骨を構成する重要な成分といえばカルシウム。体内に蓄積することができないため、毎日摂取する必要があります。

 

では、効率よくカルシウムを摂取するにはどうしたらいいのでしょうか?順天堂大学医学部附属練馬病院で、小児整形と骨代謝性疾患(骨粗鬆症など)を専門にしている坂本優子先生にお話を伺いました。

毎日摂りたいカルシウム。日本人は不足気味に

カルシウムは骨を構成するための大切な成分のひとつ。骨に取り込まれると新しく骨が作られ、古くなった骨は壊されてカルシウムが溶け出します。

 

そして、骨が新しく置き換わる新陳代謝のサイクルを繰り返しながら、骨の強さが保たれています。

 

実は、日本人のカルシウムの摂取量はどの年代でも不足しているのが現状です。

 

きちんと摂取できていないと、骨に取り込まれるカルシウムよりも溶け出す量が多くなり、骨量が減少してしまいます。

 

カルシウムは、体内で作ることができないのに加えて、蓄積もできません。そのため、毎日の食事で一定量を補うことが重要です。

骨粗鬆症予防につながる!効率よくカルシウムを摂取する食事のポイント

カルシウムは、吸収率があまり高くありません。

 

不足しがちなカルシウムをきちんと摂り続けるには、手軽に効率よく摂れる食品を選ぶことがポイントです。

「牛乳」はカルシウムを手軽に効率よく摂れる優秀な食品

カルシウムと言えば「牛乳」を連想する人は多いのではないでしょうか。牛乳は、カルシウムが豊富に含まれるうえに、体内への吸収率が他と比較しても格段に優れている食品です。

食事のイメージ

飲み物としてカルシウムを摂ることができるだけでなく、調理に利用したりできるのもポイント。

 

牛乳の脂質が気になる人は低脂肪乳や無脂肪乳を、牛乳が苦手だという人はほかの乳製品で補うなど、ご自身のライフスタイルに合わせて取り入れてください。

 

もちろん、カルシウムを摂るために「牛乳だけを飲めば良い」というわけではありません。いろいろな食品から満遍なく摂ることが大切です。

 

牛乳をはじめとする乳製品や豆腐などの大豆製品、骨ごと食べられる魚、緑黄色野菜など、さまざまな食品を食べて摂取するようにしましょう。

固い小魚より、柔らかいシラスやちりめんを

魚からカルシウムを摂るときは、固い小魚には注意が必要です。実は、煮干しは、粉々に歯で噛み砕かなければ、体に吸収しにくいということがあります。

 

とはいえ、咀嚼では不十分。効率よくカルシウムを摂取するには、フードプロセッサーなどで粉々にするのがおすすめ。お味噌汁にそのまま入れるのもいいでしょう。

 

普段の食事で摂取するなら、シラスやちりめん、小エビなど、柔らかい小魚を意識すると吸収率がアップします。

飲料水や調理に使う水を「硬水」に変える

また、水を「硬水」に変えるのもひとつの方法です。

 

日本の水は「軟水」のためカルシウムが含まれていませんが、海外の「硬水」にはカルシウムなどのミネラルが豊富に含まれています。

 

普段飲む水を硬水に変えてみるだけでも、賢く摂ることができるでしょう。

カルシウムの吸収を助ける「ビタミンD」も併せて補給を

カルシウムを効率よく吸収するためには、ビタミンDも欠かせません。

 

ビタミンDは、腸管からのカルシウムの吸収を促し、血液に入ったカルシウムを骨まで運ぶ働きがあります。

 

このビタミンDを含む主な食品には、鮭やさんま、カレイといった魚類や、しいたけやキクラゲなどのきのこ類があります。

 

食事以外では、日光(紫外線)に当たることによって確保することができます。

人間の皮下脂肪には日光浴によってビタミンDに変わる物質が含まれるため、日光に当たる習慣が、カルシウムの吸収を促し、骨を強くします。

 

紫外線に肌が直接あたる必要があり、ガラスごしだったり、UVカットクリームを塗ったりしていると、効果がないので注意が必要です。

 

以前の日本では、オゾン層破壊に関連して紫外線を避けることが良しとされていましたが、今は骨の健康のために適度な日光浴が推奨されています。

 

季節や場所によって紫外線量は変わるため、時間の目安は、国立環境研究所地球環境研究センターが提供している「ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報」のモバイル版(https://db.cger.nies.go.jp)を確認するといいでしょう。

 

全国11カ所の観測局と、肌の露出部分を選択し、必要なビタミンD10ugを合成するのに必要な日光照射時間と日焼けをしないように上限の時間の目安をリアルタイムで教えてくれます。

 

どうしても日焼けが気になる場合や日光に当たる時間を取れない場合は、サプリメントで補うのもひとつの方法です。

ビタミンKやたんぱく質も。バランスよくとろう

骨の健康を考える上で、カルシウムやビタミンDに注目が集まりがちですが、ビタミンKやたんぱく質も大事な栄養素です。

 

ビタミンKはカルシウムの吸収を促して骨を強くする働きがあり、納豆や卵、小松菜などの青菜に含まれています。

 

一方、たんぱく質は、骨の質を高めるコラーゲンの材料に。骨折を防ぐための筋肉の素にもなります。

 

そのほか、ビタミンB群や葉酸、マグネシウムなども骨にとって大切な栄養素。

 

しかしながら、どの栄養素も偏りがあってはいけません。骨に必要な栄養素とエネルギーをしっかり補給するために、1日3食、バランスよく食ベることが重要です。

 

PROFILE 坂本優子

群馬大医学部卒業。順天堂大附属練馬病院 准教授。日本で初めて設立された小児・AYA世代ボーンヘルスケアセンター長を務める他「チームボーン」として骨の健康を啓発。専門は小児整形外科、骨代謝。

取材・構成/CHANTO WEB編集部