ダイエット中の女性のイメージ

よく耳にする「骨粗鬆症」とはどのような病気かご存知でしょうか。実は、骨粗鬆症の患者は女性が多く、4人に1人が発症すると言われています。

 

今からできる予防や、気をつけたい生活習慣にはどのようなものがあるのでしょう。順天堂大学医学部附属練馬病院で、小児整形と骨代謝性疾患(骨粗鬆症など)を専門にしている坂本優子先生に教えていただきます。

高齢者の骨折の多くは「骨粗鬆症」によるもの

高齢者になるほど多い骨折。筋力の低下に伴い転倒しやすくなることも原因のひとつですが、大きく関係しているのは「骨粗鬆症」です。

 

骨粗鬆症とは、骨が脆くなり骨折しやすくなる病気のこと。骨密度が低下し、骨がスカスカな状態になります。

 

骨粗鬆症による骨折を「骨粗鬆症性骨折」と言いますが、これは、腕の付け根や手首、背骨、大腿骨の4つの部位で、立った高さからの転倒による骨折を指しています。

 

高齢になるとちょっとしたはずみで骨折をすることが増えます。実は、75歳以上の骨折の多くは骨粗鬆症によるもの。

 

大腿骨の骨折の数は年々増え続け、骨粗鬆症の患者数の推測は年間で約1300万人にものぼります。高齢化に伴い、今後もますます増加していくでしょう。

 

骨は目に見えないため自覚するのが難しい部位。ほとんどの方が、ある日突然骨折し、骨粗鬆症に気づきます。

特に高齢者の場合は、骨折をきっかけに、寝たきりになったり合併症を引き起こしたりと、生活に支障が出て命に関わることもあるので、気をつけたいですね。

骨粗鬆症は圧倒的に女性が多い。なりやすい人の特徴は?

骨粗鬆症になるのは圧倒的に女性が多く、患者の約8割を占めています。

 

これは閉経によってエストロゲンの分泌が急激に減り、これが、骨量(骨密度)低下に影響するから。妊娠や出産も骨量に変化が出るため、注意が必要です。

 

骨粗鬆症のリスクが高いのは、18歳までに獲得する最大骨量「ピークボーンマス」がもともと低かった人や、痩せている人などが挙げられます。

 

また、生活習慣も大きく関わっています。女性に限らず、大人になってから乱れた生活を続けている人は、骨粗鬆症のリスクが高まってしまいます。

骨粗鬆症を招く原因にも。注意が必要な5つのNG行動

骨の健康をしっかり考えたいけれども、日常のなかで骨に向き合うタイミングは実はほとんどありません。

 

とはいえ、毎日の生活習慣が色濃く反映される骨は、“意識ひとつで変えることができる臓器”とも言えます。まずは、骨粗鬆症を招く恐れがあるNG行動を今すぐチェックしてみましょう。

運動をしていない

骨の形成には、運動によって骨に一定の負荷をかけることが大切です。

 

運動不足だったり、リモートワークで外出の機会が減っていたり、もともと運動習慣がないという方も多いでしょう。

 

ジャンプやランニング、しっかり歩くなどの負荷のかかる運動をしないと骨量が減少し、骨粗鬆症のリスクにもつながります。

無理なダイエットをしている

極端なダイエットを行うと、体は栄養不足の状態に陥ります。骨量のピークを迎える18歳ごろまでは特に、食事を摂らないといった無理なダイエットは禁物。

 

体の成長と同様に、骨量を増やすべき時期に骨を作ることができなくなるため、将来の骨の健康にも影響が出てしまいます。

食生活が乱れがち

仕事で忙しく食事を抜いたり、食事が偏ったりしている場合は注意。乱れた食生活では、カルシウムやビタミンDなどの骨に必要な栄養素が摂れず、摂取バランスが崩れてしまいます。

お酒をよく飲む

実は、飲酒の習慣は、喫煙よりもリスクが高まります。アルコールそのものが、骨に悪影響を与えますので、お酒の飲み過ぎや毎日の飲酒には注意しましょう。

お酒をよく飲んでいる方にありがちなのが、軽いおつまみ程度で食事を十分に摂れないケース。栄養バランスの崩れも影響しています。

外出が少ない。日光に当たっていない

カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、骨を作るために欠かせない栄養素です。

 

日光(紫外線)に当たることによって体内で作られるため、外で、紫外線をブロックせずに日光を浴びていないとビタミンDが不足してしまいます。

 

忙しく仕事をしたり子育てをしたりしていると、自分のことが後回しになってしまうこともあるのではないでしょうか。

 

骨粗鬆症予防や骨の健康のためには、運動と食事、飲酒といった生活習慣の見直すことが大切です。

骨粗鬆症予防のため、若いうちから骨の健康を意識しよう

体型が気になってダイエットをしたり、シミが気になって紫外線対策を頑張ったり。よかれと思ってやっていたことが、実は、骨にとってマイナスになっていることも。

 

お酒が好きで大量に飲むという方は骨密度が低くなりやすいのですが、これは男性に多いですね。また、モデル体型の女性は美しく見えますが、体は栄養が不足していて骨は不健康な状態です。

 

私が取り組んでいる「チームボーン」の活動では、イベントなどでさまざまな方の骨密度を測る機会を作っていますが、働きざかりの男性や若い女性の骨も軽視できない現実が見えてきました。

 

骨粗鬆症を発症するのは高齢になってからですが、骨粗鬆症予防は若いうちから行うことが大切です。まずはすぐに取り組めるNG習慣を見直し、骨にとっていい生活を送りましょう。

 

PROFILE 坂本優子

群馬大医学部卒業。順天堂大附属練馬病院 准教授。日本で初めて設立された小児・AYA世代ボーンヘルスケアセンター長を務める他「チームボーン」として骨の健康を啓発。専門は小児整形外科、骨代謝。

取材・構成/CHANTO WEB編集部