ありのままの自分を好きになれない。「ごめんなさい」「ありがとう」が口にできず、人間関係がギクシャクする。これらは、自己肯定感が低い人によくある悩みだといいます。心理カウンセラーの山根洋士さんに、自己肯定感に関するお話を伺いました。
「自己肯定感が高い、低い」は性格とは関係ない
そもそも自己肯定感とは、「自分はありのままでいい」「生きているだけで価値がある」感覚のことを指します。自己肯定感が高いとポジティブな性格であるように考えてしまいがちですが、山根さんによるとそれは誤解だそうです。
ポジティブな性格でも自己肯定感が低い人もいれば、ネガティブな性格でも自己肯定感が高い人はいます。では、自己肯定感が低い人と、高い人に分かれるのはなぜでしょう?
「脳科学の研究では遺伝的要因があるとされていますが、心理学の世界では6歳ぐらいまでの家庭環境に原因がある、と言われています」
なにかあるとすぐにダメだしする減点法が多い日本の教育が、自己肯定感に関係しているそうです。
「親にダメと言われると、子どもは自分が否定されたと感じてしまいます。親から無条件に愛情を注がれて自分を肯定してもらった記憶のない人は、自己肯定感が低くなる傾向があります」
自己肯定感の低さは、人によってタイプが異なります。まずは、次のリストのなかで、自分に当てはまる項目をチェックしてみましょう。
【A】
□用心深く、何をやるにしても慎重になる
□先着順や早い物勝ちと言われると他人に譲ってしまう
□自分の仕事より誰かの手伝いをするほうを率先する
□自分から人をあまり誘わない
□他人に教えたりアドバイスしたりするのが好き
【B】
□自分の失敗談や自虐ネタが得意でよく笑いを取る
□自分は褒められて伸びるタイプだと思う
□人から頼みごとをされると「大丈夫です」と答えがち
□気になる商品が口コミなどで評価が低いと買うのをやめる
□「パワポ作成なら自信あります」などが口グセ
【C】
□責任のある仕事や立場を重荷に感じてしまう
□SNSでムダに時間を使ってしまう
□褒められると落ち着かない
□資料の記載ミスや他人の間違いによく気がつく
□不祥事や炎上に関するニュースやSNSをよく見る
いかがでしたか?3つ以上当てはまるものがあった、もしくは、いちばん多く項目の当てはまったグループが、あなたのタイプです。 それぞれのグループで同数の項目が当てはまる場合は、両方の傾向があると判断できます。
【Aは適応反応タイプ】
このタイプは、チャレンジすることが苦手で、自分のことはあと回し。自分に自信をなくしたり、自分が嫌いになったりして、失敗を恐れて一歩踏み出せず、生きづらさを感じます。
【Bは逆転反応タイプ】
自分への自信のなさが裏返しとなって、過度に自虐に走ったり、得意なことをアピールしたりします。自信がないため、周囲からの評価を気にするからです。このタイプは、人から弱みを握られたくないため強がろうとしてしまいます。
【Cは抵抗反応タイプ】
誰かのミスを指摘したり、SNSを見ないと落ち着かなかったりするのは、実はダメな自分を受け入れらないための抵抗や余裕のなさが現れています。また、勝ち負けにこだわり、自分のほうが相手よりも優位だと示そうとするマウンティング癖があります。
自分に当てはまったタイプはありましたか?まずは、自分の苦手なことや落ち込む傾向などメンタルの特徴を知っておくことが大切です。それでは次に、自己肯定感が低い人におすすめの対策をご紹介します。
「インナーチャウチャウ」をすれば“自分責め”を防げる
「どのタイプでも、意識的に自己肯定感を高めようとしてはいけません。ムリに自信を持てる何かをつくろうとしたり、自分を肯定的に捉えようとしたりすると余計に心が苦しくなります。大切なのは、“今の自分を受け入れて、認める”ことです。
自己肯定感が低い人は、自分を励ますのが苦手。だから、第三者に励まされると少しずつ自信を持てます。とはいえ、へこみそうなときにすぐに第三者から励ましてもらうのは難しいですよね。それなら、自分ではない心の中の第三者のような存在を作ってみるとよいでしょう。どうせ励ましてもらうなら、思い切りポジティブな名前の『インナーチャウチャウ』という犬を心の中で飼ってみてはいかがでしょうか?」
何かで失敗して「どうせ私なんて」と落ち込みそうなら、インナーチャウチャウに「ちゃうちゃう!そんなことないよ」と否定してもらいましょう。自分自身が励ますのではなく、インナーチャウチャウが励ますため、その言葉を受け入れやすくなります。
また、インナーチャウチャウによって、視点を変えて自分を冷静に見つめ直すことができ、むやみな自分責めを防げます。もちろん、チャウチャウでなくても大丈夫。「インナーじいや」や「インナーイケメン」など自分がイメージしやすいものを想像して、助けてもらいましょう。
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いきなり自分を変えるのは難しいですよね。「自分をこれ以上嫌いになりたくない」と思ったら、心の中にインナーチャウチャウを飼ってみてください。自分を責めようとしたときのお守りになりますよ。
PROFILE 山根洋士さん
文/廣瀬茉理