「以前はSNSのキラキラした投稿が苦手だった」と、SNSマーケティング分野で活躍する朝山高至さん。SNSから距離を置いた朝山さんが、今は没頭するだけでなく、仕事としても楽しんでいるのはなぜ?
“いいね”をもらって嬉しい、でもそのうち…
── 現在はSNSマーケティングで活躍している朝山さん。ソーシャルメディアに対しても、誰よりも情報が早く精通していますが、以前はFacebookなどのキラキラした投稿が苦痛と感じたときもあったとか。
朝山さん:
高校時代は、対人で恐怖を感じていて、仲のいい友達とすらうまく会話ができない状態でした。それでも、自分なりに友達とコミュニケーションを取ろうとしたし、SNSが流行れば便乗しました。ちょうど世間では、Facebookが流行り始めて、タグ付けの文化も盛んだったころ。
はじめは、友達にタグ付けされると「自分、めっちゃ充実してるなぁ」とか、「“いいね”を貰ったら嬉しい」と楽しんでいました。でも、気づけばだんだんと承認欲求が満たされるツールとしてSNSを使うようになりましたね。
SNSに流通している情報は、「みんなで美味しいものを食べた」とか「凄い賞を取った」とか、誰かのすごく充実している瞬間も多いです。しかし、1人でボンヤリSNSを見ていると、「他人の最高な時間」と「自分の平凡な時間」を比較し続けるツールなってしまった。
そうなると、自分の自己肯定感を下げたり、辛い思いを助長し続けるばかりになって、少しSNSから距離を置いた時期があります。
── SNSのキラキラが辛いって、私もわかります。
朝山さん:
しかし、そうやってSNSを見る頻度を減らしつつも、たまたま見たInstagramで、アラブの風景写真が目に入ってきたんです。純粋に「あぁ、すごい綺麗だな…」って素直に思いました。
次第に、自分でもアラブ周辺の景色や情報を調べたり、写真を見返したりしながらどんどん海外に興味が強くなっていきます。
その後、大学では第二外国語にアラビア語を専攻。モロッコやヨルダンに留学して、少しずつアラビア語も話せるように。さらに留学先のアメリカで出会ったサウジアラビアの人とは、アラビア語を通して友達になって、今でもInstagramでやり取りを楽しむ関係性があります。
SNSを使い方次第で楽しくも苦しくもなる
── 国内だけでなく、世界とも繋がると楽しそうです!
朝山さん:
ソーシャルメディアって、使い方次第で自分を苦しめることもあれば、大切な人とつながり続けることもできる。僕はInstagramで海外の友人と交流を楽しみながら、YouTubeでは好きなアーティストのルーツを深堀したり、気になるクリエイターさんの動画を追うことが楽しみになっています。
誰をフォローするか、何に興味を抱くかによってタイムラインに流れる情報が変わってくるし、目に入る景色もかなり違う。そうすれば、ある程度自分が望む世界観をコントロールできます。
だから、もしSNSがつまらないのだとしたら、あなたがフォローしている人が、たとえばメンタルが弱くて落ち込みすぎるとか、異様に攻撃性が強いか、どこか魅力がなくてつまらない可能性もあるかもしれません(笑)。
SNSの活用方法は様々で、僕も含めてFacebookは名刺代わりに使う人も増えています。たとえば、イベントやお知らせがあれば、告知やシェアする使い方をする人もいれば、「引っ越した」「家族が増えた」「こんな仕事をしている」など、近況を伝える人も多くなっていますね。
── SNSの使い方次第で、知らなかった情報が知れたり、新たに誰かとつながったり、生活も潤いそうです。
朝山さん:
僕の場合は、元々人とのコミュニケーションが苦手でしたが、興味・関心がある分野に対しては没頭する力が備わっていたような気がします。たとえば、ソーシャルメディアという領域にすごく興味を持ちましたが、みんなが知らないことを一早く情報収集してきて、周りに伝えます。
そうすると、みんなが「すごい!」とか「こんな方法もあるのね!」と反応してくれたり、または「誰々とつながって、仕事につながった」「趣味の世界が広がって毎日が楽しくなった!」など、様々な反響があるのは嬉しいです。
僕が何かしたことでフィードバックが得られて、自分自身も満足する。それがいつの間にか強烈な趣味となり、その延長でSNSマーケティングという仕事にもつながっていきました。
もちろん今でも、未開拓な部分はあります。しかし、好きなことをさらに追及したことで世界が広がりましたし、好きなことを追求した結果、趣味から仕事につながりました。SNSの使い方は様々ですが、自分の視野、世界観を広げられていると感じる瞬間はとても充実しています。
PROFILE 朝山高至さん
人材系企業で基幹事業のデジタルマーケティング全般を担当し、2019年にSNSマーケティング支援・グローバルでのソーシャル・ビッグデータの流通と分析を行う株式会社ホットリンクに入社。企業のInstagramマーケティング支援や、ソーシャルメディアマーケティングの研究機関「ホットリンク総研」の研究員としてInstagramマーケティングのメソッド開発に従事。
取材・文/松永怜 撮影/伊藤智美