今度こそはきちんと続けようと思って始める家計簿。しかし面倒になって気づくとやめていることはありませんか?そもそも家計簿をつけるとなにか変わるのでしょうか?ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんに話を伺うと、意外な事実が──

家計簿に支出を記入しても節約にはならない

家計簿をつけても、単に使った金額を書くだけでは節約にはつながりません。節約につなげるためには、家計簿の正しいやり方を知っておくことが大切になります。

 

家計簿の正しいやり方とは、1.記帳する、2.分析する、3.行動改善する、の3ステップです。これらをトータルで行うことが、上手な節約に繋がるのです。

 

たとえば家計簿を1週間つけてみると、いろいろなことがわかります。平日と休日のお金の使い方の違い、コンビニにふと立ち寄る頻度、習慣で買ってしまっているもの、気づかず自動更新されているサブスクなど。記帳が1年続けば、帰省や旅行、行事などにかかった特別費も明らかになります。

 

この記帳した内容を分析することで、減らせそうな出費、予定外の出費、本意ではない出費などがわかるのです。これを踏まえて自分の行動を見直せば、お金の使い方も変わっていきます。

口座の明細でも改善点は分析できる

ただ、毎日忙しく働いている私たちにとっていちばんネックになるのは、家計簿を続けることではないでしょうか。特に記帳するのは大変な労力を伴います。この記帳をどれだけエネルギーを割かず楽にできるかが、家計簿を続けるポイントです。

 

そこで私がおすすめするのは、カードや銀行口座の明細を見直す方法。わざわざ家計簿にすべてを書かなくても、せっかく溜まっているデータがあるのならば活用しましょう。スマホから見るだけでもいいですし、プリントアウトして貼るだけでも良いです。またアプリの家計簿は明細と紐付けできるものもあります。しっかり振り返ることが重要です。

家計簿をつける女性

また「毎日家計簿をつけるのが大変」と思っているなら、毎日やるのではなく、1週間や1か月に一度まとめて行う方法でいいと思います。私の知り合いに、1週間のレシートをまとめてエクセルにつけている人もいます。「大変では?」と思いきや、毎日やるよりは気分的に楽で、作業時間も10分ほどでできるとのこと。データ化することでムダが多い出費のジャンルがわかったそうです。

 

すべてのジャンルを記帳するのが面倒な人は、自分が気になっている項目だけ記帳するのでも構いません。「多いな」と感じていたカフェ代、お酒代など、1週間だけでも記帳してみると、実際に使っている金額がわかり、見直すことができます。

 

目的はあくまで「分析すること」と「行動改善」で、「記帳」はそのための手段です。自分のムダ使いの傾向がわかればいいため、きっちりやらなければと思いすぎず、少し大雑把でもより早く分析以降のステップに進むことが大切だと思います。

「固定費」と「不本意な買い物」をチェック

家計簿をつけることでわかる、節約をしやすいジャンルがあります。まずは「固定費」です。なかでも家計の3大固定費と言われているのが「住居」「保険」「通信」です。

 

どれも金額としては少なくありません。明細を見て多いと感じるものがあれば、そこから見直すと良いでしょう。これらは1回のアクションで、節約できる金額が大きいです。食事や買い物など細々した部分で削るよりも、楽だと思います。

 

次に挙げられるのが、「不本意な買い物」です。一般的に節約と聞くと、買いたいものを我慢するイメージがあります。ただし、欲しいものを我慢する方法を長く続けるのは難しいもの。

 

それよりも、家計簿で見てほしいのは、同僚の付き合いで行っていた食べたくないランチ、ついつい買って残していたスーパーの惣菜など、不本意な出費。実は、家計簿は買いたくなかったのに買っていたものを気づくきっかけになります。そして、本意ではない買い物から減らしていくと、節約がしやすくなります。

 

家計簿はノートに書くものだけでなく、最近はアプリを利用している人も多いです。自分に合う方法で、ぜひ始めてみてください。

 

PROFILE 風呂内亜矢

ファイナンシャルプランナー風呂内亜矢先生
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者。「つみたてNISAの教科書(ナツメ社)」など約20冊の書籍のほか、テレビ、ラジオ、雑誌などのメディアで「お金に関する情報」を発信している。YouTubeチャンネル「FUROUCHI vlog」では日常の記録にお金のTipsを交えた動画を更新。

取材・文/酒井明子