コロナ禍の外出自粛で、運動不足が懸念されていますが、実は、丈夫な骨を作るためには運動が欠かせません。

 

今回は、骨を強くするための運動について、順天堂大学医学部附属練馬病院で、小児整形と骨代謝性疾患(骨粗鬆症など)を専門にしている坂本優子先生に教えていただきます。

骨を強くするのは振動と重力の負荷

骨粗鬆症予防のためには、成長期にしっかり骨量を増やし、その後は維持をしていくことが大切。骨を強くするため方法として、運動には大きな役割があります。

 

骨の性質として、負荷をかけると、骨を作る細胞が活性化する特徴があります。反対に負荷が少ないと骨は弱くなってしまいます。

 

私たちが普段感じている重力もそのひとつ。無重力の宇宙空間で過ごすと骨密度が下がるように、振動や重力などの負荷は、骨にとって重要な要素なのです。

骨量を増やすのにおすすめなのは「ジャンプ」

実は、骨を強くする最も効果的な運動は「ジャンプ」。グッと踏み込んだり、着地をしたりする際に発生する振動や重力が骨を強くしてくれます。

縄跳びジャンプで骨が強くなる

場所を選ばずにできて、毎日続けやすい「縄跳び」は、体を動かすことが苦手な方でも楽しめるのがポイントです。毎日少しずつでもいいので続けてみるとよいでしょう。

縄跳びをする女性のイメージ

ジャンプに似た運動としては、ランニングもいいでしょう。他にも、バスケットボールやバレー、剣道など、踏みしめる動作がある運動は、一定の負荷が骨にかかるのでおすすめです。

 

ただし、水泳は、骨量を増やすという点ではあまりプラスになりません。

 

水の中では振動や重力がかからないため、どんなに泳ぎ込んでも骨に影響は出ないためです。ジョギングなどの陸上練習と併せて行うとよいでしょう。

楽しく運動習慣を身につけよう

特に、骨量が最大となる「ピークボーンマス」を迎える18才までは、振動や重力のかかる運動を積極的に行うことが重要です。

 

お子さんがいらっしゃる方は、骨量がぐっと増えるこの時期までに「運動が好きかどうか」という視点を持っていただきたいな、と思います。

 

骨を強くする生活習慣のためには、「活動的かどうか」ということが大切です。時間があったら、じっと座っているより体を動かして遊ぶことを選ぶ、という習慣です。

 

小学校にあがる前にどのくらい体を動かしているかどうかが、その後の運動能力にも関係し「運動好きかどうか」に関わってきます。

 

運動好きな子、少なくとも運動嫌いではない子にするためには、就学前の運動習慣が欠かせません。

 

ところが近年は、遊び場が減って外出自粛によって外遊びがしにくくなり、子どもたちの活動量の低下が懸念されています。

 

家の中でも、子どもが興味を持ちそうなYouTubeやゲームを利用するなど工夫しながら、親子で楽しく運動をする機会を積極的に作りましょう。

「骨量維持」にはウォーキングや軽めの運動を

仕事や子育てなどで、運動をする時間がとりにくい場合や、ジャンプによる膝への負担が気になる場合は、手軽にできる軽めで短めな運動を、こまめに取り入れてみましょう。

30分のウォーキング習慣が骨粗鬆症予防につながる

毎日30分のウォーキングは、骨粗鬆症学会のガイドラインで推奨されています。骨への負荷は大きくありませんが、継続して行うことによって、骨量を維持することにつながります。

 

ただ、ウォーキングと言っても、そろりそろりと歩くのでは意味がありません。大切なのは、骨に負荷をかけるイメージで、歩幅を広げてどしどしと歩くこと。

日中に行えば、日光によって骨を強くする栄養素「カルシウム」の吸収率をアップさせるビタミンDの合成も促すことができます。

家事をしながらでもできる「かかと落とし」

腰や膝の負担が気になる場合は、日常生活のなかで振動や重力のかかる動きをできるだけ取り入れていくといいでしょう。

 

家の中で気軽にできるものとしては、足を肩幅に開いてつま先で立ち、かかとを勢いよく「トン!」と下ろす「かかと落とし」がおすすめ。

 

簡単な動きですが、かかとに振動と重力がかかるので、骨にとてもいい影響を与えてくれます。

 

場所を選ばずにいつでもどこでもできるほか、転倒やケガのリスクが少ないのも嬉しいポイント。高齢者の方も手軽に取り組めるので、ぜひチャレンジしてみてください。

毎日の「運動習慣」が転倒や骨折予防につながる

骨に負荷をかける運動には、骨を強くするほかにもうひとつ大きな効果があります。それは、筋力とバランス能力の維持・向上です。

 

若いうちの運動はもちろん、高齢になってからも体を動かすことが習慣になっていれば、筋力やバランス感覚が身につくため、骨折や転倒を防ぐことができます。

 

コロナ禍で外出する機会が少なくなったり、リモートワークで体を動かしたりする機会がなくなるなど、運動量が減った人は多いかもしれません。

 

まずは、縄とびやウォーキングなどの手軽にできる運動から始め、適度な負荷をかけながら強い骨を作りましょう。

 

PROFILE 坂本優子

群馬大医学部卒業。順天堂大附属練馬病院 准教授。日本で初めて設立された小児・AYA世代ボーンヘルスケアセンター長を務める他「チームボーン」として骨の健康を啓発。専門は小児整形外科、骨代謝。

取材・構成/CHANTO WEB編集部