しっかりと貯蓄をしようと思っても、月末に口座や財布を見ると空っぽ。今月もまた貯蓄ができなかったと落ち込むことはないですか? どうしたらきちんと貯蓄ができるのか、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんにアドバイスをもらいました。

給与が振り込まれたらまず貯蓄

毎月、きちんと貯蓄をしようと思っていても、なかなか貯めることができない人は、貯蓄のプロセスを見直したほうがいいかもしれません。実は生活費から残った金額を貯蓄することは、なかなか難しいことです。お金が手元にあると、ついつい使ってしまいますよね。

 

そこで私がおすすめしたいのは、給与をもらったら先に貯蓄する金額を確保し、残った金額で生活をする方法です。先に貯蓄する金額を取りよけるので「先取り貯蓄」と呼ばれます。これならば毎月、決まった金額を貯蓄しやすくなります。

 

貯蓄する金額についてですが、老後のことを考えると、給与の25%を毎月貯蓄するのが理想的です。ただ、これまで「先取り貯蓄」の習慣がなかった人が、いきなり25%の貯蓄をするのは難しいと思います。

 

「先取り貯蓄」でまず大切なのは、続けることです。給与から先にお金を抜き貯蓄をする仕組みを、習慣にする必要があります。初めは5,000円など、少額でも大丈夫です。無理せず続けられる金額から始めてみるのが良いでしょう。

定額自動入金システムなら忘れずに済む

とはいえ、毎月、給与が振り込まれた直後に貯蓄額を手動でとりわけるのは面倒ですよね。自分でわざわざ別口座に振り込んだりしなくても済む方法をいくつか紹介します。

 

ひとつ目は「財形貯蓄制度」です。この制度は給与から設定した金額を勝手に天引きして積み立ててくれるので、勤務先の会にこの制度がある人にはおすすめです。

 

ふたつ目は給与口座などから指定した金額を、該当の口座に自動で入金することができる「定額自動入金サービス」です。インターネット銀行で利用できるところが多く、入金される口座を貯蓄用にすれば、毎月勝手にお金が貯まっていきます。

 

なお、従来からある定額自動「送金」サービスでは手数料が700円前後するなど、費用がかさむことが多いのですが、定額自動入金サービスは、サービスを利用する銀行の預金残高が増える兼ね合いもあってか、通常は手数料無料で利用できます。

 

みっつ目は「つみたてNISA」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の利用です。どちらも税制優遇口座ですが、「つみたてNISA」は年に40万円までの資金が投資でき、最長20年間非課税で運用可能です。「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は私的年金制度で、働き方や勤務先の年金制度によって掛けられる最大の金額(拠出可能額)が異なります。

いずれも自動引き落とし設定にすれば、毎月一定の金額が抜かれ、投資や貯蓄がされます。財形貯蓄や定額自動入金と違い、元本確保型ではない商品が中心となるので、購入しようとしている商品の特性をよく理解して選ぶように心がけましょう。

 

また最初の手続きが面倒な人や、どうしても月々の貯蓄が難しい人は、ボーナスをそのまま貯蓄するのもおすすめです。貯蓄額が一気に増えるとやる気が起きて勢いが生まれることも多いです。

 

ただ、ボーナスは給与のように法律によって減額が制限されている存在ではないため、確実な貯蓄習慣を築くという観点だと少し不安定な側面も。ゆくゆくは、ボーナスだけでなく、毎月の給与から一定額の貯蓄ができるようになっていけると理想的です。

貯蓄口座は必ず専用のものに

どの方法で貯蓄するにしても、「貯蓄はふだん使わない口座に入れる」のがコツです。普段使いの口座で管理すると、なにかあったときについ引き出してしまい、それが習慣になりがちです。なにも履歴のないまっさらな通帳をつくり、「この通帳には引き出しの履歴は作らない!」といった役割を充てることも効果的です。

 

子どもの教育費のために「先取り貯蓄」したい人は、子ども名義の口座をつくり、お年玉や児童手当を入金しておくのも、心理的に引き出しにくくなるためおすすめです。

 

余裕があれば「ジュニアNISA」も期間限定で選択肢になりそうです。未成年の子ども名義で年間80万円までの資金が投資でき、最長5年間非課税で運用できます。原則18歳まで払い出しができない制度でしたが、2023年に制度が終了することに伴い、2024年以降は全額売却して口座を閉じるようであれば、いつでも引き出しができるようになります。

 

ただし、一度投じた金額が最長20年間非課税で運用でき、購入できる商品も絞り込まれている「つみたてNISA」の方が、投資初心者の人には取り組みやすく、優先順位は高くなります。夫婦それぞれの名義のつみたてNISAをフル活用すると、年間80万円の投資が可能です。

 

初めて投資を行う人にとってはそれなりにまとまった金額になるため、ジュニアNISAまで検討する人は、それより上回る投資を行いたい中級者以上の方の選択肢になりそうです。夫婦でつみたてNISAに加入する方が優先順位は高いものの、 口座開設が2023年の年末までなので、気になる方は早めにチェックしてみてください。

 

PROFILE 風呂内亜矢

ファイナンシャルプランナー風呂内亜矢先生
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者。「つみたてNISAの教科書(ナツメ社)」など約20冊の書籍のほか、テレビ、ラジオ、雑誌などのメディアで「お金に関する情報」を発信している。YouTubeチャンネル「FUROUCHI vlog」では日常の記録にお金のTipsを交えた動画を更新。

取材・文/酒井明子