拘束時間が長く、長時間の立ち仕事。仕事と育児の両立が難しいと言われてきた美容師ですが、“フリーランス”という選択肢を持つことで、自分らしい働き方を叶える人が増えてきました。

 

今回は、シェアサロン「GO TODAY SHAiRE SALON」に拠点を置き、ママ美容師としてキャリアを築く榎本里佳さんに話を伺いました。フリーランスとしての道を選んだ理由と、独立して叶えた理想のライフスタイルとは?

11年間お世話になった店を辞めた訳

──お子さんが2歳になるタイミングで、フリーランスへの転向を決めたそうですね。

 

榎本さん:

2019年に出産し、子どもが生後8か月のときに、週2ペースで復帰しました。その数か月後には、保育園も決まり、週4回10〜16時での時短勤務を始めました。

 

当時勤めていたサロンは、専門学校卒業後から11年間ずっとお世話になっていた店で、スタッフ同士の仲も良く、働きやすい職場でした。ただ、お客さまの予約が入っていない時間帯も店にいなければいけないということに、徐々に違和感を抱くように。

 

時短とはいえ、16時に仕事を終えて、保育園にお迎えに行き、夕飯、お風呂、寝かしつけまでバタバタの毎日。時には子どもを放ったらかしにして、明日の準備や部屋の片づけなどを行う日もありました。

 

勤務中、予約がない時間は他のスタッフのサポートや後輩の教育などを行っていましたが、次第に、「子どもが小さいうちは、もっと子どもとの時間を大切にしたい」「接客以外の時間を家事と育児に当てたい」と思うようになったんです。

 

──フリーランスになってみて、生活にはどのような変化がありましたか?

 

榎本さん:

いざフリーランスとして独立して、やっぱり「自由度が違う」と感じています。自分のための時間が大きく増え、自分のお客さまの対応が終わったら、帰宅してご飯を作ったり家事をしたりする余裕が持てています。

 

収入面も大きくアップしました。GO TODAY SHAiRE SALONは、さまざまなプランの中から選択して契約するのですが、歩合率が良いため、忙しさは変わらず収入はアップしています。

 

ただ、子どもの体調不良などで急きょ早退しなければいけないときに、以前なら、お客さまに了解を得たうえで、他のスタッフにお願いすることができましたが、まだそういったことは今のサロンではお願いしたことはありません。

 

保育園からの呼び出しには、夫と相談しながら柔軟に対応しています。夫がどうしても対応できないという日は、お客さまに別日にずらしてもらわざるをえません。でも以前いた店で担当していたお客さまばかりで、付き合いも長く、ママさんも多いので、理解は得られやすい環境です。有り難いですね。

「二人目出産で復帰できますか?」に対して

── 時間の自由度や収入面での変化は、家族への向き合い方や働くモチベーションにも良い影響がありそうですね。現在のシェアサロンに決めた理由は歩合率の良さからですか?

 

榎本さん:

収入面というよりも、「女性美容師が働き続けやすい環境」に魅力を感じました。こちらのシェアサロンを見学したときに、運営スタッフの珠実さんに「二人目の子どもを授かったとき、出産した後、復帰できますか?」と質問をしたんです。他のシェアサロンでは「産休のタイミングで一旦契約解除」となる店もあったので、安心して復帰できる場所を探したかったんです。

 

珠実さんからは「復帰の制度が明確にあるわけではないけれど、出産しても戻れる仕組みを作ろう」と前向きな回答をもらえて、こちらでお世話になることに。女性の働き方を考えてくれるスタッフさんがいることにも安心感を覚えましたね。

 

── 今後、どのような働き方を目指していきたいですか?

 

榎本さん:

大好きな美容師という仕事も、子どもや夫との時間も大切にしていきたいです。ただ、以前と大きく違うのは「マンツーマン」ということ。自分の体調管理もしっかりして、体優先で長く続けていきたいです。

 

いつかまた、育児と仕事のバランスに悩む時が来たら、そのときの「いちばんの働き方」を模索したいと思っています。

 

 

「働くなかで『もっとこうなら良いのに』とモヤモヤするなら解消するべき」と笑顔で話してくれた榎本さん。馴染んだ店から外に出て、新しい環境で生き生きと働く姿からは、これまでの固定観念にとらわれず、もっと自由で柔軟で良いのだというメッセージを感じさせてくれました。

 

PROFILE 榎本里佳

フリーランス美容師 美容師歴12年。母親が美容師だったことも影響し、自身も美容師を目指すように。高校卒業後、都内の美容専門学校に入学。卒業後は表参道の美容室に11年間勤務。2019年に第一子を出産。2021年7月からフリーランスとして活動。

取材・文/佐藤有香 撮影/緒方佳子