこういう制度を展開してる例って、まだまだ少ないと思います。「小田原に貢献しよう」という姿勢を、企業レベルで実践しているところが、手前味噌ながら「すごいなあ…」と思っています!

小田原城

1日2回サーフィンに出かけることも!両立によって生まれた仕事のメリハリ

── 実際に、サーフィンと仕事をどのように両立させていらっしゃるのでしょう?

 

竹田さん:

サーフィンは、夏から秋にかけてがオンシーズンなんですね。夏だと、平日でも朝と夕方の2回サーフィンに出かけたりします。

 

ある1日(平日)を例に挙げると、 4:30起床
5:00サーフィンに出発
7:30サーフィン終了
8:30始業
17:00終業
17:30サーフィンに出発 というような感じです(笑)

 

当社はフレックスタイム制で、コアタイムは10:00-16:00。また、1日平均8時間勤務を守ればいいので、例えば波の良い日は7時間勤務して、波の良くない日は9時間働くなど、「波」ありきで勤務時間を調整しています。 平日は週2〜3回、夏は毎日海に行くこともありますね!

 

── 同僚や上司の方々の反応が気になるのですが…。

 

竹田さん:

そもそもフレックスタイム制ということもありますが、コアタイム以外の社内ミーティングも強制ではないので「波がよければ、そっちを優先していいよ!」と言われています(笑)

 

他にもフットサルなどの趣味と両立したり、夕方以降は子育てを優先する方もいますし、同じ感覚でみなさん「ワーク」と「ライフ」のバランスを取っています。

竹田さんのオンラインミーティングの様子

 

── 湯河原に住んだことで、仕事と趣味の両立がかなっています。これが、仕事に与える影響はありますか?

 

竹田さん:

ポジティブな影響があると思っています。

 

そもそも、サーフィンは僕の生活の一部なので、定期的に波に乗っていないとモチベーションが下がってしまいます。

 

また、早朝に目覚めて朝日を浴びて、サーフィンをしながら考えを整理したり、今日1日のスケジュールを組んだりします。なので、始業する時点では、頭がかなり冴えた状態。一方で、始業ギリギリまで寝てしまっていた時だと、頭が回らないことも…。「今日は、良いスタートが切れていないな」と感じます。

 

そういう意味では、かなり生活にメリハリができると思いますね!1日の仕事のパフォーマンスがまったく違います。

 

また「波の良し悪し」はだいたい1週間単位で分かるので「この日はサーフィンしたいから、それまでにこの業務を終わらせておこう」など、仕事も計画的に進められています。

小田原エリアの魅力を積極的に発信し、地域の課題を解決したい!

── リモートワークが主となっているそうですが、出社することはありますか?

 

竹田さん:

頻度は少ないですが、あります。

 

小田原手当は、もともと「たまには集まって、一体感を作ろう!」という目的でスタートした制度。ただ、僕はコロナ禍で入社したので、本当に出社する機会が少なくて…。出社して、みんながデスクに座っている、という環境で仕事をした経験が無いんです。だから「出社=イベント」みたいになっていますね(笑)。

 

僕の住んでいる場所から会社までは、ドアtoドアで30分くらい。コロナが蔓延していない時期は、週に1〜2回出社しています。

 

出社すると、部署を問わずいろいろな人に会うことができます。例えば、今までオンラインでは交流していたけど、リアルでは「初めまして」の方もいらっしゃるので、ついつい話し込んでしまったり(笑)。

 

やっぱりリアルで会話することで刺激をもらったり、それ以降のやりとりが円滑になったりと、対面のコミュニケーションの大切さを実感しています。

 

── 竹田さんの今後のビジョンを教えてください。

 

竹田さん:

先ほどもお話しましたが「小田原手当」で働き手の移住が増えることで、地域活性化に繋がります。

 

僕らのように、小田原エリアに移住した人たちがその土地の魅力を発見し、積極的に発信していくことで、きっと地域の課題解決にもつながるはずです。

 

今後も、自治体の方とも連携しながら、積極的に発信していきたいと思っています。

「公園」をイメージしてリニューアルした本社オフィス

 

取材・文/三神早耶 写真提供/Hamee株式会社