2017年の一号店オープン以降、約4年で全国に29店舗を展開したシェアサロン「GO TODAY SHAiRE SALON」。ここで活動するのはフリーランスの美容師やネイリスト、アイリストです。年齢層は20代〜60代までと幅広く、ほぼ毎日サロンワークを行う人もいれば、週に数日のみという方も。

 

今回は、現役美容師でもあり、こちらのシェアサロンの取締役として経営にも携わる珠実さんに、シェアサロンの運営に参画した経緯と、雇用型サロンにはない働き方やシステムについて伺いました。

5年で8割が辞める「長く続けにくい」美容師業界


── 珠実さんは、2017年にこちらの一号店にフリーランス美容師として契約されたそうですね。当時、フリーランスという選択肢は一般的だったのでしょうか。

 

珠実さん:

今でこそ、「フリーランス美容師」という働き方の選択は一般的になってきましたが、2017年頃はまだ少数派でした。「独立する=自分の店を持つ」というイメージが強い美容業界。そのハードルは高く、美容師を諦め、別業種に転職していく人も少なくありません。現在でも、5年で約8割の人が美容師を辞めてしまう業界なんです。

 

── シェアサロンの運営に携わろうという思いが芽生えたのも、こういった美容業界の将来性を考えてのことだったのでしょうか。

 

珠実さん:

そうですね。一般企業では男女平等に働きやすい環境づくりにシフトしている会社さんが多いなか、美容サロンでは後手後手になっているところも多い印象です。特に子育てしながら働いている女性美容師は少ないです。

 

売上や美容師歴などでトップダウンのある業界です。どうしても「長時間働ける人」が重宝されてしまうため、「妊活を始める」というタイミングで辞めていく人も多いです。私が勤めていたサロンでも、通院や、出産後も子ども都合での早退、欠席など、なんとなく言いにくい雰囲気があったように感じています。

 

フリーランスになって、ここのシェアサロンを拠点に活動を始めながら「もっと女性美容師の味方になりたい」という思いを強く持つようになりました。

 

── 雇用型サロンと、シェアサロンではどのような働き方の違いがありますか?

 

珠実さん:

それぞれのライフスタイルにあった働き方が叶う、というところでしょうか。雇用型サロンだと、拘束時間が決まっていますが、ここのシェアサロンでは、予約が入っている時間のみの利用で構いません。

 

契約プランも多彩に設けており、「毎日しっかりサロンワークをしたい」という人から、「平日数回のスポットのみ」という人も。ここ一本で働いている人や、他のサロンと掛け持ちしている人など、その人に合わせた働き方が柔軟に選択できる仕組みを整えています。

 

サロン内の席はフリーアドレス制。あらかじめ計算をした上で、契約できる人数を決めています。

「レジなし、電話なし、アプリ予約」サロンワークに集中できる環境を整備


── 美容師さんの“働きやすさ”に特化したシステムや、環境づくりはありますか?

珠実さん:

代表がIT業界出身ということもあり、立ち上げ当初から「人の手でなくても良いものはITを活用する」という考えが根底にありました。弊社が運営するすべてのサロンが「レジなし、電話なし、アプリ予約」で簡潔しています。お会計はアプリを使ってお支払いしてもらっています。

 

── レジ締めや電話対応がないのは、予約のお客さまに集中できて効率が良いですね。

 

珠実さん

2017年の一号店から、この対応で続けてきましたが、美容師はアナログな仕事でもあるのですが、IT活用は丁寧なサポートがあります。サロンを利用したい方々のフォローが私たちの仕事です。

 

また、これまで雇用サロンで働いていたときは、カラー剤やパーマ液は店側が仕入れを行っていましたが、フリーランスになると、一変して自身で行わなければいけなくなります。

 

この部分の不安を抱えている人も多かったので、弊社では独自のECサイトを構築し、そのサイトで注文すると、店に届くというシステムにしています。個人でネットショッピングをする感覚ですね。薬剤などはバックヤードに個人ロッカーを設置していますので、そこで各々管理してもらっています。

 

── この数年で急速に店舗数が拡大していることからも、美容師がフリーランスという選択を視野に入れることが、今後ますます増えてきそうですね。今後、美容業界全体の働き方はどのように変化していくと思われますか?

 

珠実さん

「美容師×アパレル」などの複合的働き方がスタンダードになってくるのではないでしょうか。美容業界にいると、健康や美容への意識は自然と高まり、美容師をしながら体に良いものを追求している人や、お客さんとのコミュニケーションからヒントを得て、オーガニックにこだわった食品開発をしている人もいます。

 

私の場合、「美容師×会社運営」ですが、アクセサリー作りや、ネイル、アパレル、料理、ヨガなど、美容と好きなことの掛け算をする人が増えていくかもしれません。

 

私たちは、美容師の働き方が長く続けられる明るい環境になるのを目指しています。「店の売り上げを上げることが良し」とする環境ではなく、「自分らしく働いて人生を充実させる」ことに注目できる環境づくりができたら嬉しいですね。

 

 

GO TODAY SHAiRE SALONでは、珠実さん同様に、現役美容師としてサロンワークに従事している運営メンバーもいるそう。美容師の働きやすさを現場目線で考えられる運営陣は、サロンを利用する美容師、ネイリスト、アイリストたちにとっても心強い存在と言えるでしょう。

 

ITを積極的に活用し、フリーランス美容師の不安にも寄り添える体制が、珠実さんの話す「楽しく自由に働いてほしい」を叶えているように感じました。

 

PROFILE 珠実

フリーランス美容師/「GO TODAY SHAiRE SALON」取締役 美容専門学校卒業後、都内で複数の美容室で技術を磨き、2015年に独立。2017年よりGO TODAY SHAiRE SALONに所属。フリーランスとしての活動を行う中で、「美容業界の働きやすい環境」を考えるようになり、2018年より運営に携わる。

取材・文/佐藤有香 撮影/緒方佳子