コロナ禍で行動が制限されて、ゆううつに。気持ちも引っ張られて、自分が嫌いになっていく。そんな精神的なつらさを今も引きずる人はいるでしょう。心理カウンセラーの山根洋士さんに、コロナ禍で不安を抱く人の心を軽くするヒントを教えてもらいました。
コロナ禍によって自己肯定感が変わるものではない
この1〜2年、気分がふさぎこみ、暗い気持ちに襲われた方もいるでしょう。今も何かにつけて肯定的な気持ちになれず、自分に対しても否定的に考え、「どうせ私なんて」と思ってしまうことも。
一見、以前まであった自己肯定感が低下したように思えますが、これはもともと低かった自己肯定感が、大きなストレスをきっかけに「表」に現れただけなのです。
「そもそも自己肯定感とは、生まれてから幼少期のうちに積み重ねてきた経験で左右されるものです。成人してから、上がったり下がったりするものではありません。自己肯定感の低さは、自覚がなくても心の奥深くに潜んでいますよ」
自己肯定感が高い人は「不幸や不遇」と「自分」をわけて考える
それでは、もともと自己肯定感の高い人の場合、どうなるのでしょうか?
「自己肯定感が高い人は、つねに冷静に物事をとらえます。不遇や不幸にあっても前向きで、自分を大切にしています。なにか問題があっても自分をただ責めるのではなく、自分の存在以外の部分にも原因がないか、建設的に考えるのです」
そのため、自己肯定感が高い人はコロナ禍で感じるストレスに直面しても、うまく対処しています。ストレスの原因と自分とを分けて考えるため、社会がどのような状況であろうとメンタルは左右されません。
逆に、不安な気持ちが高まり、「自分には価値がない」「ありのままの自分じゃダメなんだ」「やりたいことが分からない」など、負の感情がわき出しているなら、そもそも自己肯定感が低い可能性があります。
ただし、自己肯定感は低くても、それをムリに高めようとしなくていいのです。大切なのは、ダメな自分も受け入れること。とはいえ、自分を責めたり、嫌いになったりするのはとても辛いですよね。そこで、コロナ禍に陥りがちなストレスを防ぐ方法を紹介します。
「花がキレイ」「天気がいい」そこに目を向けられるか
コロナ禍でストレスをうまくかわす方法はそんなに難しくない、と山根さんは言いました。
「まず、なるべくテレビやSNSを見ないこと。不安になる情報を集めると、余計に恐怖心をあおられ、それがストレスになります。そして、小さなことにも楽しさを見出すスキルを磨くことも大切です」
“あれもこれもできない”と思い込むと、ふさぎこんだ気持ちになりますよね。とはいえ、暗い気持ちのときに、楽しさを見つけることは簡単ではありません。
「まずは、日常のなかを意識してみてください。『道に咲いている花がきれいだった』『今日は天気が良くて気持ちがいい』など、ちょっとした発見が楽しい気持ちに繋がります。日常のなかで楽しい気持ちを大切にすれば、『できないことばかりではない』と思えるでしょう」
しかし、そんな小さな楽しささえ感じられないときもあるでしょう。
「それは心がかなり弱っていて、もしかすると心の病を抱えている可能性があるかもしれません。このようなときは、心療内科で受診したほうがよいと思います。どんなメンタルも自力で解決できそうに思うかもしれませんが、状態によっては虫歯を自分で削ろうとするようなもの。ムリをせず、一度医師に相談してみましょう」
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コロナ禍で感じるストレスでため息をする人も多いはず。それが引き金となり、自分の中に隠れていた自己肯定感の低い一面が現れると、心が余計に疲れます。ストレスと上手に付き合って、デリケートな心を大事にしましょう。
PROFILE 山根洋士さん
文/廣瀬茉理